6月12日(水)から14日(金)まで埼玉会館で開催された第28回環境化学討論会において、畜産学部共同獣医学課程6年の坂本梨果子さんが、優秀発表賞を受賞しました。
本討論会を主催する一般社団法人日本環境化学会は、環境と化学物質に関わる学問分野の学際的調査・研究の推進及び知識の普及を図り、もって、化学物質による環境汚染の防止及び環境保全に寄与することを目的として1990年に設立され、約850人の個人会員と約100団体の団体会員を擁する環境系学会です 。今回の優秀発表賞は、エントリー資格として15分の口頭発表をおこない、環境化学分野を専門に活動している複数の著名な学会員により審査されました。
坂本梨果子さんの発表演題は、「タンチョウ(Grus japonensis)における異物代謝酵素シトクロム P450 1-3 遺伝子の同定・定量と機能解析」です。タンチョウ投薬治療法の確立をめざし、薬物感受性種差の要因となりうる異物代謝酵素シトクロムP450(CYP)1-3 遺伝子に着目して、タンチョウ肝臓におけるCYP発現分子種や臓器ごとの発現分布を明らかにしました。また本研究で、タンチョウに頻用されるアゾール系抗真菌薬によって肝ミクロソームでのCYP活性が阻害されることを確認し、個体治療においては薬物相互作用を考慮した慎重な投薬が必要であると考えられました。さらに、タンチョウ肝臓で主要に発現するCYP分子種について、酵母を用いて人工的にCYPを発現させ、その機能について評価しました。こうした成果から、野生個体を用いることなく、臨床現場で頻用される薬物の代謝や酵素阻害特性を明らかにすることが期待されます。
坂本さんは、「初めての学会でこのような賞を受賞して大変光栄に思うとともに、ご指導・ご協力いただいた先生方、関係者の皆様に深く感謝いたします。基礎的研究を通じて獣医学分野に貢献できるよう、これからも研究に精進していきたいと思います。」と喜びを語ってくれました。