2024年1月24日(火),小柴琢己教授(福岡大学・理学部化学科)によるセミナー講演「MicroRNAs target mitochondrial-mediated antiviral innate immunity by regulating mitochondrial dynamics and metabolic demand」を開催しました。
複数の遺伝子の抑制因子として働く低分子ノンコーディングRNAであるマイクロRNA(miRNA)は,疾患プロセスを含む多くの生物学的機能に関与しています。 今回,2つのmiRNA,miR-302bとmiR-372が,ミトコンドリアの動態と代謝需要を制御することによって,ミトコンドリアを介する抗ウイルス自然免疫を標的としていることが紹介されました。 miR-302bとmiR-372はともにウイルス感染後後期の細胞で発現が上昇し,最終的にI型インターフェロンと炎症性サイトカインの産生を停止させます。 小柴先生らは,両方のmiRNAがDRP1依存性のミトコンドリア断片化に関与し,また溶質キャリアファミリーのメンバーであるSLC25A12を減弱させることによってミトコンドリア代謝を阻害することを見出しました。 miRNAの阻害剤を供給することでmiRNAの効果を中和すると,ミトコンドリアの動態と抗ウイルス応答が再び回復しました。その結果,SLC25A12がミトコンドリア関連代謝産物の変化を誘導することにより,抗ウイルス応答の制御に機能していることが明らかになりました。 この結果は,miRNAがミトコンドリアの動態と代謝需要を変化させることによって,自然免疫応答を調節する機能をどのように発揮するのかについての洞察を与えるものであります。
(文責: 西川 義文)