犬猫の心臓

人も犬も猫も心臓がないと生きていけません。寝ても覚めても休むことなく、生まれてから死ぬまでずっと、私たちが自由に動けるように働き続けてくれる頑張り屋の臓器の一つが心臓です。
私の研究テーマの一つに先天性心疾患があります。生まれながらに大きなハンデを背負った小さな子犬や子猫は、治療をしなければ数ヶ月で命を終えることになる子も少なくありません。手のひらに乗る体重500g程度の子犬の胸はとても小さく、手術で開胸するとさらに小さな心臓が見えます。周囲の組織を避けて心臓に近づいていくと、心臓からかすかな泡音のような、ごく小さな音が聞こえてくることがあります。手術に真摯に向き合う外科医だけが聞くことを許される、心臓からの語り掛けなのではないかと感じて、厳粛な気持ちになります。
先天性心疾患は手術で完治が目指せる病気と、残念ながら現代獣医学では手術できない病気とがあります。これからも研究を続けて、犬猫に生じる全ての先天性心疾患を制御することが、私の大きな目標の一つです。

この文を書いた人 上村 暁子 教授
所属 研究域/獣医学研究部門