国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)と独立行政法人国際協力機構(JICA)が協同で行う事業「地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)」の終了に向けた最後の調査に,井上昇理事とプロジェクトリーダーの横山直明原虫病研究センター教授が参加しました。
本プロジェクトは,モンゴル獣医学研究所(IVM)をカウンターパート機関とし,モンゴル国における家畜原虫病に関する大規模な疫学調査を実施し,分布や被害の実態を明らかにしたうえで,簡易迅速診断法を開発してきました。現在,社会実装に向けた普及,若手専門家育成,原虫病早期発見体制の整備を通じて,同国における家畜原虫病対策と畜産振興に貢献すべく,活動を行っています。
井上理事と横山教授は,4月29日(月)から5月2日(木)にかけて,モンゴル国南部のドントゴビ県とウムヌゴビ県の県獣医オフィスや臨床獣医師を訪問し,プロジェクト成果の説明,これまでの協力のお礼,最近の活動内容の意見交換等を行いました。併せて,プロジェクトの感想や診断キットの活用状況などの聞き取り調査も行いました。また,5月3日(金)にはモンゴル科学技術基金局を訪問し,Namsraijav局長に対して,IVMのプロジェクトの持続的発展に向けた支援を要請しました。
SATREPSプロジェクトを通して,対応策ガイドラインの設定や原虫疫病学マップの作成,診断法の開発など,これまでに貴重な技術や情報を得ることができました。現地の臨床獣医師からも,モンゴル国の畜産衛生の向上のためにとても有効であった,との感想が寄せられました。両県では,馬トリパノソーマ病や家畜ピロプラズマ病が今でも頻発しており,本プロジェクト成果への関心は極めて高く,今後は,IVMとして国や県行政に支援を働きかけるなど,持続的な診断法の活用や対応策を試みていく予定です。
AMED事業本部からも極めて高い評価を得ている本プロジェクトは,2019年5月をもって終了します。
なお,モンゴルのテレビ局MNBTVの番組「健康な家畜はモンゴルの富」において,ピロプラズマ病と媒介ダニが紹介されました。ナレーションはモンゴル語ですが,以下のYouTubeリンク先からご覧いただくことができます。
https://www.youtube.com/watch?v=s7eZBw6cKbE&t=1s