動物は周辺環境を認識するために,匂い情報を収集する嗅覚を利用しています。匂い情報の中には,同種間のコミュニケーションを取るための物質が含まれており,このような物質を“フェロモン(定義はもっと複雑です)”と呼んでいます。多くの動物では,通常の匂い物質を感知する嗅覚系(主嗅覚系)とは異なり,フェロモン感知に特化したと考えられてきたもう一つの嗅覚系を持っており,これを“鋤鼻系”と呼びます。主嗅覚系の受容器は鼻腔ですが,鋤鼻系の受容器は“鋤鼻器”と呼ばれる器官で,ヒトでは退化してしまっています。
したがって,ヒトには“フェロモン覚”はなく,どのようなものなのかイメージすることができません。だからこそ,非常に興味深い感覚系ではないでしょうか。私たちはさまざまな動物種において,この鋤鼻系がどの程度発達しているのか,またどのように行動に関連しているのかについて研究をしています。
この文を書いた人 | 近藤 大輔 准教授 |
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所属 | 研究域/獣医学研究部門/基礎獣医学分野/形態学系 |