大学院畜産学研究科畜産科学専攻博士前期課程2年の杉浦大斗さんが,日本土壌肥料学会2019年度静岡大会においてポスター賞を受賞しました。
日本土壌肥料学会は,食糧の生産に深く関係している土壌学,肥料学,植物栄養学の近代的な理論と技術体系を構築することを目的として,1927年に設立された非常に歴史ある学術団体です。以来,国土資源の保全に関連する環境科学の分野なども取り込んで発展を重ね,現在では約2,200名の会員を擁し,研究活動や技術開発の範囲を広げてきました。
このたび,日本土壌肥料学会2019年度静岡大会が,9月3日から5日までの3日間にわたり,静岡大学農学部(静岡キャンパス)にて開催されました。約800名の学会員が参加し,9つの部門の最新の研究成果について口頭発表ならびにポスター発表が行われました。第5部門(土壌生成・分類・調査部門)のポスター発表の中から,杉浦さんが発表した「ドローンリモートセンシングで表層土壌含水量は推定可能か?」がポスター賞に選ばれ表彰されました。
表層土壌の含水量を適切に管理することは作物生産にとって非常に重要であり,異常気象が多発する中で多雨や干ばつによる被害を回避するために,圃場内の水の動きを把握することが求められています。本研究では,ドローンに搭載された汎用的なカメラ(マルチスペクトルセンサー)を用いて,土壌の含水量を推定することができるかを検証した結果を報告しました。
北海道の十勝地域および上川地域の普通畑圃場から採取した表層土壌試料について,土壌が乾燥した状態では,近赤外あるいは赤色領域で測定した反射率と土壌の全炭素量(有機物量)や陽イオン交換容量(保肥力)との間に明瞭な相関関係が認められ,ドローン搭載カメラでも土壌の特性が推定できることが示されました。また,一定レベルの含水量までは水分の増加に伴って反射率が低下するのに対して,含水量が一定レベルまで増加した後は反射率が変化しないことが明らかとなりました。十勝地域の場合には,土壌の全炭素量を考慮することにより,表層土壌の含水量や乾湿の状態を推定できることが示されました。
今後は,実際のフィールドにおいてドローン搭載カメラによる土壌の含水量をモニタリングして乾湿の状態を把握することを目指すとともに,様々な排水改良などを行った前後の水分状態を観察して,安定的な作物生産のための土地改良や水分管理を提案することを目指していく予定です。食糧の持続的な生産に貢献できる研究成果が期待されます。