第71回畜産学部学位記授与式,第62回別科修了証書授与式,第55回大学院学位記授与式が,3月20日(月)午前10時から講堂において,挙行されました。
今年度は講堂の一会場での開催となり,新型コロナウイルス感染症の影響による式典の中止や複数会場での開催を経て,4年ぶりに卒業生・修了生全員が一堂に会することとなりました。
今年度の卒業生は学部卒業生263名,博士前期課程修了生53名,博士後期課程修了生4名,博士課程修了生7名及び論文博士2名,修了生は別科修了生9名で,長澤学長より学位記・修了証書が卒業生・修了生へ直接授与または代表者へ授与されました。
次いで長澤学長から告辞が述べられたのち,北海道国立大学機構の長谷山彰理事長による祝辞映像が放映されました。来賓祝辞では,ご臨席いただいた帯広畜産大学同窓会会長の西田譲様からお祝いの言葉をいただきました。
その後,卒業生を代表して畜産科学課程の臼井野々花さんによる答辞がありました。
続いて学生表彰があり,学業成績優秀者8名の氏名が読み上げられ,会場から拍手が送られました。
最後に,来賓・教職員紹介があった後,閉式の辞が述べられ,卒業生,修了生が退場し,式が終了しました。




告辞
本日ここに,関係各位のご臨席をいただき,令和4年度の学位記並びに修了証書授与式を挙行できますことは,本学にとりまして大きな喜びです。
畜産学部,別科酪農専修,大学院畜産学研究科のそれぞれの課程を修了され,本日,この式典に臨むことができますのは,皆さん自身が努力と研鑽を重ね,それぞれの課題や困難を克服した結果であり,深く敬意を表します。
留学生の方々は,環境や文化の違う地において,さらに苦労が多かったと思います。卒業あるいは修了の時を迎えられたすべての皆さんに,心からお祝いを申し上げます。
また,ご家族の皆様には,感慨もひとしおのことと推察いたします。誠におめでとうございます。本来であれば,この会場で,直接,参加していただきたいのですが,コロナ禍の微妙な時期でもあり,大学として,苦慮しているところです。ご家族の皆様には,本日は,別会場にてオンライン配信によりご参加いただいておりますことをご容赦いただきたいと思います。
本学は昭和16年に前身となる帯広高等獣医学校が創設され今年で82年目を迎えます。第一回卒業証書授与式は,昭和18年9月に挙行されました。太平洋戦争の真っただ中であり,卒業後に迎える社会の状況には,不安がいっぱいだったことが容易に予想されます。
終戦後の昭和24年には,国立大学設置法が公布され,帯広農業専門学校が帯広畜産大学と名称を変え,施設・設備が十分ではない教育・研究環境のもとで新制大学としてスタートしました。初代学長の宮脇冨先生は,「従来の農業教育の極端なる分化を是正し,各種技術の統合を図ることにより農学を有機的ならしめ,我が国の農業を革新的に発展させる。」と宣言されました。
新制大学としてスタートしてから74年が経過した現在,人工知能(AI)技術やIoTを利用したスマート農業が展開され,バイオテクノロジーの進歩もめざましく,農業は,革新的に発展しています。一方,ロシアによるウクライナ侵攻という暴挙により,国際社会は大混乱を引き起こしています。コロナ禍の影響もあり,さまざまな原料,資材,エネルギーの価格が高騰しています。とくに,肥料代,飼料代の高騰や,生乳の需給緩和などを背景に,農業,酪農が危機的な状況となっています。あらためて,本学が掲げる「食を支え,くらしを守る人材の育成」の重要性が認識されるところです。
昨年4月1日には,本学と小樽商科大学および北見工業大学の3大学が経営統合により国立大学法人北海道国立大学機構を発足させました。本機構の経営ビジョンは,「北の大地から世界へ この道をひらき,挑む。」です。農学,商学,工学を担う国立大学の教育研究連携により,北海道経済・産業の発展と国際社会の繁栄並びに,SDGsに示された持続可能な社会の実現に貢献することを目標としています。皆さんは,機構発足後,最初の卒業生,修了生ということになります。未来に向かって,様々な道をひらき,物ごとに挑戦してください。
創立以来,施設・設備が整備され,教育課程が変わり,教育研究環境が改善され,設置者が変わっても,創立以来の本学の強みや特色に揺るぎはありません。日本の食料生産の中心地として「生産から消費まで」一貫した環境が揃う十勝に位置する本学は,生命,食料,環境をテーマに,農学,畜産科学,獣医学に関する教育研究を推進する,我が国唯一の国立単科大学です。
本学のミッションは,「知の創造と実践によって実学の学風を発展させ,『食を支え,くらしを守る』人材の育成を通じて,地域及び国際社会に貢献すること」であり,本学の人材育成目標は,食と農の大切さ,動植物の命の尊さを心得た素養を基礎として,いわゆる「Farm to Table」の幅広い領域を学際的視点で捉える能力と,あらゆる現場に適応できる知識・実践力を有するとともに,地球規模課題解決等の国際的視野を備えたグローバル人材を育成することです。
また,「食の安全確保」を担う専門家として,問題解決型の高度な研究能力と幅広い見識を備えた人材を育成することが,本学のミッションであり社会的役割です。教育プログラムの実施に関しては,地域の試験研究機関や農業・食品あるいは動物関連企業,更に,動物衛生・食品安全を担う国際機関,開発途上国に対する国際協力機関等との連携によって,ミッションに掲げたグローバル人材が育成されたと確信しています。
大学における人材の育成には,学業とともに,大学生活における課外活動も重要な要素となります。部活,サークル活動,アルバイトの経験,イベントの実施などは,生涯続く人間関係の形成に大いに役立ちます。しかし,2019年の年末に,中国武漢から発生した新型コロナウイルス感染症は,瞬く間に,世界中に拡散し,WHOがパンデミックを宣言しました。これを受けて,日本においても,3密回避,マスク着用や,行動制限が示され,通常とは異なる学生生活を余儀なくされました。人類が生まれる前から存在していた感染症への理解が,不十分であったことが露呈し,その対応に社会は混乱し,適切ではない対応策が進められたことを指摘する研究者もいます。新型コロナウイルス感染症の終息を誰もが望みながら,我慢の日々を過ごしていたのが,これまでの3年間余りです。
昨年,ようやく開催された,寮祭や学祭は実行委員や関係者の努力により実施されました。しかし,以前のように,無条件に楽しむ状況ではなかったかもしれません。皆さんの学生生活は,計画していた行動の多くが制限され,コロナ禍に翻弄された3年間であったと思います。しかし,皆さんはコロナ禍に遭遇しながらも,今日のこの日を迎えられました。4月から,学校や大学ではマスク着用が任意となります。5月8日には,新型コロナウイルスの感染症法上の分類は,2類から5類に引き下げられるようです。卒業,修了を迎えられた皆さんは,これまでにも増して自らの責任において決断し,道を拓いていかねばならない場面が増えてきます。
本学創設以来,これまで約一万七千人がこのキャンパスを巣立ち,国内外の「生命,食料,環境」の分野で多彩な活躍をしています。全国各地に設立されている同窓会支部には,多様な職種や幅広い年齢層の同窓生が集い,十勝・帯広,あるいは大学生活にまつわる昔話に花が咲き,楽しいひと時を過ごすことになります。皆さんも,是非,各地の同窓会支部の総会・懇親会に参加してください。同じ大学キャンパスで,ともに過ごした日々には,様々な共通の思い出があり,大学時代に育まれた絆は,いつまでも変わらないことを実感します。
終わりに,本日,本学の同窓生となる皆さんが,今後,遭遇するであろう,困難な課題や想定外の局面などに真っ向から立ち向かい,将来の担い手となって社会を牽引していただき,「食を支え,くらしを守る」様々な分野において大いに活躍し,地域社会や国際社会に貢献することを祈念して,告辞といたします。
令和5年3月20日
帯広畜産大学長
長澤 秀行