スタッフ

井上 昇

教授

研究テーマ

動物トリパノソーマ症(AT)の診断・治療・予防法の開発、およびATの疫学研究。アフリカトリパノソーマの発育環進行に伴う細胞分化機構の研究。

所属・担当

原虫病研究センター 国際連携協力部門 国際協力分野

原虫病研究センター 診断治療研究部門 先端予防治療学分野

グローバルアグロメディシン研究センター 獣医学研究部門

学部(主な担当ユニット)

獣医学ユニット

大学院(主な担当専攻・コース)

畜産科学専攻 動物医科学コース

研究分野 原虫病学, 寄生虫病学, 疫学
キーワード トリパノソーマ, ベクター, 生活環, 宿主-寄生体相互作用, 細胞分化, 細胞表面分子, 疫学調査, 診断薬, 治療薬, 予防薬とワクチン

研究紹介

人や動物に寄生するトリパノソーマは非病原性の種から致死的なトリパノソーマ病を引き起こす種まで多種多様です。宿主や媒介者との関係性においても宿主特異性の高い種や低い種、特定の吸血昆虫によって生物学的に媒介される種、吸血性の生物によって機械的に媒介される種、媒介者を介さずに交尾で感染が広がる種など、様々です。さらには宿主の体内で細胞内に寄生する種もいれば、しない種もいて、まさに生き残るためには手段を選ばない手ごわい奴といえるでしょう。残念ながら現在我々が有するトリパノソーマへの対抗手段は、早期診断による患者・患畜の摘発や隔離、副作用の強い治療薬ならびにベクターコントロールなど限定的です。このような現状を改善するため、より簡便で正確な診断法の開発、安全な治療薬の開発、ワクチンの開発、ならびに疾病の流行状況とリスク要因を分析する疫学研究を実施しています。
もう一つの研究テーマは寄生生物としてのトリパノソーマの生存戦略に着目したものです。トリパノソーマはその生活環の中でまったく体内環境が異なる哺乳動物宿主とベクター(多くの場合昆虫)の間を行き来します。このような生存環境の急変に適応しなければならないトリパノソーマの細胞分化機構はほとんど解明されていません。研究では特に発育期特異的な表面分子の同定やその機能解析に焦点を絞って実施しています。このような基礎研究も将来伝搬阻止ワクチンや細胞分化機構を標的とする治療薬開発につながることを期待して実施しています。

モンゴルでの疫学調査
モンゴル国立獣医学研究所と共同開発した診断キット
ザンビアでの疫学調査

現在取り組んでいる研究テーマ一覧

動物のトリパノソーマ病対策に関連する以下のテーマ

  • 1.診断法の開発
  • 2.治療薬の開発と作用機序の解明
  • 3.予防法(ワクチンや予防薬)の開発と作用機序の解明
  • 4.疫学調査とリスク要因の解明

寄生生物としてのトリパノソーマに関連する以下のテーマ

  • 1.細胞表面分子を介した宿主やベクターとの相互作用解明
  • 2.生活環の進行に伴う細胞分化など環境適応メカニズムの解明
関連産業分野 獣医畜産, 動物用医薬品, 食品安全, 環境科学, 野生動物
プロジェクト JICA/AMED SATREPS「モンゴルにおける家畜原虫病の疫学調査と社会実装可能な診断法の開発」
国際獣疫事務局(WOAH)非ツェツェ媒介性動物トリパノソーマ症ネットワーク
所属学会 日本獣医学会, 日本獣医寄生虫学会, 日本寄生虫学会, 日本熱帯医学会
学位 博士(獣医学)
資格 獣医師
居室のある建物 原虫病研究センター
部屋番号 102号室
メールアドレス ircpmi atmark obihiro.ac.jp

卒業研究として指導可能なテーマ

動物のトリパノソーマ病対策に関連する以下のテーマ

  • 1.診断法の開発
  • 2.治療薬の開発と作用機序の解明
  • 3.予防法(ワクチンや予防薬)の開発と作用機序の解明
  • 4.疫学調査とリスク要因の解明

寄生生物としてのトリパノソーマに関連する以下のテーマ

  • 1.細胞表面分子を介した宿主やベクターとの相互作用解明
  • 2.生活環の進行に伴う細胞分化など環境適応メカニズムの解明

メッセージ

列記した卒業研究のテーマはいずれも研究の最終目標です。皆さんが行う卒業研究は最終目標を達成するために行ういくつかの研究の一部ですので「壮大すぎて手に負えそうにないなー」と心配する必要はありません。トリパノソーマのような寄生生物は自己の生存を他の生物に依存しなくてはならない生き物です。寄生しても宿主には全く悪影響を与えないように見える種がいる反面、難治性の疾病を引き起こす種もいたりします。ところが病原性の有無を分ける原因は殆ど分かっていません。また、トリパノソーマ病に有効なワクチンも、特効薬と呼べる安全な治療薬もありません。疫学調査やリスク要因の解析から流行実態を明らかにした上で、実用可能な診断・治療・予防法を開発することもきわめて重要です。深奥な寄生虫学の世界に触れてみませんか?