佐々木 貴正 教授 SASAKI Yoshimasa

研究テーマ畜産農場における食中毒菌の汚染実態 畜産農場における抗菌薬使用と薬剤耐性菌の選択

所属・担当

研究域獣医学研究部門/基礎獣医学分野/応用獣医学系
学部(主な担当ユニット)獣医学ユニット
研究分野 食品衛生学, 微生物学, 動物衛生学
キーワード 食品安全, 食中毒, 薬剤耐性菌, サルモネラ, カンピロバクター, 遺伝子学的系統解析

研究紹介

鶏卵、鶏肉、豚肉及び牛肉は良質なたんぱく質の供給源であり、また、日本の多様な食文化を支えています。しかしながら、細菌性食中毒として最もよく知られるサルモネラ食中毒やカンピロバクター食中毒の原因食材としても知られています。特に、1990年から急激に増加したサルモネラ食中毒事件では、その多くがサルモネラ汚染鶏卵の喫食を原因とする事件であると推定され、大きな問題となりました。そこで、国は、初生ひなの輸入検疫強化、種鶏場、採卵鶏農場、卵選別包装施設の衛生対策の強化など、鶏卵フードチェーン全体に渡るさまざまな衛生対策を打ち出し、2000 年以降急激に低下しました。しかし、依然としてこの 2 つの食中毒は細菌性食中毒事件の上位にランクしており、引き続き鶏卵及びこれら食肉を原因とするサルモネラ食中毒及びカンピロバクター食中毒を減少させることが求められています。さらに、農場で使用される抗菌薬によってこれら細菌が耐性化し、耐性菌に汚染された食品を食べることで耐性菌に感染してしまうという医療上の問題が起こっています。このため、これら細菌の耐性率の減少させることも求められています。これらを達成するためには、畜産業界だけでなく、食品製造者、飲食店、消費者など、これらフードチェーンにおけるすべての関係者が、フードチェーンにおけるサルモネラ及びカンピロバクターの汚染状況および衛生対策の実施状況などの情報を共有・理解した上で、各自がこれら食中毒事件の低減に向けた取組を実施する必要があります。そこで、私たちはフードチェーンにおけるサルモネラ及びカンピロバクターの汚染状況及び分離株の薬剤耐性状況を継続的に調査しています。

種鶏場の鶏舎内の写真:中央が雄鶏で周辺に雌鶏がいる。雌雄比は約10:1
鶏卵の洗浄
目視による汚れのチェック
機械による汚れのチェック
赤色の卵を産む鶏、飼料の配合ではなく、鶏の品種で卵の色が変わる。
食鳥処理施設における内臓摘出の瞬間、鶏の尻部から内臓が取り出されている。速い施設では1分間に150羽以上から内臓が摘出される。

現在取り組んでいる研究テーマ一覧

農場から食卓まで食中毒菌の汚染実態の解明
畜産農場における抗菌薬使用と薬剤耐性菌選択との関連性
薬剤耐性因子の同定
食中毒菌の遺伝子学的系統解析

関連産業分野 動物用医薬品, 畜産, 獣医療, 微生物検査
所属学会 日本獣医学会, 日本食品衛生学会, 日本食品微生物学会, 鶏病研究会, 日本カンピロバクター研究会, 動物用抗菌剤研究会
学位 博士(獣医学)
資格 獣医師(獣医学)
自己紹介

愛知県出身です。十勝地方の自然に憧れ帯広畜産大学に入学、1996年に卒業し、約27年ぶりに戻ってきました。大学卒業後、公務員獣医師として行政事務と研究業務を行ってきました。特に、この15年間は食品安全行政を推進するために鶏卵及び食肉のフードチェーンにおける食中毒菌汚染に関する研究を行っており、大学でも引き続きこの研究を行っていきたいと考えています。また、私と同じように公務員獣医師として働くことを目指す学生を育てていきたいと思います。私は自然が大好きです。せっかく北海道に戻ってきたのですから、学生時代と同じようにいろんな観光地を巡りたいと思います。

居室のある建物総合研究棟Ⅰ号館
部屋番号S2103-2
メールアドレス ysasaki atmark obihiro.ac.jp

卒業研究として指導可能なテーマ

農場から食卓まで食中毒菌の汚染実態の解明と汚染低減対策の確立
畜産農場における抗菌薬使用と薬剤耐性菌の選択
薬剤耐性因子の同定
細菌の遺伝子学的系統解析

メッセージ

私は研究歴よりも公務員獣医師として動物衛生や公衆衛生(特に食品安全)に関する行政事務の従事した期間の方が圧倒的に長く、大学教員としては異質であると思います。しかし、近年、行政を円滑・効率的に進めていくためには科学データに基づいた説明と国民(消費者)の理解・協力が不可欠であり、これらに対応できる行政職員の育成と行政利用に直結した研究(レギュラトリーサイエンス)が必要であると認識されるようになりました。
獣医師を目指す多くの学生は、臨床獣医師をイメージして帯広畜産大学に入学したと思います。もちろん、獣医師は獣医療分野での活躍を期待されていますが、動物衛生や公衆衛生に関する行政事務やレギュラトリーサイエンスといった分野でも活躍が期待されています。特に食品安全行政においては、人口増加、森林破壊、砂漠化、廃棄物の不法投棄などの世界規模の環境問題によって、国際的に安全な食品の確保が難しくなっており、食品(畜産物)の生産過程から消費過程を熟知している獣医師が活躍しやすい分野であると思います。勤務先も国や地方公共団体に加え、世界保健機関(WHO)、食糧農業機関(FAO)、コーデックス委員会などの国際機関もありますので、進路の1つとして公務員獣医師やレギュラトリーサイエンスの研究者を検討してみてください。