8月26日(土)に開催された,第88回日本細菌学会北海道支部学術総会において,共同獣医学課程6年の鈴木正太郎さん(指導教員:岡村雅史教授)が,支部会賞(優秀賞)を受賞しました。本賞は,若手研究者による演題の中から優秀な発表を選出し,表彰するものです。
鈴木さんは,「鶏肉及びその他畜産物から分離されたサルモネラ株の性状」というテーマで口頭発表を行いました。
サルモネラ感染症は,世界各国で事例数が最も多い食中毒の一つとして知られており,一事件あたりの患者数が多く,死亡例もしばしば報告されるため,公衆衛生上の大きな問題となっています。日本では,1990年代前後からの汚染鶏卵由来サルモネラ食中毒の世界的多発を受け,鶏卵のサルモネラ汚染低減対策が実施された結果,届出件数が激減しましたが,現在でも,細菌性食中毒の原因としてはカンピロバクターに次ぐ2位となっています。
鈴木さんは,サルモネラ食中毒リスク低減に向けた取り組みの一つとして,畜産物のサルモネラ汚染実態を調査しました。国産鶏肉35検体,外国産鶏肉50検体,豚レバー36検体,豚挽肉38検体,ウズラ卵60検体についてサルモネラ分離試験を行い,分離株の血清型を決定するとともに薬剤感受性試験を行いました。その結果,国産鶏肉の89%からサルモネラが分離され,その多くが血清型Schwarzengrundであり,血清型の分布や薬剤耐性パターンは生産地域によって異なること,また,外国産鶏肉でも28%からサルモネラが分離され,その分離率は0〜60%と生産国によって異なること,分離された血清型は多岐にわたること,そして多剤耐性菌が多いことが分かりました。また,ウズラ卵殻,豚挽肉,および豚レバーから多剤耐性の血清型Typhimurium単相変異株が分離されました。
以上の調査結果は,これらの畜産物がサルモネラ食中毒の原因食品となっている可能性を示すものであり,今後,サルモネラ食中毒リスクの低減に向けた対策を検討するための基礎データとして,胃腸炎患者由来株との比較などに活用されることが期待されます。
今回の受賞について,鈴木さんは「獣医学研究部門応用獣医学分野の岡村先生,佐々木先生をはじめ,ご指導・ご協力いただいた先生方,関係者の皆様に深く感謝いたします。この経験を活かし,今後も研究に精進してまいります。」と受賞の喜びを語りました。