5月25日と26日に帯広畜産大学において、「GISとUAVの活用と可能性」をテーマにしたセミナーを開催、GIS(地理情報システム)やUAV(無人航空機)の畜産・農業分野での研究成果について報告がありました。
1日目は、原虫病研究センターPKホールを会場に4名の先生による講演があり、会場30名、オンライン約480名が受講しました。
基調講演として辻名誉教授からは、十勝管内の耕地防風林について、GISを用いた風害発生状況の把握・検証、樹高から樹齢を推定して将来の更新に利用できるとの研究報告がありました。また、システムやプログラムも大事だが、分析・解析には「自分の足で稼いだ現地データの質・精度が重要」とも話されていました。
川村准教授からは、衛星画像による牧草の草量と栄養価の分布を評価して施肥管理を効率化する研究や、放牧地の地上データとドローンの撮影画像から草量や草高、植生、雑草、牛ふん等ほ場内の空間的なばらつきを精密に診断できること。ふん尿の排泄場所を予測することでDCD(硝化抑制剤)を集中的に散布、GHG(温室効果ガス)削減の効果が期待されるとの研究報告がありました。
中島助教からは、UAVによるソルガムの草高測定と植生指標について、および都市緑地における湿地機能回復領域のゾーニングについての研究報告がありました。
赤坂准教授からは、耕作放棄地の利活用と野生動物の管理にUAVやGISを利用する研究についての報告がありました。
パネルディスカッションでは、GISやUAVに取り組んだ理由、課題、今後の取り組み等について意見が交わされました。研究成果・情報等のデータベース化、農家(一般)利用を意識した分かりやすい可視化、農業に関係する機関や行政との連携等が必要であり、GISやUAVを有効活用して環境や農家にどう貢献していくのかが今後の課題とのことでした。
2日目は、農学基盤情報センターを会場に、20名の方がデータの可視化から分析・共有までの流れまで基本的な操作方法についての演習を行いました。
今回のセミナーには建設・土木コンサルタント関係からの受講者も多く、アンケートには「農業分野にはあまり関わりがなかったが、農業関係においても様々な視点からGIS・UAVを活用して課題解決に取り組まれており大変参考になった」、「これまで知りえなかったことが、ドローンやAI技術を駆使しながらデジタル的に解析・分析され解明されることで、生産性の向上だけでなく地球環境への負荷軽減など、農業・酪農の新しい時代につながるものと感じた。これらの研究が早期に現場で活かされ、農業・酪農が持続的に発展していくことを願う」他、多くの感想が寄せられました。
パネルディスカッションの様子