平成30年5月
新たなネズミマラリア原虫遺伝子変異体の作製方法を開発しました。
マラリアは蚊によって媒介される世界最大規模の感染症で年間50万人以上の命を奪っており、 抜本的な対策法の確立が求められています。このような研究ではどのように感染が成立するのか、 遺伝子レベルでの解明が求められます。そこで、ヒトへの病原性を持たないネズミマラリア原虫をモデルとして用い、 標遺伝子機能を調べることが一般的です。しかし、従来の遺伝子組換え体の作製法は効率が悪く、 その結果として多くの時間・費用がかかることが研究進展のネックになっていました。 そこで本研究ではこの問題を解決するため、効率的な遺伝子組換えネズミマラリア原虫作製法の開発を試みました。 その結果、抗生物質であるブラストサイジンとその耐性遺伝子であるbsdを用いて遺伝子組換え原虫を作製可能な新たな 実験系を開発することに成功しました。今回確立した方法により、ネズミマラリア原虫において独立した薬剤マーカーにより、 最大4遺伝子を同時に破壊することが可能となりました。今後、この本法を用いた様々な解析により、 新たな治療薬・ワクチン開発にむけた研究の進展が期待されます。
本論文発表は日本学術振興会科学研究費補助金の支援を受けて実施されました。
Development of a bsd-blasticidin selection system in Plasmodium berghei.
Soga A, Ko-Ketsu M, Fukumoto S.
FEBS Lett. 2018 Jun;592(11):1847-1855. doi: 10.1002/1873-3468.13100. Epub 2018 May 27