
国際情勢はかつてないほど複雑化し、ウクライナにおけるロシアの侵攻や中東地域の緊張の高まりは、十勝の基幹作業である農畜産業に大きな影響を与えてきました。さらにトランプアメリカ大統領就任に伴う相互関税の圧力は我が国の自動車産業だけでなく、十勝の農畜産業への更なる影響拡大が懸念されるところであります。
このような厳しい情勢の中、私達は地域に貢献する産学連携センターを目指し、企業等集積プラットフォーム参画企業や十勝管内の自治体、農協等に直接お伺いしながら対話を重ねてきました。そこで得られたニーズをもとに産学官金交流会や畜大シンポジウムなどの各種交流会を開催することで、地域の皆様と一緒にニーズの深掘りや課題の明確化・連携の醸成を進めてきた所です。
令和6年度は、特に状況が厳しい酪農産業の持続可能な発展に向け「ミルク&チーズコンソーシアム」を設立し、キックオフシンポジウムを皮切りに、チーズ製造学短期研修会といった教育プログラムの企画・実施や新規乳製品開発に向けた体制の構築を進めてまいりました。また、地域ニーズの高い「新規自給飼料」「獣害対策」「ICT農畜産技術実証の推進」などのテーマについても各関係機関のご協力を頂きながらコンソーシアム化あるいは共同研究による研究開発の推進に向け準備を進めてまいりました。これらの活動を通じ企業等集積プラットフォーム内企業参画数は99機関に広がっています。
今年度は、昨年10月に立ち上げました「次世代農畜産技術実証センター」と連携し、地域課題を解決に資する大学研究成果の社会実装を加速させていきます。同センターは、本学の大規模圃場や新牛舎、さらには地域の提携している連携農場と、現場レベルでの技術実証を推進するセンターです。これまで立ち上げた「未利用資源コンソーシアム」や「ミルク&チーズコンソーシアム」の活動に相乗効果が出ることも期待しています。引き続き、地域ニーズの高いテーマを探りつつ地域の皆様と一緒に地域の課題解決に全力を尽くしてまいります。
また、北見工業大学と小樽商科大学との経営統合も3年が経過し、農商工連携による分野融合型の共同研究が進んできました。例えば北見工業大学のセンサー技術と帯広畜産大学の牧草研究の連携による「牧草刈取りトラックガイダンスシステム」の開発については、既に現場での実証段階に入っており、近い将来の販売が期待されています。
地域の皆様や企業の皆様の課題解決は、決して低いハードルではありませんが、北海道国立大学機構、大学関係部門、研究機関の皆様と連携し、これからも地域に貢献する産学連携の強化に取り組んで参ります。これまで同様にご指導ご鞭撻お願い申し上げます。
令和7年5月