人間

2011年3月11日の東日本大震災による津波で,東京電力福島第一原子力発電所事故が発生し,放射能の飛散が起こりました。このため2010年で出荷量全国2位の福島県産のモモは,消費量を大きく落とす甚大な被害を受けました。実は,モモの栽培地域である福島県の県北では放射能汚染の問題はなかったのです。しかし,全販売量に占める贈答用の割合が20%から5%まで低下し,福島産の肉牛から放射性セシウム検出されたことによって贈答は停止となりました。このため卸売市場出荷量が多くなり,市場価格は2,500円/5㎏から1,100円/5㎏に大幅に下落することになりました。福島産のモモは放射能が基準値以下なのにも関わらず,贈答用の注文がなくなってしまいました。この事例は,科学的検査結果では安全なのにもかかわらず,人は科学的な根拠に基づいて合理的な行動をなかなかとることができないことを示しています。この人間の非合理的な行動が社会的問題を引き起こす可能性を高めます。人はなかなか合理的に行動できないという性質を理解することによって,人間の非合理的な行動からもたらされる社会的問題に適切に対処することが可能となります。

この文を書いた人 金山 紀久 教授
所属 グローバルアグロメディシン研究センター/センター長研究域/環境農学研究部門/農業経済学分野/農業経済学系