原虫病研究センター所属のFereig Ragabさん(日本学術振興会・外国人特別研究員)と曽賀晃さん(日本学術振興会・特別研究員)が第162回日本獣医学会学術集会(令和元年9月)において 「第10回獣医寄生虫学奨励賞」を受賞しました。
9月10日~12日につくば国際会議場で開催された第162回日本獣医学会学術集会の日本獣医寄生虫分科会において、原虫病研究センター所属のFereig Ragabさん(日本学術振興会・外国人特別研究員)と曽賀晃さん(日本学術振興会・特別研究員)が、第10回日本獣医寄生虫学奨励賞を受賞しました。この賞は獣医寄生虫学の進歩に寄与する優れた成果を挙げ、将来の発展を期待しうる若手研究者に授与されるものです。
Fereigさんの受賞課題は「Development of potent and safe vaccine candidates against Neospora caninum infection」です。ネオスポラ(Neospora caninum)はウシの流産を引き起こす病原性原虫です。ネオスポラの蔓延は畜産業に経済的損失をもたらしますが、ワクチンや治療薬などは開発されていません。Fereigさんはワクチン抗原をオリゴ糖リポソーム内へ封入すること、あるいはアジュバント活性をもつワクチン抗原で効果的な防御免疫を誘導でき、ネオスポラ感染を制御できることを明らかにしました。本研究成果により、ネオスポラのワクチン開発の実現につながることが期待されます。
曽賀さんの受賞課題は「齧歯類マラリア原虫における宿主毒性抗生剤を用いた効率的薬剤選択法の確立」です。マラリアは熱帯・亜熱帯地域を中心に年間約40万人が犠牲となっている蚊媒介性感染症です。この度曽賀さんはマラリアのモデルとして研究に使用される齧歯類マラリア原虫(Plasmodium berghei) において、薬剤選択法の改良により効率的な組換え原虫作製法の開発に成功しました。この研究成果は、従来法に比べ組換え原虫の単離にかかる時間・コストの大幅な削減を可能にするだけでなく、これまで技術的に困難であった複数遺伝子操作を容易にするなど、マラリア研究の基盤整備に大きく貢献するものです。今後本研究成果の応用により、様々な遺伝子の機能が明らかにされることで、新たなマラリア制御手法の確立が期待されます。
授賞式の様子(Fereigさんと河津副理事長:左から)
授賞式の様子(曽賀さんと河津副理事長:左から)