2020年9月に掲載された帯広畜産大学と登別マリンパークニクス、麻布大学の共同研究チームによる発表論文「一水族館における飼育環境中のAspergillus fumigatus検出およびペンギンのアスペルギルス症根絶を導いた予防対策[松本直也、伊藤めぐみ、山田一孝、豊留孝仁(責任著者)]」が、日本野生動物医学会論文賞を受賞しました。この論文は、一水族館(登別マリンパークニクス)においてペンギンアスペルギルス症の感染予防対策を立案してアスペルギルス症根絶を導いた成果を報告したものです(日本野生動物医学会誌、2020年)。
鳥類はカビの一種アスペルギルスが起こす感染症(アスペルギルス症)にかかりやすく、特にペンギンはアスペルギルス症に感受性が高いことが知られています。日本のみならず、世界中の動物園や水族館でアスペルギルス症によるペンギンの死亡例が確認されており、現在でも問題となっています。帯広畜産大学の伊藤めぐみ助教および豊留孝仁准教授は登別マリンパークニクスの松本直也獣医師(帯広畜産大学卒業)、麻布大学の山田一孝教授との共同研究を2016年から開始(2017年からは日本学術振興会科学研究費(基盤研究(C):研究代表者 伊藤めぐみ)の助成を受けて研究)し、「予防」と「早期発見」の両面からアスペルギルス症対策の取り組みを進めてきました。
この一連の研究において、日本野生動物医学会誌上で、飼育環境下におけるアスペルギルス汚染源の推定の重要性、屋内および屋外環境における感染予防対策の重要性を示し、登別マリンパークニクスにてこの予防対策実施によるアスペルギルス症根絶を導いた成果を報告しました。この成果が評価され、日本野生動物医学会論文賞を受賞しました。
今回の受賞論文では「予防」が主眼となっていましたが、「早期発見」も重要であり、共同研究チームでは早期発見から治癒につながったペンギンアスペルギルス症症例についても報告しています(Itohら、Journal of Veterinary Medical Science、2020年)。
共同研究チームでは現在もペンギンアスペルギルス症に関する共同研究が進行中で、今後の共同研究も動物園や水族館のペンギンをアスペルギルス症から守る成果につなげていきたいと考えています。