9月12日(水)~16日(日)に信州大学繊維学部(長野県上田市)で開催された第111回日本繁殖生物学会において,大学院畜産学研究科博士後期課程畜産衛生学専攻2年のIhshan Aktharさん(指導教員: 生命・食料科学研究部門宮本 明夫教授)が,優秀発表賞を受賞しました。この賞は事前の1次書類審査によって選ばれた6題の口頭発表より選出されたものです。
Aktharさんの受賞課題は「Sperm enter bovine uterine glands ex-vivo and initiate a pro-inflammatory response(精子は体外でウシ子宮腺に侵入して炎症反応を開始する)」です。乳牛は凍結精液の人工授精によって受胎し,出産すると同時に大量の乳を出し始めます。Aktharさんらは,子宮内で起こる精子に対する急性の炎症反応について詳細に観察するために,新鮮な子宮小片を用いて精子の行動と子宮小片に及ぼす炎症効果について,ビデオも用いた多面的な実験モデルを作りました。その結果,精子はまっすぐに子宮腺にだけ直進して,多くはそのまま侵入すること,精子が侵入した子宮腺にはすぐに食細胞である好中球が現れ,精子の貪食を始めること,これら一連の反応と子宮小片の炎症反応が一致すること等を初めて明らかにしました。これらの現象の解明は,今後の人工授精技術の改善を考える上で,重要な科学情報になると考えられます。なお,本成果は,コーネル大学と広島大学との共同研究によるものです。