原虫病研究センター所属の梅田 剛佑さん(特任研究員)・劉 明明さん(大学院生)が第161回日本獣医学会学術集会(平成30年9月)において「第9回獣医寄生虫学奨励賞」を受賞しました。
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9月11~13日につくば国際会議場で開催された第161回日本獣医学会学術集会の日本獣医寄生虫分科会において,原虫病研究センター所属の梅田 剛佑さん(特任研究員)・劉 明明さん(大学院生)が,第9回日本獣医寄生虫学奨励賞を受賞しました。この賞は獣医寄生虫学の進歩に寄与する優れた成果を挙げ,将来の発展を期待しうる若手研究者に授与されるものです。
梅田さんの受賞課題は「トキソプラズマ感染時のToll-like receptor 2およびCC chemokine receptor 5の機能解析―マウス初代脳細胞のトランスクリプトームから―」です。トキソプラズマ原虫は世界人口の三分の一近くが感染しているとされる日和見病原体で,脳炎や神経障害といった症状を引き起こすことがあります。梅田さんは原虫を感染させた各種脳細胞に関する比較トランスクリプトーム解析を実施し,病原体感染への応答に重要な受容体であるTLR2やCCR5と,トキソプラズマ感染時の各種脳細胞における遺伝子発現との関係を網羅的に明らかにしました。これはトキソプラズマの感染が引き起こす障害のメカニズムの理解に必要な科学的知見であり,その有効な治療法・予防法の開発につながる研究成果です。
劉さんの受賞課題は「Establishment of a stable transfection system for genetic manipulation of Babesia gibsoni」です。マダニ媒介性の赤血球内寄生原虫であるバベシア属は約100種が同定されていますが,遺伝子組換え法が確立されているのはウシに寄生する3種のみでした。劉さんは日本を含むアジア地域で流行し,ペット産業に深刻な被害を与えているイヌバベシア原虫(Babesia gibsoni)について遺伝子組換え法の確立を試み,これに成功しました。今回確立した方法により,イヌバベシア原虫に外来遺伝子を自在に導入可能となり,標的遺伝子のノックアウトも簡単にできるようになりました。今後,原虫の病原性遺伝子を特定し,該当遺伝子のノックアウトにより弱毒化した虫体を用いた新規組換えワクチン開発への応用が期待されます。