反芻家畜の特徴と地球温暖化

反芻家畜は胃袋が4個あります。4番目の胃袋が人間と同じで,前の3個の胃の中では数多くの微生物が住んでいます。ヒトは草を食べても栄養源として活用できませんが,反芻家畜はこれらの胃内の微生物のおかげで,消化することができます。微生物は反芻家畜の食べたエサを消化して,お酢やその仲間の酸を作り出します。反芻家畜はその酸を胃の壁から吸収して,血液で全身に運んで栄養源として活用しています。また微生物は,反芻家畜の食べたエサを栄養源として自分たちもどんどん分裂して増えていきます。そして最後は,自分自身が消化・吸収されてタンパク源として,宿主である反芻家畜の栄養になります。

このようにいいことづくめの微生物ですが,消化の途中でメタンガスを発生させます。このメタンは,反芻家畜には使われることなく,ゲップとして大気中に放出されます。食べたエサのエネルギーの一部を,使うことなく体外へ出してしまうということです。このメタンは同時に,最近では,地球温暖化を引き起こす原因の一つ(図)として,なるべく減らすことが求められています。

そこで私たちは,反芻家畜の胃内の微生物がエサを消化するのを邪魔をすることなく,メタンの発生を減らす方法はないかと,いろいろと新しい素材を探しています。

この文を書いた人 西田 武弘 教授
所属 研究域/生命・食料科学研究部門/家畜生産科学分野/生産管理学系
関連リンク 西田武弘研究室