大和田 琢二 教授 OHWADA Takuji

研究テーマ植物と共生する有用細菌を食の生産に活用する

所属・担当

研究域生命・食料科学研究部門/食品科学分野/食品機能学系
学部(主な担当ユニット)食品科学ユニット
大学院(主な担当専攻・コース)畜産科学専攻食品科学コース
研究分野 応用微生物学
キーワード 植物共生有用細菌, エンドファイト, ウレタン分解菌

研究紹介

植物組織内に生息し、相利共生関係にある微生物は内生菌(エンドファイト)と呼ばれます。十勝の代表的な作物(ジャガイモ、テンサイなど)から単離・選抜された内生菌の植物生育促進や環境適応力向上への効果、植物への感染と共生のしくみを調べ、内生菌を活用した農業生産性の向上を目指した研究に取り組んでいます。最近の研究では、ジャガイモから単離・選抜された有用共生細菌を用いて、植物組織局在性は菌株(系統)により異なり、局在が拮抗しない(共存、あるいは棲み分けできる)菌株との混合接種により接種効果が相乗的に高まることを明らかにしました。また、テンサイから単離・選抜された有用共生細菌に、優れた植物生育促進と生物防除の両因子を見い出しています(図3)。一方、根粒菌はマメ科植物の根に瘤(根粒)を形成し空中の窒素をアンモニアに還元(固定)する能力があり、微生物窒素肥料として農業上非常に重要な土壌細菌です(図4)。これまでに、共生過程における根粒菌遺伝子の網羅的な発現解析を行い、共生に関わる巨大な遺伝子領域の発見とその発現解析、及びその領域の一つ(Type3分泌系)の発現は、温度と遺伝子(nodD2)により制御を受けることを明らかにしました。また、ダイズと根粒菌の共生系は、細胞毒性も併せ持つダイズ由来のシグナル物質(ゲニステイン)の根粒菌内の濃度が薬剤排出ポンプの制御により調整されることにより最適化されることを明らかにし、従来の共生系分子機構にはない新規なパラダイムを提唱しました。その他、微生物作用を利用して、ウレタンから実用上優れた特性を示す新素材(商品名:NPORUS)の開発と商品化にも成功し、効率的な農業生産への応用研究に取り組んでいます。

図3. ハクサイの根に感染した有用共生細菌の電子顕微鏡写真
図4. ダイズ根に標識遺伝子gusが導入された根粒菌で形成された根粒(青く識別できる)

現在取り組んでいる研究テーマ一覧

  • 有用細菌による植物の環境ストレス適応、機能性強化に関する研究
  • ウレタンの効率的な微生物分解技術の開発と農業生産への利用に関する研究
  • 微生物資材の効果の検証(植物病害防除など)に関する研究
関連産業分野 農業生産, バイオリサイクル
所属学会 植物微生物研究会, 日本農芸化学会, 日本土壌肥料学会, 日本土壌微生物学会, 日本生物工学会
学位 農学博士
自己紹介

私は京都出身ですが、大学から北海道に移り住み、もう北海道に住んでいる方がずっと長くなってしまいました。卒業論文では、異なる微生物を組み合わせて目的のアミノ酸を発酵生産する、転換発酵と呼ばれる研究に取り組みました。それからずっと微生物を材料に用いて研究を続けています。特に、帯広に来てからは、微生物と植物の共生に関わる研究を続けています。自然や温泉が大好きなので、十勝・帯広が大変気に入っています。

居室のある建物総合研究棟3号館
部屋番号407号室
メールアドレス taku atmark obihiro.ac.jp

卒業研究として指導可能なテーマ

  • 有用細菌による植物の環境ストレス適応、機能性強化に関する研究
  • ウレタンの効率的な微生物分解技術の開発と農業生産への利用に関する研究
  • 微生物資材の効果の検証(植物病害防除、感染機構の解明など)に関する研究

メッセージ

私は卒業論文で微生物のアミノ酸転換発酵の研究に取り組んで以来、ずっと微生物一筋です。私たちの体に無数とも言える微生物が常在化しているのと同様に、植物も多様性に富んだ”常在菌”と共同生活をしていて、これら共生微生物群のコミュニティーは、植物が健康に育まれ、安全で持続的・発展的な食の生産に重要な役割を持っています。近年、共生微生物集団は「アグリバイオーム」とも呼ばれ、植物の生育促進や病害防除に大変有用であることがわかってきました。共生微生物で植物を健康に育み、安全安心な食の生産やその付加価値と機能性の向上に関わる研究にチャレンジし、その成果を十勝から世界へ向けて発信してみませんか?