国際協力機構JICAとの協力

背景・目的

世界の人口は21世紀半ばに現在の約1.5倍(90億人)に達すると見込まれるが,特に新興国・開発途上国では,未来の動物性蛋白質の安全確保のため,家畜感染症による食料生産阻害の現状を早急に打開することが懸案となっている。一方,これら感染症のほとんどは人獣共通感染症で,食糧問題のみならず,直接に人々の健康並びに安全な社会活動を脅かしている。途上国では,これら感染症のコントロールを国際社会と協調して実践する高度専門家の育成が喫緊の課題となっている。先のG8北海道洞爺湖サミット首脳宣言においても,マラリア等感染症の診断法,ワクチン,治療薬の開発研究や公衆衛生上の問題に対処するための開発途上国の能力開発支援を強化することが提唱されている。また,世界177ヶ国が加盟して家畜と畜産品の安全・安心確保を目指す国際機関「国際獣疫事務局(WOAH)」では,世界最先端の感染症研究組織をWOAHコラボレーティングセンターとして認定し,当該組織の研究成果を新たな感染症診断法やワクチンの国際標準化に活用している。近年,WOAHにおいても,開発途上国における感染症診断技術,公衆衛生の向上を図るため,コラボレーティングセンターの開発途上国に対する貢献を重要視しており,平成20年5月にアジアで初めてWOAHコラボレーティングセンターに認定された原虫病研究センターにも大きな期待が寄せられている。

本JICA集団研修では,教員等のスタッフと研究設備が整った原虫病研究センターにおいて,人畜共通感染症の制圧に携わる途上国専門家が感染症対策に直接関連した診断・予防・治療技術とその実践に資する周辺専門知識を習得し,途上国での人畜共通感染症の診断・予防・治療技術の質が向上することを目的とする。

研修内容

帯広畜産大学原虫病研究センターにおいて,研修員の希望を考慮して研修目的に応じた最適な研究分野に配慮し,研究分野責任者の直接指導を行う。受入研究分野は,1.ゲノム機能学分野,2.生体防御学分野,3.節足動物衛生工学分野,4.高度診断学分野,5.先端予防治療学分野,6.感染病理学分野の6分野でそれぞれ診断・予防・治療と宿主病態応答の先端研究技術の修得を指導教員との共同研究を通して広く行う。

国際共同研究

  • 国際機関: 国際獣疫事務局(フランス),国際家畜研究所(ナイロビ)
  • 米国: スタンフォード大学,ワシントン州立大学,テキサスA&M大学,アイオワ大学
  • カナダ: ヴィクトリア大学
  • ドイツ: デュッセルドルフ大学,ハノーバー獣医大学,ミュンヘン大学
  • オーストラリア: アデレード大学
  • オランダ: インターベット中央研究所
  • 中国: 上海獣医研究所,延辺大学,新彊農業大学,中山大学
  • モンゴル: モンゴル農業大学獣医学研究所
  • 南アフリカ: オンデルステポート獣医学研究所
  • タイ: カセサート大学,マヒドン大学
  • 大韓民国: 全北大学,慶尚大学,慶北大学
  • ザンビア: ザンビア大学