ベトナム南部のホンニャ島はタイランド湾内の東端に位置する面積わずか3.8㎢の小島である。2019年にベトナム生物資源・生態研究機関がこの島の哺乳類相を調査した結果,これまでに確認されたことのない特徴的な毛色を持つ樹上性リスの生息が確認された。本調査は,帯広畜産大学環境農学研究部門の押田龍夫教授,ベトナム生物資源・生態研究機関(Duong Thuy Vu研究員,Son Truong Nguyen博士,Tu Ngoc Ly研究員,Phuong Huy Dang研究員,Hai Tuan Bui研究員),ベトナム国立大学のMinh Duc Le博士,京都大学総合博物館の本川雅治教授,東京大学総合研究博物館の遠藤秀紀教授による共同プロジェクトである。
研究チームがこのリスを詳細に調べた結果,フィンレイソンリス(Callosciurus finlaysonii)の亜種であることが明らかになった。押田教授らの研究チームはこのリスを新亜種 (和名:ホンニャリス,英名:Hon Nghe squirrel,学名:Callosciurus finlaysonii honnghensis) として,ヨーロッパの哺乳類学雑誌Mammaliaにオンライン早期公開した。ホンニャリスはこれまでにホンニャ島でのみ確認されており,本島の固有亜種である可能性が高い。
ホンニャ島は更新世の氷期においてインドシナ半島と地続きであったと考えられ,本亜種は最終氷期後に生じた短期間の地理的隔離の結果,創出されたものであると考えられる。今回の発見は,インドシナ半島周囲島嶼部に生息する哺乳類の多様性を検討し,その保全施策を将来的に検討する上で重要であると考えられる。
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