ブームスプレーヤ

ブームスプレーヤは広大なほ場に農薬を効率よく散布して、作物の生育に悪影響を与える病害虫の防除に用いられる農業機械です。ブームは長いほど能率が良いため大型の機種になるとブームの長さが30mを超えるものもあります。十勝では農薬を大量の水で薄めて確実に作物に付着させる「多量散布」と言う方法が主流ですが、ブームが長いとそれだけタンクの容量も大きくなるため作業するたびにほ場の土を押し固めてしまいます。また、雨が降り続いたやわらかいほ場では、重たいタンクを引っ張るトラクタが埋まってしまうため農薬が散布できない場合もあります。どうしても散布したいときは最新技術を搭載したドローンやヘリコプターを利用できますが、タンクの容量がとても小さいので原液に近い農薬を散布することになります。農薬が風などの影響で飛散してしまうことを「ドリフト」と言いますが、濃い農薬のドリフトによって二重散布のリスクや隣接する他の作物への悪影響がより高まります。私は工学的なアプローチでそのドリフトの影響を最小限に抑えてスマートに防除作業を行うシステムについて研究しています。また、目に見えないドリフトの影響を様々なセンサから得たデータを駆使して可視化するシステムを開発しています。将来的にこのシステムが食の安心と安全を確保できると考えて研究を進めています。

この文を書いた人 藤本 与 助教
所属 環境農学研究部門/農業環境工学分野