海外から口蹄疫ウイルスを持ち帰らないための行動指針

畜産フィールド科学センター 家畜・植物防疫研究室

口蹄疫ウイルスは、極めて伝染力と伝搬力が強いウイルスで、一度国内に持ち込まれると大災害をもたらす可能性があります。この指針は、口蹄疫を海外から日本国内に持ち帰らないために、本学の教職員および学生が、海外に旅行したり海外から研究用試料などを持ち帰ったりする際の注意事項をまとめたものです。

本指針は、全ての口蹄疫非清浄国(ワクチン接種清浄国を含む)において、口蹄疫ウイルスに暴露されるリスクのある用務で行動する方を対象に作成していますが、海外旅行される方全員が、本指針に目をとおし、口蹄疫ウイルスを持ち帰ることが絶対にないよう行動されることを切に願います。

出発前に確認すること

  1. 渡航先の最新の口蹄疫発生状況を確認してください。
    農林水産省のWEBサイト:
    http://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/katiku_yobo/index.html
    国際獣疫事務局(WOAH)のWEBサイト:
    https://www.woah.org/en/disease/foot-and-mouth-disease/
  2. 渡航先の共同研究者等に現地情報を確認しましょう。
  3. 特に、渡航時点で口蹄疫が発生している地域には絶対に立ち入らないようにしましょう。やむを得ず立ち入る場合は、家畜・防疫研究室に具体的な対応について相談してください。
  4. 本学では、飼養衛生管理基準(家畜伝染病予防法第12条の3)により、家畜の飼養施設に立ち入る可能性のある教職員ならびに学生に対して、海外渡航に関する内容の登録を義務付けています(大学の命令によるものを除く)。下記のURLから渡航内容を登録してください。
    【学生】https://forms.office.com/r/5CWhy1mcqt
    【教職員】https://forms.office.com/r/T0GuAV7KeS
  5. 指定検疫物を含む試験研究材料を国内に持ち帰る場合は、事前に動物検疫所に問い合わせ、その指示に従ってください。
    動物検疫所のWEBサイト:
    http://www.maff.go.jp/aqs/tetuzuki/im_for_research.html

出発前の準備

  1. 帰国時に着用する衣類は予めジッパー付きビニール袋に密封し、スーツケースに収納しましょう(帰国直前まで開封しない)。
  2. 現地活動用の衣類と靴は、現地で処分(廃棄)しても構わないものを用意するとよいでしょう。
  3. 薬局等でアルコール入り除菌ウェットティッシュ、クエン酸粉末、粉末石ケンを購入して持参しましょう。

注1)市販の衣類圧縮袋には、さまざまなサイズのものがあり便利です。

注2)クエン酸末は、1gずつ分封しておくと使いやすい(1gを500mlの水に溶かすと0.2%溶液になる)。

渡航先での活動に際して

  1. 渡航先の宿泊施設に着いたら、帰国用の衣類と靴を現地活動用のものとを区別して、別々の場所に保管します(部屋の中での交差汚染防止)。
  2. 畜産関係施設に立ち入る場合は、関係者の指示に従い防疫に努めましょう。なお、口蹄疫の常在国(地域)では、防疫にあまり気を配られていないこともあるので、自ら慎重に行動することが重要です。
  3. 畜産現場での活動後は、手洗い、うがい、靴や服の洗浄を徹底し、できるだけ宿泊施設に汚れを持ち帰らないように注意し、宿泊施設では、よく体を洗いましょう。
  4. 畜産施設に立ち入る場合は、使い捨ての防護服、マスク、帽子、ゴム手袋等を着用するのが理想ですが、それが困難な場合には、使用した靴、衣服、手袋等は現地で廃棄処分し、日本には絶対に持ち帰らないでください。

帰国前にすること

  1. 持ち帰る必要のある衣類は、渡航先で必ず洗濯またはランドリーサービスを利用した後、簡易消毒を行い、ジッパー付きビニール袋に密封しましょう。
  2. 持ち帰る器具等(カメラ、バック、実験器具等)は、清掃と簡易消毒を行い、ビニール袋に入れましょう。
  3. 身に着ける靴、眼鏡、ベルトも簡易消毒をしましょう。
  4. 最後に、旅行鞄の内外面を簡易消毒してから持ち帰り品を収納しましょう。
  5. 宿泊施設のチェックアウト直前に、シャワーを浴び、ビニール袋に保管しておいた帰国用衣類セットを着用し、帰国の途につきましょう。
  6. なお、感染性を保持したウイルスを含む可能性のある研究材料や畜産物等(土産品を含む)は、絶対に無許可で持ち帰ってはいけません(動物検疫所のホームページ参照)。

注3)ほとんどの粉末石ケンは弱アルカリ性ですが、口蹄疫ウイルスを不活化する効果はありません。しかし、洗い流すのには極めて有効です。

注4)簡易消毒の方法:アルコール入りの除菌ウェットティッシュ(一般病原体対象)で衣類や靴および鞄の内外面をよく拭き取り、0.2%クエン酸液(口蹄疫ウイルス対象: クエン酸を水道水に溶解して作製)でよく消毒する。最後に、ティッシュで0.2%クエン酸液を拭き取る。

帰国後にすること

  1. 洗浄できるすべてのもの(衣服等)は、国内で直ちに酸素系漂白剤とともに洗濯しましょう。
  2. 洗濯できない器具等は、帰国後、再度消毒を徹底してください。
  3. 十分に消毒しきれないものは乾燥剤とともにジッパー付きビニール袋に密封して室温で4ヶ月以上放置してください(その間、開封しない)。
  4. 帰宅後は、風呂でよく自身の汚れを落としてから、外出や出勤しましょう。
  5. 特に、感受性動物を扱う者は、帰国後、少なくとも1週間はその動物に近づいてはなりません。

注5)オートクレーブ滅菌や、ハロゲン化合物(ヨウ素系および塩素系消毒剤)、アルデヒド類(ホルマリン)、酸性(pH6.5以下)あるいはアルカリ性消毒剤(pH9.5以上)による消毒は口蹄疫ウイルスに有効ですが、有機溶媒や界面活性剤は口蹄疫ウイルスの不活化に効果がありません。

注6)衣類に付着した口蹄疫ウイルスが、14週間生存したとの研究報告があります。

その他の留意事項

  1. この指針どおりに行動しても、口蹄疫ウイルスの持ち込みを完全に阻止できるものではないことを自覚しましょう。その理由は、以下のとおりです。
    1. WOAH が認定するワクチン非接種清浄国以外は口蹄疫ウイルスにすでに汚染されていると考えてよいこと。
    2. 口蹄疫ウイルス粒子は極めて安定で(エンベロープがなく超小型のウイルス)、多くの一般消毒薬に効果がないこと。
    3. 口蹄疫ウイルスは高湿度、低日照時間、低気温を好み、約4ヶ月間生存できること(汚染家畜のみならず、汚染畜産物、汚染飼料、汚染した人や他の動物等にも注意が必要)。
    4. 口蹄疫ウイルスに感染した動物(牛、水牛、豚、緬羊、山羊などの偶蹄類)は、たとえ症状が現れていなくとも、あらゆる臓器(血液、筋肉、体表、精液、尿など)に大量のウイルスが存在していること。
    5. 口蹄疫ウイルスは、空気伝播し、250kmを風で移動する可能性もあること。
  2. 本行動指針について、ご不明な点は家畜・植物防疫研究室までお尋ねください。