第70回畜産学部学位記授与式,第61回別科修了証書授与式,第54回大学院学位記授与式が,3月18日(金)午前10時から講堂及び講義棟大講義室において,挙行されました。
奥田学長から,学部卒業生257名及び博士前期課程修了生45名に学位記が,別科修了生8名に修了証書がそれぞれ代表者に授与されました。また,博士後期課程3名及び博士課程1名にそれぞれ学位記が授与されました。
学長による告辞のあと,ご臨席いただいた帯広畜産大学同窓会会長の西田譲様から祝辞をいただきました。
その後,卒業生代表の塚本雄基さんの答辞がありました。
続いて学生表彰があり,今年度は新型コロナウイルス感染症対策のため,式典の規模を縮小して実施したため,表彰状授与は行いませんでしたが,学業成績優秀者の氏名が読み上げられ会場からは拍手がありました。
最後に帯広畜産大学逍遥歌が流れるなか,卒業生,修了生が退場し,式が終了しました。
告辞
このたび晴れて卒業・修了する学生諸君は,本日の学位記授与式を心待ちにされていたことと思います。本来であれば,全学の教職員に加え,ご家族をはじめとする,これまで皆さんを支援してこられた方々のご参加のもとに学位記授与式を挙行し門出をお祝いするところですが,昨年同様,新型コロナウイルスに対する危機管理上の判断から卒業生と修了生のみの参加とし,さらに二会場に分散して開催する事としました。一堂に会して開催する事ができず大変残念に思います。感染防御を最優先しての判断であることをご理解ください。
二年以上にわたる,コロナ禍の想像を遙かに超える長期化の中,大学は非日常の教育形態を取らざるを得ず,研究においても課外活動においても同様で,学生諸君には大変な苦労をかけたことと思っています。そうした状況下においても努力を重ねられた結果,畜産学部,大学院畜産学研究科,別科酪農専修のそれぞれの課程を修められ今日という日を迎えられたのは,多くの課題や困難を克服した皆さんご自身の努力の賜物であり深く敬意を表します。留学生の皆さんは,環境や文化の違う地において,さらに苦労が多かったことと思います。卒業あるいは修了の時を迎えられたすべての皆さんに,帯広畜産大学を代表して心からお祝いを申し上げます。
また,これまでさまざまな形で支援してこられた,ご家族の皆様,関係各位の皆様には,感慨もひとしおのことと拝察いたします。心よりお慶びを申し上げます。また,今日まで熱心に指導して下さった先生方,また学業や生活に必要な支援をして下さった職員の方々にも,この場を借りましてお礼を申し上げます。
本年度の帯広畜産大学の学部卒業生は257名,別科修了生8名,大学院修了生49名,総勢314名であります。そして,そのうち8名の外国人留学生が卒業・修了を迎えられました。帯広畜産大学の名のもとに,これからの日本を支え,世界に羽ばたく314 名の人材を社会に送り出すことは,学長として大きな誇りです。
学部,大学院,別科を問わず,皆さんは実学を基調とする本学で幅広い知識や技術を修得するとともに,これから直面する様々な課題に取り組むための知識とともに困難を乗り越える術を身に付けてこられたました。さらに,皆さんは,学業だけでなく,寮生活,サークル活動などを通じて,異なる価値観を持った仲間たちと語り合い共に行動する事によって,人生の糧となる多くの友人や相談できる仲間を作ってこられたことと思います。これからの進路は様々だと思いますが,いずれの社会においても,これまでの与えられることの多かった社会と異なり自ら決断しなければならない場面が増え,責任ある言動が求められます。
皆さんのこの二年余りは,計画していた行動の多くが制限され,コロナ禍に翻弄された2年であったと思います。しかし,皆さんはコロナ禍に遭遇しながらも,今日を迎えられました。明日から皆さんは,これまでにも増して自らの責任において決断し,道を拓いていかねばならない場面が増えてきます。
新しい社会では仕事を覚えることと同時に組織の持つ特有のルールを覚え,一日も早くその社会に馴染んでいくことが重要なことは言うまでもありません。一方で,新人だからこそ「どうしてこういうルールがあるの?どうしてこういう風にするの?こうした方が効率的ではないの?」といった疑問が数多く湧いてくるでしょう。
ここで話を「イノベーション」に飛ばしたいと思います。「イノベーション」とは,モノや仕組み,組織,ビジネスモデルなどに新たな考え方や技術を取り入れて新たな価値を生み出し,社会にインパクトのある革新や変革をもたらすことと定義されています。法政大学教授の真壁昭夫氏は自身の著書でイノベーションを生み出すのは,固定観念にとらわれない若者,枠組みに収まらないバカ者,いままでのやり方を知らないよそ者と述べています。この論には賛否両論ありますが,あえて私は皆さんの門出に際しこの言葉を引用しました。皆さんは「固定観念にとらわれない若者(新人)」だからこそ気づく疑問を記憶にとどめ,さらに「枠組みに収まらない」「今までにはない」独自の考えを大切に温め,いつの日か新人の時にもった独自の考えを基にしたイノベーションを起こしていただきたいと思います。最初にいだいた疑問がとても大切なのです。
『トム・ソーヤーの冒険』の著者として知られているマーク・トウェインは,「今から20年後,あなたはやったことよりもやらなかったことを悔やむことになるだろう。そうなる前に,安穏(あんのん)とした港から船を出せ。」という言葉を残しています。この言葉を私は,「若いときに持った疑問や課題を解決する行動をしろ。長いものに巻かれ,保守的な生き方をしていると,必ず後悔する時がくる」と解釈しました。研究面では過去の結果や教科書をも鵜呑みにせず,定説に疑問を持ち,それを検証することから新しい発見が生まれることはよくあることです。若者とって,できあがった社会の構造に手をつけるのはとても勇気のいることですが,明日から新しい社会に飛び立つ「若者」であり「よそ者」である皆さんには,最初の疑問を忘れず,イノベーションに挑戦するマインドを持ち続けていただきたいと思います。
本学の卒業生はこれまで約一万七千人が国内外で,多彩な活躍をされています。全国各地の同窓会支部には,様々な職種,幅広い年齢の同窓生が集い,大学時代の思い出話に花を咲かせ,楽しい時間を共にされています。
私は全国で開催される同窓会に参加してきました。どこでも実感するのは,同窓生の皆様が母校への熱い思いを持ち続け,母校の益々の発展のために応援してくださっていることです。今日,皆さんが本学同窓会の仲間になられることを,学長・同窓会名誉会長として心から歓迎するとともに,これから活躍される地域にある同窓会支部に参加し,同じキャンパスで過ごしたファミリーとして母校を応援してくださるようお願いいたします。
卒業は,大学との別れではありません。大学は,さらなる知識を得る場,学び直しの場として皆さんの近くに在り続けます。卒業した皆さんが社会で直面する様々な課題をともに解決する時こそ,新たな協働の始まりとなり,大学の発展にもつながります。どうぞ,皆さんにはこれからも本学と積極的に関わりを持ち続け,本学の卒業生であることを活用していただきたいと思います。
今日を迎えられた皆さんひとりひとりに,今一度お祝いを申し上げるとともに,『これからの人生において,いかなる困難に直面しても本学在学中に得た様々な知識や経験をもとに果敢にイノベーションに挑戦してください!』とエールを送り,告辞といたします。
令和4年3月18日
帯広畜産大学長
奥田 潔