8月12日~16日にかけて,国際協力機構(JICA)草の根技術協力事業として採択された「マダニとマダニ媒介感染症制御による畜産農家支援プログラム」の開始に向けた事前調査を,本プロジェクトの対象国であるウガンダ共和国において実施しました。
ウガンダ共和国は東アフリカに位置する内陸国で,労働人口の70%以上が農畜産業従事者,さらに輸出の80%を農産物が占めるなど,農畜産業が主要な産業となっています。国の北東部から南西部にかけて,cattle corridor (牛回廊)と呼ばれる家畜生産が非常に盛んな地域があり,牛,山羊,豚,家禽等の飼養が行われています。一方,国民一人当たりの総所得は低く,世界最貧国の一つとしても知られています。
ウガンダの畜産農家の多くは,家畜感染症による被害に苦しんでいます。中でも,マダニが媒介するタイレリア原虫による東海岸熱をはじめ,マダニ媒介性の牛アナプラズマ症,バベシア症など,ウガンダ全域において経済的な損耗を与える感染症が多数あります。
殺ダニ剤によるマダニ駆除は広範囲で行われていますが,薬剤抵抗性マダニの出現などにより,十分な防除効果が得られないことが畜産衛生上の問題となっています。効き目のない薬剤の無駄な使用による薬代出費が家計を圧迫しており,薬剤抵抗性マダニの特定,有効な薬剤の選択肢の提示が喫緊の政策課題となっています。本プロジェクトは,この課題解決による畜産農家の支援を目指し,このたび採択されたものです。マダニの吸血による直接的被害,マダニ媒介感染症による間接的被害を減少させ,農家や獣医師に対するマダニ対策プログラムを実施することで,畜産農家の生産性向上を目指します。
調査は,玄学南原虫病研究センター教授,カウンターパート機関のマケレレ大学獣医学部・VUDRIKO Patrick講師,キボガ県獣医事務所の獣医師及びJICA職員のチームで実施しました。ウガンダの中央部に位置するキボガ県は,全域がcattle corridorに含まれており,国内でも有数の畜産県です。調査チームは,県内の対象農家を訪問し,マダニによる被害の状況や駆除方法,牧柵の有無,隣接農家数などの聞き取り調査を行いました。
調査後は,キボガ県獣医事務所において,プロジェクトの実施方法について協議を行いました。調査及び協議結果を踏まえ,プロジェクト遂行のための実施計画を策定し,令和2年1月の開始を目指して必要な準備を進めます。