楠本 晃子 助教 KUSUMOTO Akiko
研究テーマ魚病細菌Tenacibaculum maritimumの滑走運動の分子メカニズムの解明
所属・担当
動物・食品検査診断センター/食品有害微生物分野研究域/獣医学研究部門/基礎獣医学分野/応用獣医学系研究分野 | 細菌学, 魚病学, 生物物理 |
キーワード | モータータンパク質, 滑走運動, 魚病, 食中毒菌, 耐性菌, ファージ |
研究紹介
私は細菌の運動能に興味があり、大学院時代はビブリオのべん毛とマイコプラズマの滑走装置について研究を行いました。現在は魚病細菌Tenacibaculum maritimumの滑走装置について研究しています。
T. maritimumはさまざまな海水魚に感染し、滑走細菌症を発症させます。発症魚では体表の糜爛や潰瘍、ヒレや口唇部の壊死や崩壊が見られます(写真「滑走細菌症を発症したマダイ稚魚」参照)。滑走細菌症は国内外の海水魚の養殖場で発生が見られ、問題となっています。T. maritimumは固形物に張り付いて、固形物の表面上を這うように動く滑走運動を行います(リンク「Tenacibaculum maritimumの滑走運動の動画」参照)。T. maritimumの滑走運動はべん毛や線毛などの既知の細菌の運動器官によるものとは異なることは判明していますが、その分子メカニズムは解明されていません。私はT. maritimumの新規の運動メカニズムを分子生物学的手法で明らかにしようと取り組んでいます。
一般的に細菌の運動能は病原性と密接に関係しており、T. maritimumについても滑走運動のための接着は宿主への接着に関与することが予想されます。T. maritimumの新規運動研究を滑走細菌症の治療法やワクチンの開発に展開したいと考えています。
現時点で、T. maritimumではプラスミドなどは使えず、遺伝子操作は不可能です。遺伝子操作が可能になれば、滑走運動に重要な遺伝子の同定にもつながり、一気に研究が加速します。そこで、私たちはファージを使った遺伝子操作技術の開発に取り組んでいます(図「T. maritimumに感染するファージのプラーク」参照)。この技術を確立できれば、同じように遺伝子操作ができない他の菌種へ応用することで、細菌学の発展に貢献できると考えています。
現在取り組んでいる研究テーマ一覧
- 魚病細菌Tenacibaculum maritimumの滑走運動変異株の解析
- 魚病細菌Tenacibaculum maritimumに感染するファージの分離
- 魚病細菌Tenacibaculum maritimumの遺伝子操作法の開発
- 魚病細菌Tenacibaculum maritimumの新規ワクチン開発
関連産業分野 | 水産, 獣医学 |
所属学会 | 日本魚病学会, 日本細菌学会, 日本獣医学会 |
学位 | 博士(理学) |
自己紹介 |
福岡県出身です。趣味は温泉巡りで、ほぼ毎日温泉銭湯に通っています。夏はバイク(XL-degree)で道内を走り回っています。絵を描くのが好きですが、まとまった時間に集中して描くタイプなので、最近はあまり描いていません。マンガでは伊藤潤二先生の画風が好きです。動物が好きで、大学生の時は馬術部に入っていました。現在は猫を飼っています。 |
居室のある建物 | 動物・食品検査診断センター |
部屋番号 | 205号室 |
メールアドレス | akusumoto ![]() |
卒業研究として指導可能なテーマ
- 細菌の運動メカニズムに関する研究
- 魚病細菌に関する研究
- 食中毒菌に関する研究
- 耐性菌に関する研究
メッセージ
細菌には液体中を泳いだり、固形物の上を這いまわったり、宿主細胞内に侵入して細胞質内を自在に動き回ったりするものがいます。べん毛や線毛が細菌の運動器官としてよく知られていますが、実は多くの細菌の運動はどんな運動器官によって動くのか分かっていません。私が研究対象としている魚病細菌テナシバキュラムも未知の運動メカニズムで動く細菌です。テナシバキュラムは固形物に張り付いて、固形物の表面上を這いまわる“滑走運動”を行います。運動のメカニズムを解明するために、顕微鏡下で1菌体の運動を解析したり、うまく滑走できない変異株を作製して解析したりしています。一緒に試行錯誤しながら滑走運動の謎にせまってみませんか?
卒業研究では、魚病細菌の運動メカニズムの他にも、食中毒菌、耐性菌に関するテーマについて指導します。