平成30年4月
ピロプラズマ病に対する新たな薬剤開発
ピロプラズマ病は,バベシア及びタイレリアがマダニによって動物に媒介され,赤血球に寄生することにより,発熱,貧血,血色素尿症を引き起こす難治性の原虫病です。ピロプラズマ病は世界的に分布し,畜産業に大きな経済的被害を与える他,人にも感染することが知られ,人獣共通感染症としても重要です。しかし,現在使用されている治療薬は副作用が強く,治療を受けた動物でも再発することが報告されています。そのため,原虫を殺滅する効果と安全性が高い薬剤の開発が喫緊の課題です。本研究では,熱ヒートショック蛋白質90阻害剤(17-DMAG)のバベシアとタイレリアに対する増殖抑制効果について検討を行いました。その結果,17-DMAGは,牛バベシア(B. bovis, B. bigemina, B. divergens),馬ピロプラズマ(B. caballi, T. equi)に対して 高い増殖抑効果対を有することが明らかになりました。また,B. microti感染マウスに17-DMAG 30 mg/kgを投与すると,優れた治療効果が認められた。さらに,また,現在ピロプラズマ治療薬として使用されているジミナゼン・アセチューレートと17-DMAGを併用すると,それぞれの投薬量を半分にしても,十分な治療効果が得られました。今後の研究により,17-DMAGは,家畜のピロプラズマ病の新たな治療薬として実用化されるばかりでなく,現在人バベシア病の治療に用いられている薬剤との新しい併用治療法としても期待されます。本論文の発表は日本学術振興会科学研究費補助金の支援を受けて実施されました。
17-DMAG inhibits the multiplication of several Babesia species and Theileria equi on in vitro cultures, and Babesia microti in mice.
Guswanto A, Nugraha AB, Tuvshintulga B, Tayebwa DS, Rizk MA, Batiha GE, Gantuya S, Sivakumar T, Yokoyama N, Igarashi I.
Int J Parasitol Drugs Drug Resist. 2018 Apr;8(1):104-111. doi: 10.1016/j.ijpddr.2018.02.005. Epub 2018 Mar 1.