「産業動物」と呼ばれる牛や馬たちは、人間のために牛乳や肉、娯楽を提供してます。彼らの生産寿命を伸ばすべく、疾病の詳細な情報の収集、治療に対する反応の評価などを通じて、より有効で安全な治療法の確立を目指しています。
課題:食の安心安全
広大な十勝平野はグローバル化の流れに乗って日本の食糧基地からアジアの食糧基地へと進化しつつあります。食をささえ暮らしを守る!「ちくだい」でしか学べない研究にチャレンジしてみませんか?
広大な十勝平野はグローバル化の流れに乗って日本の食糧基地からアジアの食糧基地へと進化しつつあります。食をささえ暮らしを守る!「ちくだい」でしか学べない研究にチャレンジしてみませんか?
「産業動物」と呼ばれる牛や馬たちは、人間のために牛乳や肉、娯楽を提供してます。彼らの生産寿命を伸ばすべく、疾病の詳細な情報の収集、治療に対する反応の評価などを通じて、より有効で安全な治療法の確立を目指しています。
生活習慣病の予防・改善を目的に、脂肪組織の代謝やホルモン分泌等を調節するメカニズムを研究しています。これまで、肝臓からの情報が神経を通じて脂肪組織の代謝を調節することを示唆する結果が得られています。さらに、フラボノイドなどの食品成分の生理作用の発現などにも、この神経経路が関係していそうです。このつながり、意外と奥が深いかも。
肉用牛の飼料や管理、成長、肉質・肉量の関係を超音波診断技術や血液成分を活用し一体的に検討し、その牛の能力を十分に発揮させる飼い方を見つけ出します。また、地域の使われていない資源を使って地域特産牛肉の生産を目指します。
鶏は飼料効率が高いことから、世界的に飼育羽数が増加し、鶏肉生産量は近年豚肉を抜いて一位となりました。そんな鶏肉を汚染し、それを食べた人に食中毒を起こすのがカンピロバクターやサルモネラです。鶏肉・鶏卵生産の最も上流にある養鶏場において鶏群がこれらの菌を健康なまま保有していることに着目し、鶏群の食中毒菌フリーを目指した調査・研究を行っています。
十勝の広大な畑作地帯で働く大型のトラクタや作業機はパワフルで魅力的です。しかし、農家数の減少にともない増加する耕地面積を少ない人材で栽培するには、かしこく動く機械とそれを管理するシステムが不可欠です。最新のテクノロジーを駆使した先進的農業と環境保全を両立させる未来のスマートシステムを開発していきます。
食品を食べた時に体の中では様々な遺伝子の発現変化が起こります。これを調べることにより、健康増進に役立つ機能や成分を探索する研究をしています。また、食品を食べたときの腸内細菌叢の変化をとらえ、体に良い菌を増やし悪い菌を減らす食品や成分を探索する研究も行っています。これらをDNAチップや次世代シークエンサーといった技術を使って研究しています。
「いもち病おたく」と自他共に認める病原菌好きです。ある種の病原体に効く抵抗性品種を作ったとしても、変異していくことでその抵抗性品種が効かなくなることがあります。まさにイタチごっこです。そこで、病原体の変異そのものの法則を知ることで根本的かつ迅速な対抗手段を見つけようとしています。
雌牛に乳を出してもらうためには、妊娠と出産を安全に繰り返してもらう必要があります。そこで、効率良く妊娠が成立するための条件を知るために、出産してから次の妊娠までに起こる体の変化や異常について調べています。これらの研究成果を、ウシの子宮や卵巣の病気の診断や治療の方法や人工授精を効率よく行うための処置法などの改善に生かしていきます。
本学の動物・食品検査診断センターは、食品衛生検査の分野で国内唯一の大学内国際規格(ISO/IEC 17025認定)を取得しています。私達はこの検査精度の高い検査室を利用し、農畜産物の安全性をアピールすることで、国産食品の国際競争力強化に貢献したいと考えています。
乳生産における最大の危害とは、牛乳に病原微生物や抗菌性物質などの異物が混入することです。病原微生物の感染によっておこる乳房炎は、これらの異物混入のリスクを格段に高めます。私達は乳房炎原因菌の簡便で迅速で正確な同定手法の確立や、抗菌性物質の慎重な使用法、また、乳房炎をコントロールする効果的な手段の開発に取り組んでいます。
妊娠末期の牛は胎子の急成長でルーメン(第一胃)が圧迫されて採食量が落ち、胎子や乳腺へのエネルギー供給のために異化代謝に変化してしまいます。過度な場合は、生まれてくる子牛にも分娩後の母牛にも悪影響を及ぼします。そこで、迅速な対応ができよう血液性状などから異常をリアルタイムで判断できる方法を研究しています。
家畜動物に発熱や貧血などの消耗性疾患を引き起こす牛ピロプラズマ病は、世界で深刻な経済的被害をもたらしています。制圧するために私達は、分子疫学調査による実態把握、媒介者であるマダニの調査、汚染国に合わせたワクチンの開発などを行っています。また合わせて国際的共同研究ネットワークの構築にも積極的に取り組んでいます。
日本ではアズキはダイズに次ぐ2番目に重要な豆類で、その約60%は十勝地域で生産されています。私達はアズキの安定生産に必要な種々の農業形質について遺伝解析を実施しています。また、収穫ロスの軽減した機械化栽培体系の確立を目指した草型改良に関する研究や早生アズキ品種開発のための開花関連遺伝子の探索と選抜マーカーの開発も行っています。
実はウシなどの反芻動物・草食動物は自身には草を消化する能力がありません。お腹の中に生息している膨大な数の微生物が食べた草を分解・発酵し、栄養素に変換しています。これらの微生物のバランスが崩れると代謝性疾患を起こし、消化や栄養の吸収が円滑に行えません。私達は動物の消化機能として微生物の最適なバランスを探求しています。
ニワトリの産卵数、卵サイズ、卵殻色などの遺伝形質を決めている遺伝子機構を制御し、安定的な養鶏経営に貢献したいと考えています。また、鶏卵の味に関わる遺伝と環境要因を研究し、おいしい卵の開発も目指しています。
高収量かつ環境負荷の少ない農業を実現するためには、土壌固有の養分や水分の保持力を把握し、適正な栽培管理をすることが大変重要です。私達は地質学的な知見を考慮しながら、その土地の成り立ちを解明し、地域ごとの土壌の物理性、化学性の状態を明らかにし、その地域で利用できる作物栽培システムの構築を目指しています。
冬の寒さが厳しい北海道のワイン用ブドウ栽培では、しばしば凍霜害が発生し、ブドウの収量が低下したり、酷いときにはブドウの木が枯死することもあります。私達は、ブドウの凍霜害発生機構や季節的な耐寒性変化が起こるメカニズムを調べ、北海道の環境に適した凍霜害対策の確立を目指しています。
人口減少に伴う土地の放棄や温暖化対策のためのエネルギー開発など新たな局面を迎える日本では、これまでと異なった土地利用戦略が求められています。私達は、人の生活の中で如何に自然環境を活用しつつ保全するのかを検討し、生物多様性に配慮した土地利用戦略や人の生業を活かした新たな保全戦略の研究開発を行っています。
植物や動物の病気の多くは、昆虫を介して伝搬されます。これまで、このような媒介性害虫を防除することで動植物の病気を抑制してきましたが、殺虫剤抵抗性の発達により媒介性害虫の防除が困難になりつつあります。私たちは、生物防除や生物学的栄養強化などの方法を用いて、病原体を運べない昆虫や環境を作り出せないか研究を進めています。このように応用昆虫学の視点から「食」や「命」を守ることに貢献することを目指しています。
乳酸菌は糖を代謝して乳酸を菌体外へ分泌する能力を持ちますが、その中には多くの糖を連結した「細胞外多糖」を生産する菌がいます。インドの伝統的発酵乳「ダヒ」などから発見されていて、様々な生理機能性や物性が期待されています。私達は細胞外多糖の化学構造や物性を明らかにし、乳酸菌の新たな利用技術を開発し、食品産業の振興に貢献したいと考えています。
北海道十勝の農産物であるアズキ、キントキ、テボウなど豆類は脂質代謝改善効果や強い抗酸化効果などがあり、機能性食品としての開発が期待できます。また、チコリ、キノコ、サトウキビなどは腸管内発酵と生活習慣病の予防に関係すると考えられています。このように、自然界に存在する農畜産物が身体に及ぼす効果を見いだす栄養生化学的な研究を行っています。
ウシの子宮内に放たれた凍結精子、母体の自然免疫によって攻撃され、ほとんどが膣側に排出されます。この免疫システムは上皮細胞が病原体を認識して排除する方法と共通であることがわかってきました。私達はウシにも酪農家にも負担をかけないより高い受胎率を目指し、凍結精液技術と受精卵作出方法の開発を行っています。
作物の生産を支える土壌を対象に、肥料を加えるばかりの「足し算」の方法から、土壌の潜在能力を引き出す「掛け算」の方法を研究しています。土壌の変化は周辺の水圏や大気圏などの生態系にも影響を及ぼします。人と自然が共生していくためには自然に対して負荷をできるだけ最小限に留め、かつ安全で高品質な食糧生産を持続する方法を見つけることが重要です。
ウマの生殖機能調節やホルモンの作用、診断法の開発に関する研究を行なうとともに、繁殖牝馬の生産管理上の諸問題について調査、研究に従事しています。地域に密着した馬産業への貢献を目指すとともに、馬を通じた教育・研究・社会貢献を推し進めることが今後の課題です。
ヨーグルトなどの乳酸発酵食品やバター、チーズなどの発祥や伝播する歴史を追っていくと、そこには大陸に広がっていく人と家畜の暮らし方や食文化の系統が見えてきます。それほど人類と乳文化の関係は深いのです。さらに乳に依存していなかった日本で乳文化がどのように伝搬し、日本食と融合してきたのか研究を進めています。
バレイショの野生種には病気や害虫に強い性質を持った種や、色や形や味などとても変わったものが多く存在しています。しかし、その価値を品種改良になかなか活かせていません。そこで、野生種の持つ有用な形質を栽培種へ導入する研究をしています。また、収量やデンプン含量と関連がある遺伝領域を探し、遺伝子のレベルから農業形質の向上を目指しています。
「スペルトコムギ」という小麦の古い在来品種は、不良環境への適応能力など近代の小麦にはない優れた特性を持っていることが分かってきました。また、パンにしたときの独特の味や香り、高い栄養価から現在再び栽培が広がっています。私たちは、「スペルトコムギ」の遺伝資源としての価値を再評価し、大学発の新たなパン用コムギ品種の開発にチャレンジしています。
十勝地方では、古くからコムギ、甜菜、豆類、馬鈴薯の4つの作物を基幹とした安定的な輪作が行われていました。一方で、これらの作物に加えて新たな作物を栽培したいと考える農家も少なくありません。私達の研究は、世界中に存在する作物の中から、利用価値が高く、経済的な利益をもたらしそうな品種を見つけ出し、十勝への導入を試みようというものです。
自然生態系で虫が作物を食べることは自然なことです。人間の都合で化学農薬や遺伝子組み換え植物を導入してきましたが、環境に負荷を与えていることは否めません。そこで自然に存在する天敵微生物を用いて病害虫の被害を防ぐ生物的防除を研究し、病害虫を退治するのではなく病害虫と共生できるような農業生態系を目指しています。
北海道は私達が日常食している主な作物の栽培北限でありながら、日本の食糧基地でもあります。この栽培限界地域での安定的な作物生産は日本の死活問題です。私達は、寒冷地に適した品種改良に必要な遺伝子探索を行い、環境や天候に強く、効率的に育つ作物開発の研究をしています。また、アレルギー疾患の人も食べられる作物のアレルギー低減化も目指しています。
家畜のふん尿や生ゴミは作物育成に有効な有機肥料になります。しかし、不適切に管理すると逆に環境汚染の要因となってしまいます。そこで、適切なふん尿資源化と持続可能な循環システムを開発し、技能や技術を根付かせることも視野に入れた「環境と人にやさしい酪農体系」を構築したいと考えています。
北海道でトラクタが導入されて約60年が経過し、農業機械の発達によって十勝の農業は我が国をリードする最先端の大規模農業に発展してきました。しかし、急速な少子高齢化による労働力不足は深刻で、大規模農業を維持、発展させるには無人トラクターのようなロボット技術を導入していくが一つの解決策だと考えています。
1軒の酪農家で家畜伝染病が発生した場合、地域経済全体に影響を及ぼす可能性があります。このような事態になる前に、緊急時の行動指針を地域で話し合っておくことで、実際に被害が起きた時に迅速かつ円滑な対応ができ、被害を最小限にできると考えています。では、どのような取り決めや訓練が必要なのか、私達は地域単位から産業単位まで包括的に研究しています。
農業経営は天候や災害、作物や家畜の病気といった自然環境のリスク、政策変更や価格変動、経営者の健康リスクなど様々なリスクに対処する“リスクマネージメント”の必要があります。私達は今の畜産業の経営に合った共済制度や保険制度の見直しを海外の事例などと比較しながら研究しています。
動物・人への伝播可能な人獣共通感染症は、裕福な国では根絶されていますが、貧困層を抱えた地域や国では未だ防げていません。このことは巡り巡って世界経済にも公衆衛生上も大きな影響があり、WHOは特に13種類の人獣共通感染症(NZD)を指定し対策の強化に乗り出しています。私達は医療の処方の如く経済学と獣医学をまたぐ経済疫学からの処方箋を研究しています。
動物の体は手足や頭など形や役割が異なる器官が集まって構成されており、昆虫の脚はふつう6本と決まっています。これとは対照的に植物の体は、例えば木のようにてっぺんから根元までどこを見ても枝葉が集まった似たような構造の繰り返しです。このような植物における「かたちの法則性」を野外計測と数学理論を用いて研究しています。
植物は自身に適した植物共生菌(カビ、きのこのなかま)が生息しないところでは、成長することができません。これらの共生菌は、新しい植物が定着する前から胞子などの形で土壌中で植物が来るのを待っており、根などに共生して無機養分を吸収して植物の成長を助けています。このような植物と菌類の共生関係を観察し、森や耕作地の土壌で起きている生態と環境変化の関係を明らかにします。
日本で食べられているパンのほとんどは外国産小麦で作られいて、パンに合う国産小麦はなかなか生産されませんでした。しかし、ここ数年で次々と高品質な国産小麦が作られるようになり、遂に100%国産小麦のおいしいパンが市場に出るようになりました。私達は国産小麦の品質特性や加工方法などを研究し、国産小麦のおいしいパンを応援しています。
植物と共生する有用微生物は、植物の生育促進や環境変動への適応能に大きく貢献しています。私達は植物への感染と共生のしくみを調べ、植物の生育や環境適応能の改良をはじめ、農産物の保存性やその付加価値の向上を目指した研究に取り組んでいます。
北海道十勝地方はナガイモの産地として知られ、品質の良さから海外へも輸出されています。ナガイモは、古くから漢方薬として胃腸虚弱等の効用があると伝承されています。私たちもナガイモの消化器官に対する機能性について興味を持ち、大腸ポリープの発症抑制効果を見つけ、ナガイモ特有の食品機能性を見出そうと研究しています。
ソーセージやハム、ミートパティ等の食肉製品の品質は、味や色調、保存性、脂質の酸化など様々な要素によってコントロールされています。私たちはこれまでヒトの健康維持に良いと考えられてきた健康機能性成分を食肉製品の品質向上にも活用できないかと考え、生活習慣病予防に役立つかつ安全で高品質な食肉製品の開発を目指しています。
ヨーグルトやチーズなどの発酵食品の発酵過程で利用される乳酸菌は、漬物、みそ、しょうゆ、お酒などに使われている乳酸菌と同様に、人々の身近なところに生息しています。私達は安全でおいしい食品の製造につながるような新しい乳酸菌の株を地元で探索し、地域の特色ある加工食品を創出したいと考えています。
肉質は時間と共に変化し、人が食べておいしいと感じる“熟成”という現象が起きます。家畜の品種や温度の状態など様々な要因と熟成のメカニズムを研究しています。また、エゾシカやダチョウなどの野生動物を食肉資源とした場合の適切や熟成期間についても調べて、少しでも地元の生産者や生産に関係する人たちに貢献して行きたいです。
脂質の中でも動植物共通に存在するスフィンゴ脂質に着目し、食品の機能性や身体との関係を探っています。化粧品にも使われていて、「肌に良いなら皮膚と深い関係にある腸でも効果があるかもしれない」と研究を進めるうち、腸の炎症を抑える効果がわかってきました。
塩、砂糖、脂を減らすなど身体に良いとされる食品は“おいしくなさそう”というイメージを持っていませんか?私達は食品の複雑な物理化学的性質が製造過程でどのように変化するのかに着目し、栄養成分の消化性、吸収性をコントロールしながら、おいしくて一人ひとりの身体に良い食品を選べるようにしたいと研究しています。
できる限り快適な環境で飼育することでストレスや疾病を減らし、家畜の暮らしをよくすることをアニマルウェルフェアと言い、取り組む生産者が増えてきています。従来のように家畜の生産性や生産効率だけを追求するのではなく、良質な飼料や水、飼育環境を整え、健康に飼うことが、新しい価値になるように研究をすすめています。
反芻家畜は微生物の力を借りて草を消化する際、メタンガスを生成しゲップとして大気中に放出します。食べたエサの10%程のエネルギーがこのメタンとして、牛乳や肉生産に使われないまま失われます。またメタンガスは二酸化炭素の25倍地球温暖化に及ぼす影響は大きいです。エサを工夫してゲップのメタンを減らし、エネルギー損失や地球温暖化を防ぐことを目指します。
飼育環境や飼料、母体の栄養状態は、子の発育や大人になった時の繁殖性に関係しています。これは後天的な要因によって、発現する遺伝子に差が生じるからで、この研究分野を“エピジェネティクス”と呼んでいます。私達は家畜とヒトに共通な遺伝子発現調節メカニズムに着目し、特に周産期の母親の環境と子供の発達の関係を解明を目指しています。
生殖工学とは体内で起こる複雑な受精現象を体外で人為的に制御する技術です。これにより、多くの動物種で体外受精卵の作出が可能になり、効率的に産仔を得られるようになりました。しかし、この技術には受精卵の染色体異常を誘発するリスクがあることがわかってきており、私達は作出する胚の遺伝的安全性の確保を目指した研究をしています。
反芻動物は反芻胃をもつことが特徴で、単胃動物とは消化・吸収の仕組みが違い、そのため代謝ホルモンの作用などメカニズムも大きく異なります。そこで各種代謝ホルモンの測定技術を開発して代謝メカニズムの違いを把握することで、家畜の成長促進をはじめとした効率的な飼養システムを構築しようとしています。
卵子から排卵に至る卵巣機能などに副腎皮質ホルモンの影響は無いと長年思われ、未解明のままでした。しかし、私達はウシをモデルに卵子の形成、受精、胚発生において副腎皮質ホルモンが関与していることを明らかにしました。この研究から得られた知見を体外胚の生産に反映させ、家畜の生産性向上を目指しています。
日本ではホルスタイン種の雌牛の遺伝的改良により乳生産量が増え続けています。その遺伝的改良を担っているのは主に人工授精用の雄牛で、血縁関係やゲノム情報から遺伝的能力を数値化し、生産者との情報共有を進めています。現在は、乳牛の暑熱ストレス耐性の数値化、飼い方に応じた改良方法の開発など、日本の飼養環境に合わせた乳牛へと改良し、国内の酪農業の発展に繋げるための研究をしています。
和牛の肉質を評価する上で重要な脂肪交雑の状態を、枝肉のまま撮影して評価できるカメラを数種類開発し、大学発ベンチャーを立ち上げました。今では国内外で利用されるようになり、脂肪交雑を評価する標準的な撮影装置に位置づけられています。今後はフィードバックされた大量のデータを検証し、さらなるおいしさの追求をしていきます。
家畜の病気を診察・治療した現場の長年の経験から言えるのは、農家さんが牛や馬にちゃんと手を掛けてあげれば、長生きし、生産性も上がり、結果的に恩返しをしてくれるということです。それを理解してもらうには獣医師と農家さんとの信頼関係が必要!現在は、牛の予防獣医療や子牛の健康と疾病、乳牛の蹄病などの研究を行っています。
ヒトの感染症の多くは、ヒトとそれ以外の脊椎動物の両方に感染する病原体により引き起こされる「人獣共通感染症」や畜産物など様々な食品に存在する病原体により引き起こされる「食品由来感染症」です。このような病原体によるヒトでの病態発現の分子機序を研究し、新規治療薬や迅速簡便な病原体検出法の開発を介して公衆衛生向上に貢献することを目指しています。
カビや酵母、キノコは、まとめて「真菌」と呼ばれます。真菌は私たちの生活になくてはならないものですが、一方で、一部の真菌は、食品を汚染する毒素(カビ毒)を作ったり、ヒトや動物に感染症を引き起こしたりします。私達は「アスペルギルス」などの身近なカビが起こす病気のメカニズムを解明し、病気の治療や検査方法開発に貢献することを目指しています。
環境中には、植物毒、天然由来ダイオキシン類などの自然由来の化学物質や、環境汚染物質、医薬品など人工的に合成された化学物質などが多数存在しています。これらの化学物質に対する反応の現れ方は動物種ごとに異なります。その種差が生まれた進化的・遺伝的背景を明らかにすることで、動物への医薬品投与や環境汚染物質の影響を予測することを目的に研究しています。
殺虫剤や抗生物質、環境汚染物質などが家畜に過度に曝露されることによる生産性の低下や、家畜に濃縮された化学物質が畜産食品を介して及ぼすヒトへの健康被害など、化学物質はヒトや動物の健康を脅かすことがあります。このような化学物質の有害性の評価や毒性が発現する仕組みを研究することで、獣医・畜産・環境分野に貢献したいと考えています。
赤ちゃんは離乳期を経て、摂食や睡眠などの生命活動における概日リズムを獲得し自らの意思で母乳以外の食事がとれるように脳の生理機能が発達します。一方で、パーキンソン病やアルツハイマー病に代表される脳の変性疾患や慢性ストレスによる鬱病を発症すると、できていたことができなくなる現象がおこります。同じ脳の中で発達したり病気を発症したりする機構の解明と治療について研究しています。基礎研究で病気の治療に貢献することを目標にしています。
脳内の情報処理メカニズムにはまだ多くの謎があり、その解明の鍵は神経細胞の情報伝達に関わる糖鎖だと考えられています。脳は領域ごとに役割が異なるため、各領域での糖鎖構造の役割を研究し、情報処理メカニズムの解明を目指しています。また、哺乳類や鳥類、爬虫類の嗅覚の多様性を研究し、動物の知覚と生態の関連性を追求しています。
野生動物、家畜、動物園や水族館の生き物など、死んだ動物を解剖して、細胞、器官、骨格などの機能的な働きを分析しています。特に繁殖に関する生殖腺と胎盤の発生を研究中。また、臨床解剖学的データの蓄積を行い、現場の獣医師や獣医師を目指す学生をバックアップするプロジェクトを始めています。生物は死してなお多くを語ってくれます。