5月30日(火)~6月2日(金)に開催された,第2回環境化学物質3学会合同大会(第31回環境化学討論会・第25回環境ホルモン学会研究発表会・第27回日本環境毒性学会研究発表会)において,大学院博士課程獣医学専攻4年のLee Jae Seungさん(指導教員:久保田彰教授)が日本環境化学会よりRSC賞(Royal Society of Chemistry賞:英国王立化学会賞)を,同4年のAhmed Rehabさん(同)が環境ホルモン学会(現:内分泌撹乱物質学会)より森田賞を受賞しました。これらの賞は,優秀な口頭発表に対して授与される賞です。
Leeさんの発表演題は「Biological effects of 2,3,7,8-substituted and non-2,3,7,8-substituted polybrominated dibenzo-p-dioxins in developing zebrafish」で,ゼブラフィッシュ胚を用いて,一部の非2,3,7,8-置換型の臭素化ダイオキシン類が,2,3,7,8-置換型でみられる典型的な芳香族炭化水素受容体(AHR)介在性の循環障害を引き起こすこと,2,3,7,8位における臭素の置換数や置換位置によってAHR介在性の毒性ポテンシャルが変わることを明らかにしました。また,曝露胚における発現変動遺伝子の網羅解析(RNA-seq解析)やバイオインフォマティクス解析により,臭素化ダイオキシン類による循環障害にサーカディアンシグナルの撹乱と,それに伴うグルコースや脂質の代謝の変調が関与している可能性を示しました。
Ahmedさんの発表演題は,「In vivo and in silico assessments of estrogenic potencies of zearalenone and its metabolites using zebrafish (Danio rerio)」で,ゼブラフィッシュ胚を用いて,ゼアラレノン及びその代謝物がエストロゲン作用を示し代謝的活性化もみられたこと,これら化合物のエストロゲン活性は化合物とエストロゲン受容体サブタイプのインシリコドッキングシミュレーションで得られた相互作用エネルギー値で予測できることを明らかにしました。
Leeさんは「大学院に入学して以降,今回で4回目の優秀発表賞を受賞したことを大変光栄に思います。久保田先生,川合先生をはじめご指導・ご協力いただいた先生方,関係者の皆様に深く感謝いたします。これからも研究に精進し,毒性学分野に貢献できるよう頑張りたいと思います。」と述べ,Ahmedさんは「この度,森田賞を受賞できたことを大変光栄に思います。関係者の皆様のご指導,ご協力に心より感謝申し上げます。 今後も研究に精進し,毒性学の分野に貢献できるよう努力してまいります。」とそれぞれ受賞の喜びを語りました。