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『酢酸化分級馬鈴薯澱粉における物理化学的性質』 安田 久美
 
 馬鈴薯の平成16年における年間収穫量は約290万tである.

その用途は,澱粉用38%,生食用30%,加工食品用18%,種子用5.8%,飼料用0.3%,減耗6.5%となっている.

北海道では馬鈴薯全国生産量の77%が生産されており,北海道産馬鈴薯の50%は澱粉用として利用されている.

近年国産澱粉は,安価で利用しやすい輸入澱粉に押されつつあり,澱粉原料用馬鈴薯生産は,買い上げ価格の低迷もあって減少傾向にある.


 澱粉は古くから天然高分子として,人間の生活の中で広く利用されてきた.

食品分野においては,伝統的固有用途として水産練製品,スナックやボーロなどの菓子類,即席麺類,春雨,片栗粉など

様々な食品の原材料に用いられる. 更に,ソースやタレ類における増粘剤としても有用である.

また,一般家庭での加工食品や,調理機器としての電子レンジの普及,コンビニエンスストアでの弁当や惣菜の占める割合の増加により,

冷凍やレトルトなどの厳しい加工条件にも耐えうる高い品質安定性を有する優れた機能性澱粉素材が求められ,

この分野の消費量は益々増加する傾向にある.


 馬鈴薯澱粉は主に,他の澱粉とは異なる以下のような特性を有する.

@粒径が大きい Aリン酸含量が高い B糊化温度が低い C膨潤度・溶解度が高い D糊液の粘度が高い E糊液の透明度が高い 

F粘度安定性が低い G糊液曳糸性が高い H食塩水中で糊化が著しく抑制される I食塩を含む糊液は離水しやすい

更に,5〜100μmという非常に幅広い粒径分布も大きな特性である.

この粒径の幅広さから,使用目的に適した平均粒径を持つ品種を選ぶことが必要になる場合もある.

近年,そうしたニーズに応えて,馬鈴薯澱粉を粒径によって等級分けする“分級馬鈴薯澱粉”の提供が見られるようになった.


 また,馬鈴薯澱粉には前述したように粘度安定性や食塩水中での糊化など,幾つかの欠点があり,それを補うために化学的加工を施した

化工澱粉が用いられることが多い. 酢酸化澱粉は,そんな化工澱粉の一例である.

これはエステル澱粉の一種で,大量流通するものは,無水酢酸あるいは酢酸ビニルモノマーを用いて生産される.

低置換度の酢酸澱粉粒子は,外観が元の澱粉と変わらないにも拘わらず,以下に示す通り,その性質は劇的に変化する.

@糊化開始温度の低下 A糊液透明度の増加 B離水等の経時変化がない C凍結解凍安定性を持つ


 これまで,平均粒径の小さい品種と大きい品種を比較した研究はあるが,同一品種の澱粉を分級して研究した例は非常に少ない.

従って,本研究では大粒子(Large),中粒子(Middle),小粒子(Small)および未分級(Parent)の4種類の分級澱粉に,無水酢酸を添加することで

酢酸化分級馬鈴薯澱粉を調製し,含水率,アセチル基含量,RVA粘度特性,DSC糊化特性,溶解度・膨潤度,離水率などの

物理化学的性質を調べた. また馬鈴薯澱粉は,加工や調理に広く用いられる食塩の存在下で性質を変えることから,蒸留水中および

0.1M-NaCl溶液中で実験を行った.