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令和年度 HACCP・食品安全管理プログラム 「札幌セミナー」を開催しました

12月3日(火)小樽商科大学 札幌サテライトにおいて,令和6年度 HACCP・食品安全管理プログラム 「札幌セミナー」を3名の講師を招いて開催し,会場とオンライン合わせて39名が参加しました。

始めに,帯広畜産大学通山 志保客員教授から「最近の食品安全情報」と題して,アレルギー表示に関する変更点や,健康被害情報の報告の義務化やGMP(適正製造規範)の要件化が9月1日に施行されたこと,さらに消費者庁では今年度末をめどに「期限表示ガイドライン」の見直しが検討されていること,および商品の前面に栄養成分を表示するような流れになっていること等について説明がありました。
通山氏は講演の中で,「食品の事件・事故が起きるたび,様々なルールの改正が行われますが,『知らなかった』では取り返しがつかないことになります。安全な食品の提供は食品関係事業者の『責務』です」と述べられました。


セミナーの様子

 講演1 講師の通山志保客員教授(帯広畜産大学) 

続いて,西山製麺株式会社の生産部品質保証開発グループの出村 勝部長から「現場と一緒に取り組む一般的衛生管理」と「食品偽装と食品防御に対する当社の取り組み」と題してお話していただきました。
関連会社の食品事故をきっかけに社内に品質保証室とお客様相談室を設置し,北海道HACCP取得に向けて規格要求事項やハザード分析および7原則12手順に取り組んでいった結果,さらに高度な食品安全の国際規格であるFSSC22000を2019年に取得したこと。また,「4M変動管理」に特化したチェックシートや清掃計画(MCS マスター・クリーニング・スケジュール),衛生検査チェックリスト等の取り組みを説明し,「さまざまな工夫をこらして記録に残すこと,現場と一緒に取り組み現場からの声には必ずフィードバックすることが大事」と述べられました。
また,風通しの良い社風にして食品偽装のようなことが起きない環境を作るように心がけていること等を事例をあげて説明していただきました。
終わりに,「品質保証という仕事はやりがいもあり目標を同じくする人と楽しく取り組んでいる,もっと多くの人と交流して北海道の食の安心安全を守り,全世界へ輸出できればいいと考えている」と締めくくりました。

最後に,一正蒲鉾株式会社の戸田 弘平顧問からは「見えないHACCP」と題して,自社における取り組みをはじめ,HACCP導入時の注意点や物流工程の衛生管理,冷蔵庫業の取り組み等について詳しく説明されました。
同社の北海道工場ではFSSC22000を取得して10年経過後も,毎年新入社員を含めた全従業員がHACCPの研修を必ず受講していることや,工程管理の現場では次世代育成に力を入れていることを紹介されました。
次に,「HACCPの考えに基づく物流管理はフードチェーンとしての役割であり,製品の入荷・保管・輸送される物流工程においては,物流,輸送メーカーに主体的に動いてもらうための情報提供や協力体制が必要である」と述べられました。
さらに,組織全体でHACCPを取り組んでいくために衛生管理計画書の作成において,現場のルールは現場の関係者に決めさせること,最初から完璧なマニュアルを作る必要はなくPDCAサイクルで継続的に改善すること,やったことは記録に残すこと等の注意点について丁寧に説明をされました。
最後に,「衛生管理は企業防衛,生産者を守るための仕組み。顧客の命や従業員の生活に関わる重要な問題なので,企業のトップである経営者の役割であり,トップのリーダーシップによって組織全体が食品安全について活発に動く」と締めくくりました。


講演2 講師の出村 勝氏(西山製麺株式会社)


講演3 講師の戸田 弘平氏(一正蒲鉾株式会社)

受講者から寄せられた感想の一部を紹介します。

・アレルゲン表示の最新情報は,お客様への情報として活用できると思いました。
・現場が実行可能な目線という点での講義でしたので,机上の空論ではないことから理解が進みました。
・畜産農場に食品製造業での取り組みを紹介し,フードチェーンの一員であることを意識してもらうきっかけにしたいです。
・衛生教育で現場の方へHACCPの重要点を伝える機会があるので,講師の方のお話で重要と感じた箇所を紹介していこうと思います。

本学では,次年度以降もHACCPシステム導入や従業員のHACCP教育を検討されている事業所等の支援となるよう研修を継続していきます。