農林水産物の生産環境には有害化学物質や有害微生物といった危害要因(ハザード)が存在し、汚染リスクをゼロにすることは困難です。特に有害微生物は、温度や栄養などの条件が整えば、検出できない少ない数から短時間で病気を起こす数まで増えます。このため、科学データに基づいて農場から食卓までのすべての段階で汚染リスクを減らす取組を行う必要があります。
農林水産物の生産環境には有害化学物質や有害微生物といった危害要因(ハザード)が存在し、汚染リスクをゼロにすることは困難です。特に有害微生物は、温度や栄養などの条件が整えば、検出できない少ない数から短時間で病気を起こす数まで増えます。このため、科学データに基づいて農場から食卓までのすべての段階で汚染リスクを減らす取組を行う必要があります。
鶏は飼料効率が高いことから、世界的に飼育羽数が増加し、鶏肉生産量は近年豚肉を抜いて一位となりました。そんな鶏肉を汚染し、それを食べた人に食中毒を起こすのがカンピロバクターやサルモネラです。鶏肉・鶏卵生産の最も上流にある養鶏場において鶏群がこれらの菌を健康なまま保有していることに着目し、鶏群の食中毒菌フリーを目指した調査・研究を行っています。
本学の動物・食品検査診断センターは、食品衛生検査の分野で国内唯一の大学内国際規格(ISO/IEC 17025認定)を取得しています。私達はこの検査精度の高い検査室を利用し、農畜産物の安全性をアピールすることで、国産食品の国際競争力強化に貢献したいと考えています。
乳生産における最大の危害とは、牛乳に病原微生物や抗菌性物質などの異物が混入することです。病原微生物の感染によっておこる乳房炎は、これらの異物混入のリスクを格段に高めます。私達は乳房炎原因菌の簡便で迅速で正確な同定手法の確立や、抗菌性物質の慎重な使用法、また、乳房炎をコントロールする効果的な手段の開発に取り組んでいます。
ニワトリの産卵数、卵サイズ、卵殻色などの遺伝形質を決めている遺伝子機構を制御し、安定的な養鶏経営に貢献したいと考えています。また、鶏卵の味に関わる遺伝と環境要因を研究し、おいしい卵の開発も目指しています。
植物や動物の病気の多くは、昆虫を介して伝搬されます。これまで、このような媒介性害虫を防除することで動植物の病気を抑制してきましたが、殺虫剤抵抗性の発達により媒介性害虫の防除が困難になりつつあります。私たちは、生物防除や生物学的栄養強化などの方法を用いて、病原体を運べない昆虫や環境を作り出せないか研究を進めています。このように応用昆虫学の視点から「食」や「命」を守ることに貢献することを目指しています。
乳酸菌は糖を代謝して乳酸を菌体外へ分泌する能力を持ちますが、その中には多くの糖を連結した「細胞外多糖」を生産する菌がいます。インドの伝統的発酵乳「ダヒ」などから発見されていて、様々な生理機能性や物性が期待されています。私達は細胞外多糖の化学構造や物性を明らかにし、乳酸菌の新たな利用技術を開発し、食品産業の振興に貢献したいと考えています。
1軒の酪農家で家畜伝染病が発生した場合、地域経済全体に影響を及ぼす可能性があります。このような事態になる前に、緊急時の行動指針を地域で話し合っておくことで、実際に被害が起きた時に迅速かつ円滑な対応ができ、被害を最小限にできると考えています。では、どのような取り決めや訓練が必要なのか、私達は地域単位から産業単位まで包括的に研究しています。
ヨーグルトやチーズなどの発酵食品の発酵過程で利用される乳酸菌は、漬物、みそ、しょうゆ、お酒などに使われている乳酸菌と同様に、人々の身近なところに生息しています。私達は安全でおいしい食品の製造につながるような新しい乳酸菌の株を地元で探索し、地域の特色ある加工食品を創出したいと考えています。
肉質は時間と共に変化し、人が食べておいしいと感じる“熟成”という現象が起きます。家畜の品種や温度の状態など様々な要因と熟成のメカニズムを研究しています。また、エゾシカやダチョウなどの野生動物を食肉資源とした場合の適切や熟成期間についても調べて、少しでも地元の生産者や生産に関係する人たちに貢献して行きたいです。
和牛の肉質を評価する上で重要な脂肪交雑の状態を、枝肉のまま撮影して評価できるカメラを数種類開発し、大学発ベンチャーを立ち上げました。今では国内外で利用されるようになり、脂肪交雑を評価する標準的な撮影装置に位置づけられています。今後はフィードバックされた大量のデータを検証し、さらなるおいしさの追求をしていきます。
カビや酵母、キノコは、まとめて「真菌」と呼ばれます。真菌は私たちの生活になくてはならないものですが、一方で、一部の真菌は、食品を汚染する毒素(カビ毒)を作ったり、ヒトや動物に感染症を引き起こしたりします。私達は「アスペルギルス」などの身近なカビが起こす病気のメカニズムを解明し、病気の治療や検査方法開発に貢献することを目指しています。
殺虫剤や抗生物質、環境汚染物質などが家畜に過度に曝露されることによる生産性の低下や、家畜に濃縮された化学物質が畜産食品を介して及ぼすヒトへの健康被害など、化学物質はヒトや動物の健康を脅かすことがあります。このような化学物質の有害性の評価や毒性が発現する仕組みを研究することで、獣医・畜産・環境分野に貢献したいと考えています。