川村 健介 准教授 KAWAMURA Kensuke
研究テーマ草地生態系の保全と持続的な利用に向けて
所属・担当
研究域/環境農学研究部門/環境生態学分野/環境生態学系研究分野 | 草地生態学, リモートセンシング, スマート農業 |
キーワード | 植生, バイオマス, 放牧管理, 家畜行動, 地理情報システム, 空間解析, ハイパースペクトル, 機械学習, 深層学習 |
研究紹介
草地/草原は,日本国内では国土面積の約5%と非常に小さな生態系ですが,世界に目を向けてみると陸域面積の約3割を占める巨大な生態系です。この生態系では,砂漠化や土地劣化などの環境問題に加えて,多様性の保全や炭素収支への貢献,さらに近年では,生態系サービスや社会文化の多様性などの多面的な草原の役割についても関心が高まっています。また,世界の草地生態系では,推定18億頭の家畜に飼料を供給しているといわれています。そのため,近い将来に予想される食糧問題の解決のためにも,持続的な生産性の向上も重要な課題です。
現存する草地生態系を保全しつつ,同時に生産性を維持すること,すなわち保全と利用の両立が学生時代からのテーマです。広大な草地生態系の構造と機能を明らかにするため,広域的な資源・環境のモニタリングが得意な衛星画像やドローンといったリモートセンシング技術を使います。また,リモートセンシングから直接見ることのできない家畜の放牧行動や昆虫の発生等は,GPSの位置情報やIT機器の活動情報を用います。最終的には,草地生態系を構成する土壌-草-動物の関係と,それらを取り囲む環境の要因について,時間・空間的な変動を1つの生態システムとして解析することを目指しているのですが,まだまだ先は長そうです。
現在取り組んでいる研究テーマ一覧
- ハイパースペクトル計測による牧草の飼料成分の推定
- ドローンによる草量の推定とマッピング
- ドローンによる植生タイプ判別,雑草検出
- センシング機器による家畜の放牧行動モニタリング
- 草ー家畜の相互作用の空間解析
関連産業分野 | 環境科学, 畜産 |
プロジェクト |
科研費基盤(B)「放牧地の生産性向上と環境負荷低減に向けた牛糞分布パターンの把握と制御」
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所属学会 | 日本草地学会, 日本リモートセンシング学会, 日本写真測量学会, システム農学会 |
Editor | 編集委員; 2011-2017 |
Editorial Board |
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学位 | 博士(農学) |
資格 | 教員免許(中学校・高校、理科), 第一種衛生管理者, 第三級陸上特殊無線技士, サッカー4級審判員 |
自己紹介 |
山口県岩国市出身です。自然科学に興味を持ったきっかけは,高校の修学旅行で登った富山県立山の自然でした。大学院時代に初めて訪れた中国内蒙古草原では,その雄大な景観に感動しつつも,個人の調査フィールドには大きすぎて絶望した記憶が思い出されます。以来,広域観測を得意とするリモートセンシングを取り入れた草地生態系の研究を中国,韓国,インドネシア,ニュージーランド,オーストラリア,そして日本で行っています。草地の中では,同じ対象であっても,違ったスケールや角度から見てみると,生態系の構造や機能は様々な表情を見せてくれます。そこがまた面白くて,なかなか興味が尽きません。 |
居室のある建物 | 総合研究棟2号館 |
メールアドレス | kamuken obihiro.ac.jp |
卒業研究として指導可能なテーマ
- 草地の植生と生産性の評価
- 動物(主に家畜)の行動と植物および環境要因の関係
- 衛星画像による十勝の自然環境モニタリング
メッセージ
美しい自然環境を空から眺めてみたいと思ったことはありませんか?リモートセンシングは,鳥になりたいという人間の希望をかなえてくれる便利なツールです。その一方で,この技術を習得するためにはそれなりの苦労が求められます。フィールドを歩き回る体力に加えて,コンピュータと統計解析への興味が必要になりますが,フィールドを歩き回って見つけた対象が空や宇宙からの情報とつながったときの喜びは格別です。一方で,植物だけに興味があって,その生態を学びたいという場合でも指導は可能です。ただし,フィールドワークはチームワークですから,原則として全員参加です。
卒論研究には,学生各自が主体的に取り組むことを望みます(基本は放牧です)。私自身が決して優秀な学生ではなかったので,成績は問いません。熱意と遊び心さえあれば,実験が成功しようと失敗しようと,そこで得た経験と仲間は一生の宝物です。大学生活の最後に,自然豊かな十勝のフィールドに触れる機会が目の前にあるのですから,ぜひ全力投球してもらいたいものです。