谷 昌幸 教授 TANI Masayuki

研究テーマ土壌の機能を引き出して作物の力を最大限に発揮させ、安全かつ高品質な食糧の生産と供給を持続的に実践するための研究

My Dream持続的な食糧生産を支える土壌の力を引き出す

所属・担当

グローバルアグロメディシン研究センター/農畜産学研究部門研究域環境農学研究部門/植物生産科学分野/植物生産科学系
学部(主な担当ユニット)植物生産科学ユニット
大学院(主な担当専攻・コース)畜産科学専攻植物生産科学コース
研究分野 土壌化学, 土壌生成分類学, 作物栄養学
キーワード 土壌, 土壌肥沃度, 土壌診断, 土壌改良, 溶存有機物, 作物栄養, リン, カルシウム, 重金属, 堆肥, バレイショ, トウモロコシ, グレートリフトバレー

研究紹介

研究のメインテーマは、「持続的な食糧生産を支える土壌の力を引き出す」です。安全かつ高品質な食糧の生産と供給を持続的に実践すること、土壌の機能を引き出して作物の力を最大限に発揮させることを目指して様々な研究に取り組んでいます。とくに最近は、①農耕地土壌におけるリン酸や作物養分の動態と有効利用に関する研究、②バレイショやタマネギ栽培における施肥技術が生育や品質に及ぼす影響に関する研究(写真1)、③堆肥や消化液などに含まれる溶存腐植物質の機能、とくに植物生理活性や養分吸収に及ぼす影響評価に関する研究などを行っています。また、アフリカのマラウイやケニアに分布する熱帯赤色土壌における土壌肥沃度の評価と耕畜連携による作物生産性の向上(写真2)、マレーシアの伝統的焼畑圃場における炭化物の供給や微地形が土壌肥沃度の空間変動に及ぼす影響(写真3)など、世界の様々な地域における土壌の研究も行っています。

これまでの土壌学は、主に自然科学的な手法に則って食糧生産技術の向上を目指す方向に進んできました。一方、高度化した社会は農や土から距離を置くようになり、農業や土壌の持つ本質を見失いつつあると考えられます。自然と人間社会の共生を保つためには、人と環境を対峙する関係ではなく、ともに一体であるという視点でとらえ、人と環境との関わりを、多角的な視点から探っていく姿勢が不可欠です。持続可能な自然と社会の調和のため、人は土から離れては生きていけないことを、広く発信できる人材を育成できるような研究を目指したいと考えています。

写真1. 十勝地域の作物生産を支える火山灰土壌(黒ボク土)、腐植物質がたくさん含まれる黒い表層が特徴的
写真2. マラウイの高地で生産されているバレイショ、土壌の養分が不足しているために生産性が低い
写真3. マレーシアの急傾斜の焼畑圃場で栽培されている陸稲、焼畑は環境破壊型農業か環境保全型農業か?

現在取り組んでいる研究テーマ一覧

  • 北海道の加工用バレイショ栽培における施肥技術と土壌改良に関する研究
  • ケニアのバレイショ生産地域における農耕地土壌の肥沃度評価と改善に関する研究
  • マレーシアの伝統的焼畑圃場における炭化物の供給や微地形が土壌肥沃度の空間変動に及ぼす影響
  • 窒素とマグネシウムの施肥がバレイショの収量と品質に及ぼす相互的な影響
  • センシング技術と空間的データ解析を用いた土壌肥沃度と保水性の評価
  • 混合堆肥複合肥料の施用によるリン酸減肥の可能性
  • 未耕地と農耕地の黒ボク土における垂直分布から見た元素の蓄積と消耗
  • ナガイモ栽培圃場における土壌撹乱が土壌特性の空間変動と作物生産に及ぼす影響
  • 高リン鉄鋼スラグのリン酸肥料としての利用可能性
関連産業分野 農業, 畜産業, 廃棄物利用, 環境保全
所属学会 日本土壌肥料学会, 日本ペドロジー学会, 日本腐植物質学会, International Union of Soil Science, International Society of Humic Substances
Editor ペドロジスト:2018年-現在
Editorial Board
  • 日本土壌肥料学雑誌:2012年-現在
学位 博士(農学)
自己紹介

1968年1月25日に大阪市で生まれました。阪神タイガースファンのビール党です。大学に入学した頃はバイオテクノロジー全盛期で、最初は微生物工学を研究したいと思っていたのですが、大学3年生の夏休みに長野県の高原野菜農家でバイトしたのをきっかけに、農業における “土”の大切さを痛感し土壌学を研究するようになりました。1995年4月から帯広畜産大学助手となり、現在に至っています。趣味は、“身体を動かすこと”と“お酒を楽しく飲むこと”です。最近は、アイスホッケーやインラインホッケーで思いっきり汗をかいたり、オフロードバイクで“のんびり”ツーリングを楽しんだりしています。

居室のある建物総合研究棟Ⅱ号館
部屋番号201号室
メールアドレス masatani atmark obihiro.ac.jp

卒業研究として指導可能なテーマ

  • 農耕地土壌におけるリン酸の蓄積抑制と利用率向上に関する研究
  • バレイショやタマネギ栽培におけるカルシウム施肥が生育や品質に及ぼす影響に関する研究
  • 家畜ふん尿を原料とする堆肥やスラリーの有効利用に関する研究
  • アフリカ南東部に分布する熱帯赤色土壌における耕畜連携と作物生産性の向上
  • 土壌診断や土壌断面調査に基づく土壌改良および施肥技術に関する研究
  • 土壌特性や土壌水分の空間的変動に関する研究

メッセージ

土壌には未知なる機能がたくさん残っており、畑や草地で作物生産を行う上で、これまでに着目してこなかった成分、つまり窒素やリン酸といった肥料成分ではない“なにか”が実は大切ではないかと考えています。地球の食料と環境を支えるのはバイテクやクローンだけではなく、そんな機能の解明かもしれません。“科学的な持続型農業”を目指して、地域の生産者や学内外のいろいろな人達と新しい研究を展開しています。体力と気力があって、おいしい農作物を食べたい人、一緒に土壌の謎解きを楽しんでみませんか。