第72回畜産学部学位記授与式、第63回別科修了証書授与式、第56回大学院学位記授与式が、3月18日(火)午前10時から講堂において、挙行されました。
今年度の卒業生は学部卒業生251名及び博士前期課程修了生52名に学位記が、別科修了生に修了証書がそれぞれ代表者に授与されました。また、博士後期課程修了生5名、博士課程修了生3名にそれぞれ学位記が授与されました。
次いで長澤学長から告辞が述べられたのち、北海道国立大学機構の長谷山彰理事長による祝辞映像が放映されました。来賓祝辞では、ご臨席いただいた帯広畜産大学同窓会会長の三津原勝様からお祝いの言葉をいただきました。
その後、卒業生を代表して畜産学部共同獣医学課程の佐々木雄望さんによる答辞がありました。
続いて学生表彰があり、学業成績優秀者8名に表彰状の授与並びに学生後援会から記念品の贈呈が行われました。
最後に、来賓・教職員紹介があった後、マンドリンサークルによる帯広畜産大学逍遥歌が演奏され、卒業生、修了生が退場し、式が終了しました。
告辞
本日ここに、関係各位のご臨席をいただき、令和5年度の学位記並びに修了証書授与式を挙行できますことは、本学にとりまして大きな喜びです。
畜産科学課程、共同獣医学課程、別科酪農専修、大学院畜産学研究科のそれぞれの課程を修了され、本日、この式典に臨むことができますのは、皆さん自身が努力と研鑽を重ね、それぞれの課題を克服した結果です。
留学生の方々は、環境や文化の違う地において、さらに苦労が多かったと思います。卒業あるいは修了の時を迎えられた320名、すべての皆さんに、心からお祝いを申し上げます。
また、ご家族の皆様には、感慨もひとしおのことと推察いたします。誠におめでとうございます。今回、会場の席数の関係で、ご家族の皆様には、別会場にてオンライン配信によりご参加いただいておりますことを、ご容赦いただきたいと思います。
本学は昭和16年に、前身となる帯広高等獣医学校が創設され、今年で83年目を迎えます。全国で初めてとなる官立の高等獣医学校の設置に際しては、地元の大きな支援がありました。当時の十勝の町村の年間予算の4倍に上る寄附金を集め、学校が十勝に誘致されました。学校用地は、福井県から北海道に渡り、明治25年に売買(うりかり:現在の帯広市稲田町)に入植した中村善右衛門氏が、原野を切り開き、開墾した土地が無償で提供されました。
地域の支援により設立された本学には、全国から、また、満州、台湾から新入生132名が集まり、第一回の入学式が仮校舎で挙行されました。
昭和18年9月に、第一回卒業証書授与式が挙行され、一期生の104名が本学を巣立ちました。当時は、太平洋戦争の真っただ中であり、多くは、陸軍などに進んでいきました。卒業後に迎える社会の状況には、不安がいっぱいだったことが予想されます。
終戦後の昭和24年には、国立大学設置法が公布され、施設・設備が十分ではない教育・研究環境のもとで、新制大学として帯広畜産大学がスタートしました。初代学長の宮脇冨先生は、「農学を有機的ならしめ、我が国の農業を革新的に発展させる。」と宣言されました。
新制大学がスタートしてから75年が経過した現在、宮脇先生の宣言通り、農業は革新的に発展しました。創立以来、教育課程が変わり、教育研究環境が改善され、設置者が変わっても、創立以来の本学の強みや特色に揺るぎはありません。
本学のミッションは、「知の創造と実践によって実学の学風を発展させ、『食を支え、くらしを守る』人材の育成を通じて、地域及び国際社会に貢献すること」であり、本学の人材育成目標は、食と農の大切さ、動植物の命の尊さを心得た素養を基礎として、いわゆる「Farm to Table」の幅広い領域を学際的視点で捉える能力と、あらゆる現場に適応できる知識・実践力を有するとともに、地球規模課題解決等の国際的視野を備えたグローバル人材を育成することです。
本日、卒業あるいは修了を迎えた皆さんは、本学がミッションに掲げたグローバル人材として、現在の社会課題に挑戦し、解決に向けて、道を切り開くものと確信しています。
本日、本学を卒業あるいは修了される皆さんが進まれる道は、順風満帆であってほしいと願うばかりですが、今日、我が国を取り巻く環境は、誠に厳しいものがあります。
13年前の東日本大震災以降、自然災害は後を絶たず、今年の元日にも能登半島地震があり、いまなお、被害からの復興に向けて多数の人が苦しんでいます。加えて、グローバリゼーションの進展、高次な成熟経済社会への転換、少子高齢化社会への移行、情報通信の高速化などの課題に直面しています。
また、新型コロナウイルスによるパンデミック感染症や、ロシアによるウクライナ侵攻の終焉は見えず、国家間や民族間の紛争は後を絶たないのが現状です。さらに、気候変動、エネルギー問題、カーボンニュートラル、食料安全保障などの諸課題は枚挙にいとまがありません。
特に、食料は生命維持に欠くことができないものであり、将来にわたって良質な食料を確保することは、国の責務です。このため、平成11年7月に「食料・農業・農村基本法」が公布・施行されました。しかし、世界的な食料情勢の変化や地球環境問題、海外市場の変化など、農業を取り巻く情勢が大きく変化しているため、食料安全保障に関する基本法の検証と見直しが進められています。
これらの社会課題の解決には、本学の専門分野である、農学、畜産科学、獣医学分野を含む、異分野を統合した複合的な取り組みが必要であり、あらためて、本学が掲げる「食を支え、くらしを守る人材の育成」の重要性が認識されるところです。
本学では、卒業生や社会人を対象に、リカレント教育やリスキリング教育を推進しています。大学を離れてからも、必要に応じて大学を活用してください。
最後に、グローバル人材である皆さんが、今後、想定外の事柄や、困難な課題に遭遇した時は、原野を切り開いた先人たちや、農業を革新的に発展させた先輩たちを思い出してください。決して、物事をあきらめず、新しいことに挑戦し、自らのアイディアと努力で、困難な課題や想定外の局面などに真っ向から立ち向かい、将来の担い手となって社会を牽引してください。皆さんが、「食を支え、くらしを守る」様々な分野において大いに活躍し、地域社会や国際社会に貢献することを祈念して、告辞といたします。
令和6年3月19日
帯広畜産大学長
長澤 秀行