日本土壌肥料学会2022年度東京大会(9月13日(火)~9月15日(木):東京農業大学)において,大学院博士前期課程畜産科学専攻の2年Elton Amadeus Francisco(エルトンアマデウス フランシスコ)さん(指導教員:谷昌幸教授・木下林太郎助教)が若手ポスター発表優秀賞を受賞しました。Elton Amadeus FranciscoさんはJICAのABEイニシアティブプログラムの研修生で,モザンビークからの留学生です。
学会には約600名の学会員が参加し,9つの部門の最新の研究成果について口頭発表ならびにポスター発表が行われ,第5部門(土壌生成・分類・調査部門)の中から,若手ポスター発表優秀賞に選ばれました。
Elton Amadeus Franciscoさんの発表演題は「Assessment of available phosphate by inherent soil properties in a large-scale field under Andisols of Tokachi(十勝地域の大規模黒ボク土普通畑における土壌固有の特性値による有効態リン酸量の評価)」です。本研究では,土壌の有機炭素量やリン酸吸収係数など,土壌固有の特性値を用いて,土壌の有効態リン酸量を推定することができるかを検証した結果を報告しました。
本学畜産フィールド科学センターの8号圃場約7.2 haを対象に,土壌中の有効態リン酸量を詳細に調べた結果,53~584 mg P2O5/kgと圃場内で著しい空間変動が認められました。土壌固有の特性値との関係を調べたところ,土壌がリン酸を固定する能力の指標であるリン酸吸収係数のみでは説明することができず,複数の特性値が相互的に影響を及ぼしていることが示唆されました。決定木解析により土壌の有機炭素量と非晶質鉱物量が相互的に影響していることが示され,土壌有機物量が多くて非晶質鉱物量が少ない地点で有効態リン酸量が多く,有機物量が少なくて鉱物量が多い地点で有効態リン酸量が少ないことが明らかとなりました。
これら土壌固有の特性値は,ドローンや人工衛星から得られる画像により推定することが可能であり,今後は画像を解析して土壌固有の特性値を推定するモデルを構築し,その結果に基づいて大規模黒ボク土圃場の有効態リン酸量を推定し,圃場内の可変施肥を実現することを目指していく予定です。食糧の持続的な生産に貢献できる研究成果が期待されます。
