第75回畜産学部,第57回大学院畜産学研究科並びに第64回別科酪農専修の入学式が,4月4日(火)午前10時から講堂において挙行されました。今年度は講堂の一会場での開催となり,新型コロナウイルス感染症の影響による式典の中止や複数会場での開催を経て,4年ぶりに入学生全員が一堂に会することとなりました。
式典の中では,畜産学部263名(編入学生7名を含む),大学院畜産学研究科87名,別科酪農専修12名の入学者全員の呼名が行われ,入学が許可されました。
次いで長澤学長から告辞が述べられたのち,長谷山 彰理事長から祝辞が述べられました。
その後,入学生を代表して共同獣医学課程の前坂 歩実(まえさか あゆみ)さんから「本学の目的と使命を尊重し,諸規則を守り,学業に励み知徳をみがき,学生の本分を尽くすことを誓います」と宣誓が行われました。
最後に,来賓・教職員紹介として,帯広畜産大学同窓会会長及び副学長の紹介があり,マンドリンサークルによる帯広畜産大学逍遥歌の演奏ののち,式が終了しました。
告辞
新入生の皆さん,入学おめでとうございます。皆さん自身が,これまで努力と研鑽を重ねた結果,本学に入学するという目標を達成されたことに対し,帯広畜産大学を代表して,心よりお祝いを申し上げます。また,その志を支えてくださった,保護者,ご家族並びに関係者の方々に対し,心よりお慶び申し上げます。
皆さんが本学を目指した動機は,様々なことと思います。本学の教育研究環境や,様々なプログラムに興味を持ち,オープンキャンパスなどで一度,本学を訪れた経験が動機となった方も多いでしょう。これから始まる大学生活は,皆さんをキャリアアップし,将来の進路をより明確なものにする貴重な時間となることでしょう。これからの学生生活を有意義なものにしていただきたいと思います。
1885年(明治18年)に,民間の移民団である晩成社を率いていた依田勉三は,北海道全域を見た中で,日高山脈のすそ野に位置する,広大な十勝平野が農業・酪農に適した土地であると確信して,開拓を始めました。開拓から142年間,先人たちによる,原野から農地への転換は困難を極めましたが,幾多の試練を乗り越え,今日では,食料自給率1200%を誇る,我が国有数の農業・酪農の中心地として発展しています。
帯広畜産大学は,今から82年前の1941年に,地域の多大な支援を得て,馬産地として知られていた,ここ十勝に設立されました。日本初の官立の帯広高等獣医学校は,軍馬の獣医師養成を目的とし,第一回入学式には,全国各地あるいは台湾,満州など海外から合わせて132名の新入生を迎えて挙行されました。
太平洋戦争が終結した後,1949年に,国立学校設置法に基づき新制大学として,帯広畜産大学が設置されました。十勝帯広という素晴らしい自然環境と教育研究フィールドの中心に位置する本学は,地域の発展とともに,教育課程の変遷を繰り返し,教育研究に必要な施設・設備が整備・改善されてきました。「生産から消費まで」一貫した環境が揃う十勝に位置する本学は,生命,食料,環境をテーマに,農学,畜産科学,獣医学に関する教育研究を推進する,我が国唯一の国立単科大学です。
昨年4月1日には,帯広畜産大学,小樽商科大学,北見工業大学の三大学経営統合による国立大学法人北海道国立大学機構が発足しました。本機構の経営ビジョンは,「北の大地から世界へ,この道をひらき,挑む」です。農学,商学,工学を担う国立大学の連携により,教育研究機能を強化し,北海道経済・産業の発展と国際社会の繁栄並びに,SDGsに示された持続可能な社会の実現に貢献することを目標としています。
2019年の年末に,中国武漢から発生した新型コロナウイルス感染症は,瞬く間に,世界中に拡散し,WHOがパンデミックを宣言しました。これを受けて,日本においても,3密回避,マスク着用や,行動制限が示され,通常とは異なる生活を余儀なくされました。人類が生まれる前から存在していた感染症への理解が,不十分であったことが露呈し,その対応に社会は混乱しました。新型コロナウイルス感染症の収束を誰もが望みながら,我慢の日々を過ごしてきました。皆さんの生活は,計画していた行動の多くが制限され,コロナ禍に翻弄された3年間であったと思います。しかし,皆さんはコロナ禍に遭遇しながらも,今日のこの日を迎えられました。4月からは,学校や大学ではマスク着用が任意となりました。5月8日には,新型コロナウイルスの感染症法上の分類は,2類から5類に引き下げられるようです。しかし,新型コロナウイルスが一旦収束しても,他の感染症の脅威は依然として残ります。さらに,今日の社会状況は,決して平穏とは言えません。ロシアによるウクライナ侵攻という暴挙などに端を発し,さまざまな原料,資材,エネルギーの高騰が問題となっています。農業,酪農に関しては,肥料代,飼料代の高騰や,生乳の需給緩和などを背景に危機的な状況も見られます。他にも,海のプラスチック汚染や砂漠化などの環境問題,エネルギー問題とも関連する気候変動,民族間の紛争,開発途上国を中心とした飢餓や貧困の問題など,地球規模課題が山積しています。従って,これらの課題解決に対応可能なグローバル人材の育成が急務とされています。
本学のミッションは,「知の創造と実践によって実学の学風を発展させ,『食を支え,くらしを守る』人材の育成を通じて,地域及び国際社会に貢献すること」であり,本学の人材育成目標は,食と農の大切さ,動植物の命の尊さを心得た素養を基礎として,いわゆる「Farm to Table」の幅広い領域を学際的視点で捉える能力と,あらゆる現場に適応できる知識・実践力を有するとともに,地球規模課題解決等の国際的視野を備えたグローバル人材を育成することです。
大学における人材の育成には,学業とともに,大学生活における課外活動も重要な要素となります。皆さんには学業の他に,クラブ活動やボランティア活動などの正課外活動にも積極的に参加していただきたいと思います。時間を惜しまずアクティブに活動すればするほど,大学生活は豊かになります。十勝の開拓の歴史を知り,地域の企業の方々と交流し,多様な人々の考えや文化に触れることも大切です。そうした学業以外のアクティブな時間を送ることによって,多様性を受け入れる人間性が育まれます。
最後に,皆さんが,それぞれの目標に向かって,志を高く持ち,悔いのない学生生活を過ごし,生命・食料・環境分野の専門知識,社会に通用する教養,社会情勢の変化や諸課題に対応可能な応用力やコミュニケーション能力を身につけ,人間的に大きく成長されることを祈念し,告辞といたします。
令和5年4月4日
帯広畜産大学長
長澤 秀行