「放牧」というキーワードを通して、日本の農業を盛り上げていきたいです

河合 拓

Kawai Taku

ファームエイジ株式会社 
執行役員 営業部・北海道エリアマネージャー
ファームデザイン担当
2008年3月 畜産科学課程 家畜生産科学ユニット卒業
滋賀県立東大津高等学校出身

畜大・ユニットを選んだ理由は何ですか

進学を考えた時に実家から遠く離れた北海道か沖縄県の大学の二択でしたが,四季がはっきりしているという理由で北海道を選びました。また,明確に何か学びたい事があったわけではなく,自然や動物が好きだったので,大学のイメージから帯広畜産大学に入学しました。

その後,仲の良い先輩が家畜生産科学ユニットにいて,楽しそうにお話されていたので,自分も選択しました。

畜大での学びを教えてください

人に分かりやすく物事を伝える技術を身につけることができました。これは,私が仕事をする上でとても大切な技術だと思っています。
それから,イベント企画(寮祭など)や卒論を通して,企画力,計画力,推進力などが培われたと思います。
また,1年間の交換留学で海外の文化に触れ,価値観を広げることができたのも大きな財産です。
留学がなければ,将来やりたいことを見つけられなかったかもしれません。

現在の仕事を選んだ理由は何ですか

民間企業の立場から農村活性化に関わりたいという思いで就職先を探していました。
普段の生活から自然を感じられるような農的な暮らしをしたいという気持ちもあり,この会社の理念や取組に惹かれ,求人募集していないところに押し掛けました。
一度は断られましたが,頑張った結果,採用になりました。

グラスファーミングスクール(放牧地内でのセミナーの様子)

どんな仕事をしていますか

私の仕事は,日本の農業を変革することです。
主な内容として,2つあります。

1つは,近年全国で深刻な問題になっている野生動物被害への対策,自然との共生です。
野生動物の防除と捕獲に関わるシステムとノウハウを提供しています。

もう1つは,酪農畜産業における,牛や羊など家畜の放牧技術普及です。
経営計画から放牧地デザイン・整備,哺育システムに至るまでトータルサポートしています。

野生動物,放牧ともに,全国の市町村の役所,都道府県庁,農家,指導機関などからセミナー講師を依頼されることもあります。
また,グラスファーミングスクールというセミナーを毎年開催し,その中で講師をさせていただくこともあります。
このスクールは,放牧における重要キーワードである「土,草,家畜」をテーマにしたセミナーで,畜大の先生に講師として参加していただいたり,学生さんにも一般参加していただいたりしています。

ある県庁主催のシンポジウムにおいて講師を務めた時の様子

挑戦していることは何ですか

日本の業界常識から外れている,新しいシステム・考え方を普及させるというケースがあります。
その際にはお客様になかなか受け入れてもらえないこともあります。
しかし,それがお客様や業界の抱える課題を解決することに必ず役立つという信念で根気強く提案しています。

例えば,当社で提供している子牛の哺乳・哺育システムがそうです。
日本の多くの牧場では,子牛の下痢,消化不良,誤嚥(気管にミルクが流入する問題)などの課題を抱えています。
この課題を解決するため,子牛でも消化できる良質の発酵粗飼料を用いた給与システム,誤嚥や消化不良を予防できる工夫がされた哺乳器などを普及させることが必要でした。
これらは新しい考え方のもので,当初は導入試験をしたり,勉強会を開いたり,試行錯誤を重ねました。
しかし現在は,獣医師や研究機関,子牛哺育の現場に携わる方々の理解・支持を得て,多くのお客様に導入していただくようになりました。

新しい事を普及させる時,大変なパワーと根気が必要ですが,その分やりがいを感じます。

ファームエイジでトータルサポートしている新規就農牧場の放牧地

一昨年,ある牧場の放牧地レイアウトデザインやその整備など,全体的なコーディネイトをさせていただきました。長年続けてこられた酪農経営スタイルをやめ,放牧酪農を希望される牧場でした。
現在は,放牧導入後のサポートを行なっているところで,まだまだアドバイスしなければいけない部分が多いのですが,先日この牧場の経営者様から,「お陰様で,牛達が以前に比べて健康になり,獣医さんに来てもらうことが少なくなった。労働時間も減り,色々やりたいことができるようになった。ありがとう。今後もよろしく。」という言葉をかけていただきました。

また,以前,ある県の農村地域における野生動物対策と耕作放棄地の有効活用(肉牛の放牧導入)に関わったことがありました。
この取組が軌道に乗った数ヵ月後,その町の職員の方から連絡をいただきました。
「お陰様で今年は地域の農作物を野生動物から守ることができた。家庭菜園で孫や子供に食べさせるための野菜を作っている高齢者も喜んでいる。また,耕作放棄地に牛を放牧したことで,景観が綺麗になり,野生動物の侵入を抑止することにもなった。何より,高齢者が牛を見に行くために楽しそうに散歩するようになった。高齢化が進むこの地域において,心まで高齢化することが農村衰退を加速させる。そういう意味で,今回この取組をできて,地域に活気が出たと思う。大変助かった。ありがとう。」と言っていただいたこともありました。

私の仕事は,時として農業経営の核心部や地域全体の課題に大きく影響することがあります。
ですから,非常にプレッシャーを感じることもあります。
しかし,お客様から有り難いお言葉をいただけることも多く,お客様が笑顔になり,生き生きとされている姿を見聞きできた時には,微力ながらも社会の役に立てたのではないかとやりがいを感じます。

町役場職員と地元住民が耕作放棄地へ放牧している牛たちを眺めている様子

これからの夢や目標を教えてください

昨年末(2018年)に,ある酪農家さんが黒澤賞や農林水産大臣賞など多数の賞を獲得されました。
当社が窓口として携わっている「ニュージーランド・北海道酪農協力プロジェクト」において,3年間にわたりコンサルティングさせていただいた酪農家さんです。
プロジェクトにより放牧や牧草管理の技術を高めた事が大きな経営改善につながり,それが評価されての受賞でした。
今,その酪農家さんが実施されている技術を普及することが,会社の大きな使命の1つになっています。
新規就農者でも,経験の少ない方でも,高い技術を早くに身につけることができ,豊かで安定した農業経営を実践していただけるよう,取り組んでいます。

また,昨春(2018年)から「ニュージーランド・北海道羊協力プロジェクト」を新たに立ち上げました。
北海道内の羊牧場が抱える課題を,放牧技術を中心にコンサルティングし,解決していく予定です。

放牧先進国であるニュージーランドでは,酪農家という職業はとても人気があり,ステータスの高い仕事だと言われています。
今,日本では農業人口が年々減少しています。そして,農村地域の衰退に歯止めがかからない状況にあります。
一般の方,特に若い人達に,農業を魅力的な職業として捉えていただけるよう,微力ですが,「放牧」というキーワードを通して,日本の農業を盛り上げていきたいです。

そして,プライベートでは,農村地域の一員として昨年から農的な暮らしをスタートさせました。地域の活性化に個人的にも貢献できるよう楽しみながら頑張っていきたいと思います。

ニュージーランド・北海道羊協力プロジェクトにモニターとして参加する牧場(ファームエイジによる放牧地整備)

後輩になるあなたへ

私は大学生の時に多くの人と出会い,その人達からたくさんの影響を受けました。
今も自分はそうであり続けたいと思っていますが,大学生は,1つの考えに固執せずスポンジのように色々な考えを吸収し,成長できる可能性が大いにあります。
色々な人と話し,経験し,価値観を広げ,さらに自分が志すものを見つけることができれば,こんなに幸せで有意義な大学生活はないと思います。

ファームエイジ株式会社

北海道石狩郡当別町字金沢166-8
http://farmage.co.jp/

創業精神である「フェンスで日本の農業を変革する夢(Fence Agriculture Revolution Dream =FAR夢)」の方向性を示すものとして,私たちは持続可能性を追求する5つの使命を企業理念として掲げています。私たちの活動,ご提供する商品やノウハウの一つ一つが,これら5つのFAR夢の実現に向かっています。
・食産業を支える夢
・貴重な資源を活用する夢
・共生の理想を実現する夢
・地球環境を守る夢
・幸せを生み出す夢

所属や肩書はインタビュー当時のものです。

掲載日: 2019年3月