近藤 大輔 准教授 KONDOH Daisuke

研究テーマ脳内における糖鎖構造の分布と変化の解析、および脊椎動物の嗅覚系に関する系統発生

研究分野 比較解剖学, 組織学, 神経科学, 糖鎖生物学, 分子生物学
キーワード 脳, 糖鎖, 嗅覚器, フェロモン, 哺乳類, 鳥類, 爬虫類, 両生類, 魚類, 組織化学, 電子顕微鏡, 免疫染色, レクチン染色

研究紹介

【1番目の研究テーマ: マウス脳内における糖鎖構造の分布と変化の解析】
遺伝子やタンパク質の発現に関する理解が進んだ現在でも、脳内での情報処理メカニズムに関しては、まだまだ不明な点が多数あります。その大きな理由として、遺伝子・タンパク質に続く「第3の生命鎖」と呼ばれる糖鎖の存在があげられます。糖鎖は、タンパク質に付加されることでそのタンパク質の機能を調節する分子で、脳内では神経細胞の“可塑性”に大きく影響しています。可塑性とは大雑把に言うと、神経細胞が情報伝達する相手を変更できる能力、または神経細胞の移動のしやすさ、と言い換えることができるものです。私たちはこれまでに、神経接着分子に付加しているa1-2フコースという糖鎖構造が、嗅覚に関する脳領域において日内変化および加齢性変化していることを発見しました。現在は、このような糖鎖の変化や脳内の局在に関連した更なる解析を行い、その生理的な意義の解明を目指しています。

写真1: マウス嗅球の糸球体における a1-2フコース陽性率の加齢性変化 (矢印、強陽性;矢頭、弱陽性;*陰性の糸球体)

【2番目の研究テーマ: 脊椎動物の嗅覚系に関する系統発生】
脊椎動物は周辺環境を認識するために嗅覚を利用しています。多くの四肢動物は、嗅覚系として主嗅覚系と鋤鼻系という2つの感覚系を持っており、鋤鼻器は主に種特異的な匂い(フェロモン)を感じ取る器官として知られています(ヒトや鯨類、鳥類、ワニ類などでは、胎児期を除いて鋤鼻器は存在しません)。しかしながら近年、この2つの嗅覚系は明瞭に区別されず、協調して様々な行動に影響を与えていることが明らかになりつつあります。ヒトでは“鋤鼻覚”がなくイメージできないこともあり、この感覚は動物の行動を理解する上でとても興味深いものです。そこで私たちは、様々な脊椎動物種において、この鋤鼻系がどの程度発達しているのか、さらに主嗅覚系と鋤鼻系とがどのような関係にあるのかについて、形態学的・組織化学的に追究しています。これまでに、哺乳類(マウス、キリン、カバ、クマ)や鳥類(カラス)、爬虫類の有鱗目(シマヘビ)の嗅覚系の特徴を報告しており、現在はカメ目(ウミガメ類)に関する研究を行っています。
(プレス発表:カバの嗅覚系: http://www.obihiro.ac.jp/press/29/17ronnbunn_konndou_29.pdf
(プレス発表:キリンの嗅覚系: http://www.obihiro.ac.jp/press/28/33kondohronbun_28.pdf

写真2:キリンの鋤鼻器の組織像 

写真1. マウス嗅球の糸球体における a1-2フコース陽性率の加齢性変化 (矢印、強陽性;矢頭、弱陽性;*陰性の糸球体)
写真2. キリンの鋤鼻器の組織像

現在取り組んでいる研究テーマ一覧

  • マウス脳内におけるレクチンVVA陽性構造の分布解析
  • マウス脳内における糖鎖a1-2フコース構造の生理的変化に関する研究
  • 哺乳類(キリン、カバ、ヒグマ)の嗅覚系に関する研究
  • 爬虫類(ウミガメ)の嗅覚器に関する研究
  • 爬虫類(カナヘビ)における麻酔効力に関する研究
学位 博士(獣医学)
資格 獣医師
自己紹介

岩手大学の出身(I love IWATE!)で、学生時代はヘビの鋤鼻器(フェロモン受容器)について研究し、それが現在の研究テーマにつながっています。ありがたいことに同世代や若手の先生方、さらに学生の皆さんにも恵まれ、日々刺激をいただきながら、楽しく過ごしています。”Hard work! Do! Done!”をモットーに、研究がんばります。いい温泉があれば、ぜひぜひ教えてください。

居室のある建物総合研究棟1号館
部屋番号S1102-2
メールアドレス kondoh-d atmark obihiro.ac.jp

所属・担当

研究域獣医学研究部門/基礎獣医学分野/形態学系
学部(主な担当ユニット)獣医学ユニット
大学院(主な担当専攻・コース)畜産科学専攻動物医科学コース
関連産業分野 獣医分野, 畜産分野, 神経科学分野, 野生動物分野
所属学会 日本獣医学会, 日本解剖学会, 日本味と匂学会
学歴・職歴 2010年 岩手大学 農学部獣医学科 卒業
2013年 岐阜大学 大学院連合獣医学研究科(岩手大学配属) 修了
2013-2014年 産業技術総合研究所(AIST) 研究員
2014年- 現職

卒業研究として指導可能なテーマ

  • マウス脳内における糖鎖構造の分布および変化の生理的意義の解明
  • 脊椎動物(哺乳類・鳥類・爬虫類・両生類・魚類)の嗅覚系に関する比較解剖学的研究
  • 爬虫類の麻酔効力に関する研究

メッセージ

基礎学問の面白さは、単純に「動物のからだを理解する」ことだと思います。なぜイヌはコミュニケーションに臭いを使うのか、なぜウシの分娩が夜に起きやすいか、不思議だったことが徐々に分かってきます。
しかし動物のからだは、おそらく皆さんが想像するよりも遥かに未知です。基礎研究はこの未知への挑戦だと思います。一見、臨床研究や応用研究よりも地味に見えるかもしれませんが、そこで明らかになった事実は100年後でも古くなりません。さらに、基礎研究での大発見は応用分野や臨床分野にも大きな変革を起こす可能性があり、ロマンがあります。世の中を変えたい皆さん、基礎分野で活躍しませんか!?