11月30日(木)に北海道立道民活動センター「かでる2・7」(札幌市)で開催された2017年度日本土壌肥料学会北海道支部秋季大会において,大学院畜産学研究科資源環境農学専攻修士課程2年生の岸本 明莉さんが,優秀ポスター賞を受賞しました。
日本土壌肥料学会は,食糧の生産に深く関係している土壌学,肥料学,植物栄養学の近代的な理論と技術体系を構築することを目的として,1927年に設立されました。以来,国土資源の保全に関連する環境科学の分野等も取り込んで発展を重ね,現在では約2,500名の会員を擁する非常に歴史ある学術団体です。
本秋季大会には,約120名の学会員が参加し,北海道における土壌肥料学に係る最新の研究成果について35題のポスター発表の中から,岸本さんが発表した「マレーシアの伝統的焼畑圃場における炭化物の供給や微地形が土壌肥沃度の空間変動に及ぼす影響」が,北海道における集約的農業に対して一石を投じる興味深い発表として高く評価され,学会員全員による投票の結果,最多得票のポスターに選ばれ,同日夜に開催された懇親会の席上で表彰されました。
焼畑農業は,一般的には森林破壊や環境汚染を引き起こすことが懸念されていますが,マレーシアの山間地域で行われている伝統的焼畑農業は,数百年前から行われてきた“持続的”な農法です。山間地域の圃場では,火入れ作業により生成した炭化物が,微地形の影響を受けて偏在するため,炭化物の供給や微地形が土壌肥沃度の空間変動に及ぼす影響を調べる必要があります。
岸本さんは,サバ州クロッカー山脈の麓にある焼畑圃場で野外調査や試料採取を行うとともに,土壌の炭素量や肥沃度等を詳細に調べ,炭化物の供給により土壌中に多量の炭素が蓄積していること,施肥を行っていないにもかかわらず窒素やリン酸等の可給態養分が多く,炭化物と微地形の影響を強く受けて空間依存性が高いこと等を明らかにしました。
岸本さんは,今後,北海道の畑作における土壌養分の可給性や空間変動との関わりを成果として発信するとともに,現地の農業局との情報共有や技術連携を目指していく予定です。今後の岸本さんの研究成果が期待されます。