上村 暁子 教授 UEMURA Akiko

研究テーマ低侵襲手術(インターベンション治療)と治療用デバイスの開発
先天性心奇形・先天性血管奇形の病態解明
ヒアルロン酸を用いた術後癒着防止剤の開発

My Dream先天性心疾患と術後癒着の制御

所属・担当

研究域獣医学研究部門/臨床獣医学分野/伴侶動物獣医療学系動物医療センター/伴侶動物診療科
学部(主な担当ユニット)獣医学ユニット
大学院(主な担当専攻・コース)獣医学専攻
研究分野 外科学, 循環器学, 手術学, 医用材料学
キーワード 心疾患, 先天性心奇形, 先天性血管奇形, 気管虚脱, インターベンション, 低侵襲手術, 術後癒着, 生体材料, ヒアルロン酸, 再生医療

研究紹介

主な研究分野は、犬猫の軟部外科と循環器です。
まず、小型犬や猫など小型の症例における低侵襲手術とデバイスの開発が挙げられます。体重が軽く循環血液量も少ない症例に対するインターベンション治療として、開心せず開胸下で直接デバイスを心臓に挿入するハイブリッド法を用いて新規デバイスの適応を検討してきました。本法は血管径に左右されないため小型犬や猫でも大型デバイスの使用が可能となり、人工心肺を用いた開心術ほどの侵襲も掛からないことから、手術リスクも低減可能です。低侵襲治療法の1つとして、犬の気管虚脱に対する新規気管ステントの適応にも2017年から取り組んでいます。ナイチノールの編み方を変えた新規ステントは人医療では既に各種疾患に適応が拡大されているデバイスで、従来の気管ステントと比べて組織追従性に優れており、術後合併症の低減が期待されています。国内2人目の新規ステントTrainer Certificateも取得し、全国の動物病院での実地指導も行っています。
また、販売不適合とされ一般的な販売ルートから外れた犬猫、特に先天性奇形を有する症例の治療にも数多く携わっています。近年は先天性心奇形および血管奇形について、複数の大学と協力してその病態解明を進めています。
さらに、ヒアルロン酸を用いた術後癒着防止剤の開発も大きな柱の1つです。漿膜癒着は術後高率に生じるため、特に人医療で大きな問題になっています。この問題に対処するべく、他大学や企業等とともに術後癒着防止剤の開発に取り組んできました。不溶化処理したヒアルロン酸を癒着防止剤とし、犬開胸モデルにおける高い術後癒着防止効果について報告しています。不溶化ヒアルロン酸の経時的分解過程と膨潤率が分解速度に及ぼす影響についても明らかにできたことから、ヒアルロン酸製剤の新たな用途開拓を視野に入れた研究を行っています。

犬の右房性三心房心における術中の経食道エコー
犬の気管虚脱症例への新規気管ステント留置(術前CT)
犬の気管虚脱症例への新規気管ステント留置(術後の胸部X線画像)
胸腔鏡手術(VATS)において不溶化ヒアルロン酸を用いた術後癒着防止剤を挿入(A→Dの順に挿入)

現在取り組んでいる研究テーマ一覧

超低体重症例における動脈管開存症(PDA)病態の変化と治療
低侵襲手術(インターベンション治療)と治療用デバイスの開発
犬猫の先天性心奇形・先天性血管奇形の病態解明
気管虚脱への新規気管ステント療法
外科手術後癒着・拘縮に対するヒアルロン酸製剤の適応
新規外科ドレープの開発
犬猫の心電図と心拍変動解析

関連産業分野 医学, 獣医学, 薬学, 農学, 生体材料
所属学会 日本獣医麻酔外科学会, 動物臨床医学会, Japan Endovascular Treatment Conference (JET), Asian Society of Veterinary Internal Medicine (AiSVIM), 日本獣医内視鏡外科学会, 日本獣医画像診断学会
学位 博士(農学)
資格 獣医師, 日本小動物外科専門医(Diplomate JCVS)
自己紹介

東京都台東区で生まれ足立区で育ちました。好きなものは和洋問わずお菓子と果物です。苦手なものは寒さなので、冬の十勝に戦々恐々としています。
犬も猫も外科手術後に飼い主のかたと一緒に、うれしそうに退院していくのを見送るのは、とてもやりがいを感じるひと時です。

居室のある建物伴侶動物研究棟
メールアドレス auemura atmark obihiro.ac.jp

卒業研究として指導可能なテーマ

軟部外科(外科学、手術学)に関連したテーマ
犬猫の循環器に関連したテーマ
インターベンション治療に関連したテーマ
ヒアルロン酸や人工臓器等の生体材料に関連したテーマ

メッセージ

東京農工大学小動物外科専門医レジデント時代は叩き上げの外科医として徹底的に鍛えられました。先天性心疾患を主体とする多様な循環器症例の内科的・外科的治療も行っており、特に犬の先天性心奇形として好発する動脈管開存症(PDA)は年間30例程度執刀しています。
一方で獣医師として大学に勤めながら筑波大学で生体材料高分子ポリマーの分解をテーマにPhDを取得しており、獣医学という領域に囚われることなく、医学・農学・薬学・工学等の多様な分野との連携が素晴らしい成果を生み出すことを目の当たりにしてきました。
先達の教えと学生の皆さんが持つ「なぜ?」が融合して初めて新たな領域が切り開けるのだと思っています。犬猫の外科疾患や循環器疾患に興味があり、やる気にあふれる方々の来訪を楽しみにしています。