木下 林太郎 助教 KINOSHITA Rintaro
研究テーマ生産地域に特化した作物栽培システムの構築
所属・担当
グローバルアグロメディシン研究センター/農畜産学研究部門研究域/環境農学研究部門/植物生産科学分野/植物生産科学系研究分野 | 土壌学, 環境情報学 |
キーワード | 土壌肥沃度, リン, 簡易土壌分析, リモートセンシング, GIS, 粘土鉱物, 土壌生成 |
研究紹介
高収量かつ環境負荷の少ない農業を実現するためには、土壌固有の養分や水分の保持力を把握し、適正な栽培管理をすることが大変重要です。作物が潜在的に持つ最大収量は天候や品種により決まりますが、そのポテンシャルをどこまで引き出せるかは土壌から供給される水分や養分量によって決まります(図1)。現在、世界の多くの地域ではこの収量ポテンシャルの20~30%程度しか達成できていない地域が数多くあります。また、北海道の生産現場においても、自然条件と生産者の管理方法により収量ポテンシャルの達成度は大きく異なります。
農耕地の土壌は、もともと何から出来たのか(岩石、火山灰、植物遺体…)、どの様な気候下にあるのかなどの条件により、その特性は異なります。生産者が適正な栽培管理を行なうためには、まずこの特性をしっかりと理解する必要があります。そこで、環境土壌学研究室では様々な場所で土壌断面調査を行なっています(図2)。地質学的な知見も考慮しながら、その土地がどの様な成り立ちをしているのかを現地調査と分析技術を駆使して解明します。
土壌の成り立ちを解明しても、農耕地の土壌状態は生産者ごと、さらに圃場内でも大きく異なります。そこで、地域単位で生産者圃場から土壌を採取し、その土壌の物理性、化学性の状態を明らかにします。私は、アメリカに在住していた頃から、東海岸のトウモロコシや大豆生産者の圃場の土壌状態を調査してきました。現在では、アフリカ東部のケニア共和国で調査を行なっています(図3)。この様な地域では、分析技術の普及が進んでいません。そこで、既存の化学分析の代わりになる、簡便で低コストな土壌分析技術の構築を目指しています。北海道十勝地域では、圃場の大規模化が進んでいます。これに伴い、圃場内でも土壌状態が大きく異なることが明らかになってきました。そこで、十勝地域では人工衛星やドローンを利用して土壌特性の評価を目指す研究を行っています(図4)。
また、それぞれの地域で土壌特性に合わせた作物栽培試験を実際の生産者と協力して行っています(図5)。様々な技術を利用して得られる土壌情報と、作物栽培試験から得られる知見を基に、その地域で利用できる作物栽培システムの構築を目指しています。





現在取り組んでいる研究テーマ一覧
- 人工衛星データを利用した圃場内のリン肥沃度と保水性のばらつきの評価
- 近赤外線センサーを利用した土壌成分の評価方法の構築
- ケニア共和国におけるジャガイモ収量と品質向上へ向けたリン酸施肥の新技術
- マレーシア・サバ州における伝統的焼畑農業が土壌の炭素蓄積と肥沃度に及ぼす影響
- 様々な農業資材が作物生育に及ぼす影響の評価
- ナガイモ栽培が土壌肥沃度に与える影響の評価と改良方法の探索
- 土地利用の変化が土壌の物理性、化学性、生物性に与える影響
関連産業分野 | 農学, センシング技術, 肥料 |
所属学会 | 日本土壌肥料学会, アメリカ土壌科学会, 日本ペドロジー学会 |
Editor | ペドロジスト; 2018年-現在 |
学位 | 博士(土壌学) |
自己紹介 |
横浜出身です。これまで、高校時代から帯広畜産大学に就職するまでの10年間をイギリス、コスタリカ、アメリカで過ごしました。英語やスペイン語を学んだのはもちろんですが、農学や土壌学を学び、研究活動を続けてきました。研究テーマは赤外線などのセンサーを利用した土壌分析で、この研究は現在ドローンや衛星画像の農業利用に繋がっています。また、北海道や世界の国々の農家圃場の土壌を調査し、各地域で農業生産性を向上させるための肥培管理に関わる研究を行っています。国内はもちろんのこと、海外での調査もアクティブに行っています。趣味はコスタリカやアメリカにいた時に習ったサルサダンスです。 |
居室のある建物 | 総合研究棟II号館 |
部屋番号 | 202号室 |
メールアドレス | rintaro ![]() |
卒業研究として指導可能なテーマ
- 熱帯地域における作物の肥培管理技術の向上に関する研究
- 赤外線センサーを利用した簡易土壌分析技術の構築
- 人工衛星やドローンデータを用いた土壌特性の評価方法の構築
- 黒ボク土の特性の解明に関する研究
- 粘土鉱物や腐植物質を利用した新たな肥料形態の開発
メッセージ
日本や世界の農業生産現場にはまだまだ生産性や経済性を改善できる伸びしろがあります。その一つの鍵を握っているのが土壌です。土壌はブラックボックスであるというイメージが強いですが、その機能を一つ一つ解明し、その情報を生産現場に伝えることがとても大切だと考えています。私はこれまで様々な国で暮らしてきましたが、土壌の情報を正確に捉え、その情報を基に作物生産を行なっている生産者は非常に少ないのが現状です。これが、生産現場でポテンシャルの50%にも満たない収量しか得られていない理由なのかもしれません。一緒に帯広を拠点に土壌機能の解明を進め、世界に情報を発信していきませんか。