帯広畜産大学卒業生の小川洸生さん(畜産科学課程農業環境工学ユニット 令和6年卒業・田園生態工学研究室所属〔指導教員:中島直久准教授〕、現・北海道大学大学院農学研究院 博士後期課程1年)が筆頭著者として発表した論文が、地球規模生物多様性情報機構(GBIF:Global Biodiversity Information Facility)の公式ウェブサイトにおいて、データ活用事例として紹介されました。
紹介された論文は、2026年1月に学術誌「Biological Conservation」に掲載された「Historical data to recover the distribution of freshwater fishes across 1950s Japan」です。
GBIFは、世界各国の政府や研究機関が参加し、生物の標本や観察記録などの生物多様性データをインターネット上で無償公開している国際的な情報基盤です。GBIFを通じて公開されたデータを用いた学術論文は年間2,000本以上発表されており、その中からGBIF事務局が注目する研究が公式ウェブサイトの「Data use」のページで紹介されています。
本研究は、小川さんを中心に、宇都宮大学農学部の守山拓弥准教授(共同責任著者)、北海道大学大学院農学研究院の加藤知道教授、福田信二教授らとの共同研究として実施したものです。
日本の淡水生態系は、1960年代以降の高度経済成長期に、水質汚濁や農村における水路管理の衰退などによって大きく変化してきました。本研究では、ウナギ類、アユ、タナゴ類、ナマズ類という、暮らしや食文化と関わりの深い4つの淡水魚を対象に、戦後の急速な工業化が進む前の1950年代における全国的な分布を復元することを目指しました。
全国の農村の方々を対象としたアンケート・聞き取り調査から得られた「当時の記憶」と、1950年代の土地利用図や河川情報を組み合わせ、種分布モデルを構築しました。その際、GBIFを通じて公開されている49,267件の魚類の出現記録を、現在の分布を示す参照データとして活用しました。アンケート・聞き取りによる過去の記憶データは守山准教授、1950年代の歴史地図データは加藤教授、GBIFデータを組み合わせる解析技術を福田教授が提供しました。
GBIFの紹介記事では、地域の人々の記憶という定性的な情報と、生物多様性データに基づく定量的なモデルを統合することで、現在の調査だけでは捉えることのできない生態系の変化を明らかにできる点が、本研究の特長として取り上げられています。
【論文情報】
【GBIF紹介記事】