9月21日(火)から9月24日(金)に京都大学にてオンラインで開催された第114回日本繁殖生物学会において、大学院畜産学研究科博士後期課程畜産科学専攻2年のMA Dongxueさん(指導教員:宮本明夫教授)が、優秀発表賞を受賞しました。この賞は事前の1次書類審査によって選ばれた10題の口頭発表より選出されたものです。MAさんの受賞課題は「Sperm TLR2 regulates Ca2+ influx and acrosome reaction to facilitate sperm penetration to oocytes during in vitro fertilization in cows(ウシ精子のTLR2は精子細胞内Ca2+ 流入と先体反応を制御して体外受精における精子の卵母細胞への侵入を促進する)」です。
哺乳動物では、Toll-like receptor (TLR) は身体の自然免疫応答に重要な役割を果たしている受容体です。当研究グループでは、これまでにウシの子宮や卵管内にTLR2が存在し、精子を認識するセンサーとして働いていることを突き止めました。さらに、ウシ精子に機能を持ったTLR2 が発現することを見出しており、今回の研究は、ウシ精子のTLR2が受精現象にどのように関わっているかについて詳細に検証したものです。その結果、「ウシ精子のTLR2は精子細胞内Ca2+ 流入と先体反応を制御して体外受精における精子の卵母細胞への侵入を促進する」ことを証明しました。精子は、体内では排卵した卵子と出会って受精するまでに、子宮と卵管を通過して進みますが、受精能力を獲得して受精する部位である卵管では、TLR2に結合して活性化する生理活性分子が高い濃度で分泌されていることがわかってきています。今回の研究成果は、ウシの体外受精技術の向上に役立つ可能性が高く、加えて、本来の生体内での受精に至る精子と子宮・卵管との新しい免疫学的コミュニケーションの一端を示したものとして高い評価を得ました。
MAさんは、「この度は、生命科学の基礎的な研究が主体の学会で、高い評価をいただくことができて、嬉しい驚きでしたし、とても光栄に思います。とても活発でクリエイティブな本学の研究グループのメンバー達に心から感謝しています。今後も、この研究成果を土台にして、より重要で役立つ研究になるように、努力してゆきます。」と喜びを語りました。