冨安 洵平 助教 TOMIYASU Jumpei

研究テーマ1) 動物の臭腺の役割を明らかにする 2) オスの繁殖成功に寄与する生理学的特徴の解明

My Dream野生動物の個体レベルのバイオロジーを明らかにし、野生動物と人の共生に貢献する

所属・担当

研究域獣医学研究部門/基礎獣医学分野/形態学系
学部(主な担当ユニット)獣医学ユニット
大学院(主な担当専攻・コース)獣医学専攻
研究分野 解剖学, 内分泌学, 繁殖学
キーワード クマ, 皮膚腺, 精巣, 精子, ホルモン

研究紹介

ヒグマでは、特定の木に体を擦りつけるマーキングを行うことが知られ、特に背部を擦りつけることから「背擦り行動」と呼ばれています(図1)。背こすり行動の頻度は、繁殖期に成獣オスで上昇するため、オス成獣がマーキングによって繁殖に関わる情報を伝えているのではないか?と考えられてきました。
私たちの研究では、オスのヒグマの背部の皮膚腺に着目し解析を行った所、テストステロン(男性ホルモンの一種)が上昇する繁殖期に背部から甘い匂いの油脂性物質が放出されること、2種の皮膚腺(脂腺およびアポクリン腺)が4倍以上に肥大化し、活発な分泌物産生および分泌亢進が認められることを明らかにしました(図2)。これらのことから、繁殖期のオスヒグマはテストステロンの制御下で背部皮膚腺を発達させ、油脂性物質の分泌を促進し、積極的に匂いコミュニケーションを行っている可能性が考えられました。
日本ではクマの出没が大きな社会問題となりますが、その一因として、繁殖期に子連れのメス成獣や若齢個体が、オス成獣を避けて行動する生態が知られています。そのため、クマ出没のメカニズムを理解するには、他個体の行動に影響を与えるオスクマの生態を理解していくことが重要だと考えています。

図1.ヒグマの背擦り行動
図2. 皮膚腺(黒色)サイズの時期変化。繁殖期にサイズが大きくなる。

現在取り組んでいる研究テーマ一覧

  • ヒグマの背部臭腺の役割の研究
  • エゾシカの臭腺の役割の研究
  • ウミガメの繁殖研究
関連産業分野 野生動物学, 獣医学, 環境科学
所属学会 日本獣医学会, 哺乳類学会
学位 博士(獣医学)
資格 獣医師
自己紹介

山梨県出身です。これまでにヒグマやビーバーなど野生動物の研究に関わってきました。豊かな自然に恵まれた北海道の食べ物が好きです。

居室のある建物総合研究棟Ⅰ号館
部屋番号S1102-1
メールアドレス j.tomiyasu atmark obihiro.ac.jp

卒業研究として指導可能なテーマ

  • 野生動物の臭腺に関する研究(ヒグマ、シカ、その他)
  • 野生動物の繁殖研究(ヒグマ、シカ、ウミガメ、その他)
  • 野生動物の特徴を評価するためのバイオマーカーの確立

メッセージ

系統的・環境的な制約を受けて多彩な形質を示す野生動物は、魅力的な研究対象だと考えています。しかしながら、フィールドでのサンプリングは実験系とは異なり、決まったタイミングでの採材が難しい点など問題が多く、研究計画を丁寧に考える必要があります。また、試料の採材は一人で行うことが難しく、チームで協調して進めていく必要があります。大変なことは多いですが、皆が知っている動物の新たな側面を自ら解き明かしていく事はとても楽しい体験だと思っています。地域の野生動物の研究を着実に進め、論文という形で世界に向けて情報発信をしていく研究室を目指します。興味をもっていただいた方は、是非ご連絡下さい。