第76回畜産学部、第58回大学院畜産学研究科並びに第65回別科酪農専修の入学式が、4月4日(木)午前10時から講堂において、挙行されました。
式典では、畜産学部267名(編入学生10名を含む)、大学院畜産学研究科79名、別科酪農専修12名の入学が許可されました。
次いで長澤学長から告示が述べられたのち、長谷山 彰理事長からの祝辞映像が放映されました。
その後、入学者を代表して共同獣医学課程の齋藤 志奈(さいとう ゆきな)さんから「学業に励み、学生の本分を尽くすことを誓います。」と宣誓が行われました。
最後に、来賓・教職員紹介として、帯広畜産大学同窓会会長及び副学長の紹介があり、マンドリンサークルによる帯広畜産大学逍遥歌の演奏ののち、式が終了しました。
学長告辞
新入生の皆さん、入学おめでとうございます。帯広畜産大学を代表して、お祝いを申し上げます。
皆さんは、一人ひとり違った才能を持ち、異なる環境で育ち、多くは生まれ育った土地を離れ、今ここに、進む道を同じくした仲間たちと共にいます。
皆さん自身が、これまで努力と研鑽を重ねた結果、本学に入学するという目標を達成されたことに対して、心から敬意を表します。また、その志を支えてくださった、保護者、ご家族並びに関係者の方々に対し、心よりお慶び申し上げます。
皆さんが本学入学を目指した動機は、様々なことと思います。オープンキャンパスなどで一度、本学を訪れた経験が動機となった方も多いでしょう。ホームページあるいは、様々な媒体で、本学の教育研究環境に関する情報に接した方、本学が取り組んでいるプログラムに興味を持った方もいると思います。これから始まる大学生活には、新たな発見と、人生でかけがえのない経験が待っています。それらは、皆さんをキャリアアップし、将来の進路を形づくる上で、貴重な経験となります。
今の皆さんの心境は、心ズキズキ ワクワクのことと推察いたします。是非、今後の学生生活を有意義なものにしていただきたいと思います。
十勝平野に位置する本学の西には日高山脈、北には大雪山系があり、それらの裾野は十勝川に沿って太平洋沿岸まで広がっています。地平線を望むことのできる広大な十勝平野と太平洋沿岸の豊かな漁場を有するこの雄大な自然環境は、北海道の中でも特に素晴らしいものです。
今年の夏ごろに、新たな国立公園として「日高山脈襟裳十勝国立公園」が、環境省に承認を受ける予定となっています。現在の国定公園の区域が2倍以上となり、日高山脈を中心に、南北140キロにわたる手つかずの自然環境が数多く残る、面積約25万ヘクタールの国内最大の国立公園となります。この自然環境と大陸的な気候は、同時に、十勝の基幹産業である畑作、畜産、酪農にも大きく寄与すると同時に、本学の教育研究を進める上で、大きな強みとなっています。
今から約140年前の1885年(明治18年)に、民間の移民団である晩成社を率いた依田勉三は、北海道全域を調査した結果、広大な十勝平野が、農業・酪農に適した土地であると確信して、開拓を始めました。原野から農地への転換は困難を極め、時代の先を行く酪農事業は挫折を繰り返しました。結局、晩成社の事業は失敗に終わりましたが、十勝における産業基盤と開拓者精神の形成に大きく寄与しました。今なお、依田勉三の思いは、精神的源流として十勝に生き続けています。
今年7月に発行される新1万円札に、その肖像が刻まれるのは、「近代日本経済の父」である渋沢栄一です。彼が、126年前(明治31年)に創設した会社が、畑作や酪農業を手掛ける「十勝開拓合資会社」であり、十勝の清水町の発展につながっています。渋沢栄一の著書には、「従来接した景色の中で、最も雄大で、心を打たれたのは、狩勝峠から見下ろした十勝平野の風景である」と記しています。さらに、「十勝は実に雄大であり、コセコセしたところがなく、米国あたりの大陸にある風景のごとくであり、日本の景色とは思えぬほどである。」とあります。
先人たちの苦労により、幾多の試練を乗り越え、今日では、十勝は、食料自給率1200%を誇る、我が国有数の農業・酪農の中心地として発展しています。
日本の食料生産の中心地として、「生産から消費まで」一貫した環境が揃う十勝に位置する本学は、生命、食料、環境をテーマに、農学、畜産科学、獣医学に関する教育研究を推進する、我が国唯一の国立単科大学です。本学のミッションは、「知の創造と実践によって実学の学風を発展させ、『食を支え、くらしを守る』人材の育成を通じて、地域及び国際社会に貢献すること。」です。
今日、「農と食」に関わる問題は複雑に絡みあい、さまざまな課題を抱えています。これらの農学分野が直面する課題解決のためには、獣医・農畜産融合の教育研究体制の構築が必要です。
獣医専門学校からスタートした本学は、幾多の教育改革を経て、畜産科学課程と共同獣医学課程の教育体制となり、地域農業の中核的リーダーを養成することを目的とした別科(草地畜産専修)は、(酪農専修)となりました。また、より先端的な学習と高度な技術習得のために大学院教育があり、大学院畜産学研究科に、畜産科学専攻博士前期課程及び博士後期課程、並びに獣医学専攻博士課程が設置されています。畜産科学専攻には、獣医・農畜産融合分野の学位を取得するための「畜産衛生学位プログラム」が設置されています。
また、2022年4月に発足した国立大学法人北海道国立大学機構は、帯広畜産大学、小樽商科大学、北見工業大学の3大学を経営統合し、農商工連携による教育研究連携により、北海道経済・産業の発展と国際社会の繁栄並びに、SDGsに示された持続可能な社会の実現に貢献することを目標にしています。産学官金の強力な連携により「実学の知の拠点」を形成し、ステークホルダーの期待に応えて社会の発展に貢献することが使命です。 皆さんには学業の他に、クラブ活動やボランティア活動などにも積極的に参加していただきたいと思います。十勝の開拓の歴史を知り、地域の多様な人々の考えや文化に触れることも大切です。そうした学業以外のアクティブな時間を送ることによって、多様性を受け入れる人間性が育まれ、大学生活は豊かになります。新しい学びあいのコミュニティは、大学の内外に存在しています。 終わりに、新入生の皆さんが、それぞれの目標に向かって、志を高く持ち、悔いのない学生生活を過ごし、生命・食料・環境分野の専門知識、社会に通用する教養、社会情勢の変化や諸課題に対応可能な応用力やコミュニケーション能力を身につけ、「虎に翼」の如く、想像を超えて、大きく成長されることを祈念し、告辞といたします。
令和6年4月4日
帯広畜産大学長
長澤 秀行