萩谷 功一 准教授 HAGIYA Koichi

研究テーマ主に乳牛を対象とした統計遺伝的手法による遺伝的改良に関する研究

研究分野 家畜育種学, 集団遺伝学
キーワード 乳用牛, 酪農, 遺伝的改良

研究紹介

日本の牛乳のほとんどはホルスタイン種によって生産されています。ホルスタイン種の雌牛は遺伝的改良によってその生産量が増え続けています。それらは人工授精によって繁殖されるため、遺伝的に優れた雄牛が数千頭の娘牛を生産することもめずらしくありません。牛乳を生産するのは雌牛の仕事ですが、遺伝的改良を担っているのは主に雄牛です。そこで重要なことは、個々の血縁関係やゲノム情報から遺伝的能力を調べて優れた雄牛を見出すこと、そしてその遺伝的能力を数値化して生産者にそれらの情報を正しく伝えることです。これまで、統計育種学的な取り組みによって、個々の乳量や乳成分だけでなく、生産寿命、繁殖能力、気質(従順か神経質か)、搾乳にかかる時間の早さや体型的な特徴など、たくさんの遺伝情報の解析方法が開発され、人工授精に使うための雄牛の遺伝的能力が公表されています。研究室ではこれまでにそれらの研究開発の多くに携わってきました。現在取り組んでいるのは、夏場の暑熱ストレス下で健康を維持できる乳牛へと改良する方法の開発、たくさんの雌牛をひとつの群で飼うことに適する雌牛や放牧環境に適する乳牛へ、つまり飼い方に応じた改良方法の開発など、日本の飼養環境に合わせた乳牛へと改良し、国内の酪農業の発展に繋げるための研究です。

主な研究対象であるホルスタイン種乳用牛
気温が高くなると暑熱ストレスのために乳牛が生産する牛乳の量が低下します(1頭あたり1日の乳量、湿度70%のとき)。こうした分析を重ね、暑さに強い乳牛への遺伝的改良方法を開発します。

現在取り組んでいる研究テーマ一覧

  • 乳牛の生産性向上のための遺伝的改良技術の応用
  • 乳牛の遺伝評価技術向上に関する研究
  • 雌牛の暑熱ストレス耐性を遺伝的に改良する技術の開発
  • 適切な分娩間隔の調査、放牧向けの乳用牛の体型的特長を探るなど,酪農家にとって有益な情報を発信するための研究
学位 博士(農学)
居室のある建物総合研究棟1号館
メールアドレス hagiya atmark obihiro.ac.jp

所属・担当

研究域生命・食料科学研究部門/家畜生産科学分野/生命科学系
学部(主な担当ユニット)家畜生産科学ユニット
大学院(主な担当専攻・コース)畜産科学専攻家畜生産科学コース
関連産業分野 畜産
所属学会 日本畜産学会, 北海道畜産学会, 米国酪農科学会
学歴・職歴 1993年 帯広畜産大学 家畜生産科学科 卒業
1998年 帯広畜産大学大学院畜産学研究科家畜管理学専攻 修士課程修了
2001年 岩手大学連合大学院連合農学研究科生物生産科学専攻 博士後期過程修了
1993-1999年 株式会社十勝家畜人工授精所
2001-2003年 日本ホルスタイン登録協会北海道支局
2004-2011年 家畜改良センター
2011-2014年 農業・食品産業技術総合研究機構北海道農業研究センター 研究員
2015年- 現職

卒業研究として指導可能なテーマ

  • 乳用雌牛の生産能力や生産寿命を遺伝的に改良するための研究
  • 遺伝的能力推定精度向上のための研究
  • 雌牛・雄牛の繁殖能力を遺伝的に改良するための研究
  • 雌牛に対する暑熱ストレスの影響の調査
  • 雌牛の体型的特長と疾病との関係の調査

メッセージ

酪農産業が発展するためには、コストをできるだけ増やさずに牛乳の生産性を高めることが重要です。そのためには、牛舎や搾乳施設の改善、飼料の品質や生産性の向上、遺伝的に優れた乳牛を見つけ出してたくさんの子孫を生産する技術、乳牛の健康を維持する技術など、さまざまな取り組みが必要です。それらの中で、遺伝的に優れた乳牛を正確に見つけ出し、効果的に子孫を生産する仕組みを開発・応用することが私の専門です。

研究室では、乳牛の泌乳記録、体型審査記録、繁殖情報、疾病の記録、血統情報やゲノム情報を使用し、統計解析技術による乳牛改良に関する研究をしています。これらは、乳量、乳脂量、体型的な特徴など、一頭一頭の乳牛からの膨大な記録です。このような情報を解析するためには、コンピュータを使用してデータを処理する必要があります。

家畜育種学の知識と技術は、国内の乳牛改良に関わる産業で必要とされることから、家畜育種学を学んだ先輩の多くが、卒業後、関連機関(ホルスタイン登録協会、家畜改良事業団など)で活躍しています。家畜育種学分野の研究をするためには、特に遺伝学、統計学、コンピュータ科学の知識が重要です。