生物学入門 

概要


生物リズムの意義は、この問題の最も熱狂的な研究者が期待し続けてきたよりも、はるかに超えたものとなるだろう。それは、生物時計が物質の無機的機能と生物学的機能との間の明確な絆を構成するからである。したがって、生物リズムの本性を理解することは、生命自体の創生をより深く理解することにつながる。
(JT Fraser, The Genesis and Evolution of Time,1982)
(自然界における5つの時間、道家達将・山崎正勝監訳を改変)


(since 04/21/02)

未完
(最終更新 05/28/2002)

06/17/2002:試験の解答はこれ。論述式の問題を期待していた皆さん、ごめんなさい。ノート一冊採点するのに10分前後かかります。270冊では約50時間。一日に2時間費やしたとして約一ヶ月も採点にかかるので、試験まで論述にしていたら、採点に2ヶ月以上もかかってしまうという事情を勘案してください。『論述』部分は、ノートのほうで採点します。

もうすぐ(06/17/2002)テストとノート提出ですね。
いよいよあと8日!(06/09現在)

講義科目の1単位は授業15時間(=7.5講)+自宅学習30時間に相当します。あなたは、これに見合う以上のことを学習していますか?



『生物学入門』履修学生用に概念地図 concept map を作ってみました。あなたのオリジナルな概念地図を作ってみることをお奨めします。 ここをクリックしてください。
06/09/2002:新一年生が、学期中に熱力学第二法則を完全に理解することを後藤は求めていません。にもかかわらず、この法則について多くの時間を割いたのには二つの理由があります。ひとつは、生命を含む動的秩序のことを基本的に理解するためには不可欠な概念であること、ふたつめに、生物学関連の科目の中でこの法則が引き合いに出されることは、少なくとも本学では滅多にないだろうと思われるためです。この概念について新一年生諸君が折にふれじっくりと考える機会をもってくれることを後藤は願っております。
06/09/2002:次に示す概念は試験当日までに理解しておくとよいでしょう。@動的秩序とはどのようなものか?A生命は他の動的秩序とはどのような点で異なるのか?B適応度とは?C固有代謝率はどうして代謝テンポとみなせるのか?D固有代謝率(代謝テンポ)の四分の一乗則とは?E哺乳類の生命サイクル事象の特性と生態学的死亡率との関連はどのようになっているか?F老化はなぜ進化的に除去できないのか?G老化の近接要因としての活性酸素障害仮説を支持する証拠について説明できるか?H専門家の種存続期間はなぜ短いのか?I新奇な遺伝子の創造に遺伝子重複が不可欠であるのはどうしてか?J地球生態系における海洋生態系の寄与はどれほどか?Kシアノバクテリアにはどのような生命史的・生態学的効果があるか?L遺伝と環境(氏と育ち)の基本的関係について

2002年度 生物学入門の目標と概要
目標:

    1.自分の力で調べ考える姿勢を身につけ(良薬は口に苦し)、同時に、これを通じて論理的思考力を養成する。
    2.生物学の全体像を理解する視点と姿勢を養う。
    3.生物学の基本的概念を理解する。
    4.目標2と3を通じて、一般教養としての生物学、ならびに、専門基礎としての生物学を修得する。
概要:
    高校課程「生物TB・U」の知識を前提にして講義を進める。予習⇒受講⇒復習・発展学習のサイクルを繰り返すことによって、科目目標を達成する。科目前半では、生命の普遍的原理を考察することにより、生物学の全体像を俯瞰する能力を養う。科目後半では、生物学のトピックスについて考察して、個別生命現象を深く理解する能力を養う。
後藤担当分の講義概要

以下、本ページでは科目「生物学入門」のうち後藤担当分の講義概要を示します。

  • 【予習・復習教材など】で示されていることは、あくまでも「参考意見」として捉えてください。つまり、そこに示されているもの以外にもたくさん教材はある、ということです。ただし、【予習・復習教材など】で示されている図書は、通読することが望ましい、と後藤が考えるものです。
  • 結論1云々で示されている諸命題は、受講生各自がそれを理解し論評できるようになることを、後藤が望んでいることがらです。
  • なお、2002年度新入生の入学時に配られた生物学入門シラバスはこれです。
  • 後藤担当分の授業では、予習よりも復習・発展学習の方に力を入れてください。

講義細目
番号をクリックすると主な内容を表示します。

@知識と思考、学問の学び方

A生命と自然、自然法則と自然の流れ、自由エネルギー変換と代謝テンポ

B自然淘汰と生命サイクル

C生命サイクルを巡る諸問題

D老化のメカニズムと活性酸素

E環境適応(1)生命と光

F環境適応(2)生命とリズム

G生命史概観

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より詳しい講義細目

@知識と思考、学問の学び方

A生命と自然、自然法則と自然の流れ、自由エネルギー変換と代謝テンポ

B自然淘汰と生命サイクル

C生命サイクルを巡る諸問題

D老化のメカニズムと活性酸素

    老化メカニズムを題材に、生物学的検証方法について考える。
    同時に、一つの個別生命現象(ここでは、老化)が他の様々な生命現象と密接に関係していることを理解する。
    (⇒老化のメカニズムを巡って

    【い】老化の進化学説と老化メカニズム

    【ろ】生命と酸素

    【は】老化の活性酸素障害説

E環境適応(1)生命と光

    生命にとっての光の役割を全般的に理解する。特に、環境情報としての光の役割について考える。

    【い】光と物質

    【ろ】光と生命

    【は】環境情報としての光

F環境適応(2)生命とリズム

G生命史概観

    生命界を歴史的かつ地球生態系的に俯瞰する態度を養うとともに、生物進化の原動力について考える。

    生命史概観

    【い】生物三上界と共生進化

    【ろ】多様化と複雑化、一般家と専門家(⇒

    【は】生物進化の遺伝的基盤(⇒

    【に】シアノバクテリアの力(⇒

    【ほ】陸域生態系と水域生態系

    【へ】極限生態系

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@知識と思考、学問の学び方

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A生命と自然、自然法則と自然の流れ、自由エネルギー変換と代謝テンポ

    生命・人間と自然法則との基本的な関係について考える。特に、生命の熱力学的側面についての考察を深めるとともに、生命活動のテンポという、看過されがちな視点について考える。

    【受講のための予備知識】

    • ATP、NAD、NADP
    • セントラルドグマとDNA,蛋白質、酵素
    • 仕事(仕事量)と仕事率

    【予習・復習教材など】

    • 『ライフサイクル』第一章 生命の論理、第二章 エネルギー変換系としての生命
    • 『生命と自由』第四章 化学系としての生命
    • 『生物学のすすめ』第六章 安定性と調節
    • 『生命を捉えなおす』(清水博 中公新書)
    • 『エントロピー入門』(杉本大一郎、中公新書)
    • 『スケーリング:動物設計論』第六章 代謝率と体サイズ

    【い】生命と物理法則(⇒断熱孤立系のエントロピーは増大する

      結論1 エントロピーは乱雑度の尺度であり、自由エネルギーは仕事
          に転換しうるエネルギーの最大値である。
              
      結論2 生命は熱力学第二法則に完全に沿った過程である。
      
      結論3 人間活動も自然法則に逆らうことはできないが、自然の流れ
          を変えることはできる。ただし、その意図が100%実現す
          ることは不可能である。
      
      結論4 
      

    【ろ】生命と動的秩序

      結論1 動的秩序とは定常的な自由エネルギー変換(過程)を通じて、
          この変換装置を更新する過程である。
      
      結論2 静的秩序は熱平衡状態で達成される安定な秩序である。
      
      結論3 生命は動的秩序の一形態である。
      
      結論4 生態系は動的秩序の一形態である。
      
      結論5 動的秩序は必ずしも生命ではない。
      
      結論6 
      

    【は】蛋白質作用の重層的ネットワーク(生物学的仕事の統合)

      結論1 熱力学的可能性は、ある反応・過程が実現するための必要条件
          ではあるが十分条件ではない。
          
      結論2 生物学的仕事には少なくとも四種類が区別される。
      
      結論3 生物学的仕事を担う分子的実体(機能素子)は各種の蛋白質で
          ある。
          
      結論4 DNAは生物学的仕事を行わない。
      
      結論5 生命(活動)は、各種蛋白質の「量と質」の時空的配置によっ
          て決まる。
      
      結論6 
      

    【に】生命のエネルギー効率と代謝テンポ

      結論1 生命のエネルギー効率は約25%である。
      
      結論2 人体の代謝率は約100ワットである。
      
      結論3 典型的な酵素の分子活性は 1000〜10000 である。
      
      結論4 哺乳類の代謝率は体サイズの四分の三乗に比例して増加する。
      
      結論5 固有代謝率は心拍速度など筋収縮の速度に比例し、代謝テンポ
          (行動・生理テンポ)の良い尺度となる。
      
      結論6 哺乳類の固有代謝率(代謝テンポ)は体サイズの四分の一乗に
          比例して減少する。
      
      結論7 鳥類の固有代謝率(代謝テンポ)も体サイズの四分の一乗に比
          例して減少する。
          
      結論8 鳥類は同サイズの哺乳類に比べ代謝テンポが20%ほど速い。
          (スズメ目は、2倍弱)
      

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B自然淘汰と生命サイクル

    他の動的秩序とは異なる生命の特殊な性質と生命に固有な法則性について考える。

    【受講のための予備知識】

    • 前講までの復習・発展学習を十分に行っていること。

    【予習・復習教材など】

    • 『ライフサイクル』第一章 生命の論理
    • 『生物学のすすめ』第一〜五章 
    • 『生物進化を考える』(木村資生1988、岩波新書)
    • 『進化論と生物哲学』(マイア原著1988、東京化学同人)
    • 『自然と遊戯』(アイゲン&ヴィンクラー原著1975、東京化学同人)

    【い】自然淘汰とは何か

      結論1  適応度(繁殖成功度)とは、ある個体が次代に残す繁殖可能
           な子孫数の遺伝的期待値である。 
      
      結論2  進化は、生物の歴史的な「進歩」のことではない。
      
      結論3  生物の複製の誤り、つまり遺伝的変異は熱力学的な必然である。
           したがって、変異の方向は偶然である。
           
             生命界が進化することは必然であるが、その方向は偶然的
             であるため、生命界の厳密な未来予測は、原理的に不可能
             である。
      
      結論4  同一種内の個体どうしには適応度の差が存在する。自然淘汰は、
           適応度の高い子孫を残すように働く自然の力(自然作用)であ
           る。
      
      結論5  種とは独自のニッチを占有する交配可能な個体群である(マイ
           アの生物学的種概念)
           
      結論6  それぞれの種はそれぞれの環境に適応しており、したがって
           種間の優劣を決める自然科学的な尺度は存在しない。
           
      結論7  【人間は高等である】という命題は、その命題を導くような基
           準(評価尺度)を設定したことによるアーティファクト(人為
           的産物)である。
           
           ものを観る基準、比較する基準そのものについて反省・吟味す
           る姿勢に心がけて欲しい。
      
      結論8  近代医療活動は、自然淘汰法則に逆らった活動ではないし、
           ヒトの適応度を下げる行為でもない。
           
             適応度は所与の環境、ここでは近代医療活動を行う社会、
             に依存して変化することに注意。
             
             近代医療活動をまかなえない社会が到来すれば、現代人の
             平均的な適応度は全般的に低下するはずだ。
             
             ただし、自然淘汰は個体間の適応度の差(高低)に作用す
             ることに注意。
             
             『ヨーロッパ人の肉体は繊弱なので、治癒が非常に遅い。
             日本人の肉体は癌研なので、重傷、骨折、膿瘍および災厄
             からも、われわれ以上に見事に、しかも一層速やかに快復
             する。』(岩波文庫、ヨーロッパ文化と日本文化、ルイス・
             フロイス原著1585)
      

    【ろ】生命サイクルとは何か

      結論1  ライフサイクル(生命サイクル)は、性的生物にとっては受
           精卵サイクルまたは接合子サイクルであり、非性的単細胞生
           物にとってはセルサイクル(細胞周期)である。
           
             受精卵⇒胞胚⇒原腸胚⇒⇒受精卵という位相進行をイメ
             ージすれば分かるように、生命サイクル過程は空間秩序
             と時間秩序の統合された時空秩序である。(均質系の化
             学振動のような動的秩序は純粋な時間秩序であって、空
             間的には秩序形成されない(均質系だから))。
      
      結論2  生命の瞬間は、直前の位相によって作られ、直後の位相を準
           備するものとして、生命サイクルの一位相としてのみ存在す
           る。
      
      結論3  生命サイクルは遺伝的プログラムの実現過程である。 
      
      結論4  生命サイクルの「結果」(つまり増殖)は遺伝的プログラム
           として予め組み込まれているため、それは目的律的過程であ
           る。その目的は「増殖」である。
      

    【は】生命とは何か

      
      結論1  目的律的過程であるような動的秩序は生命のほかには存在し
           ない。
           
             つまり、これこそが生命を生命たらしめているところの、
             最も生命らしい(生命に固有の)特徴となっている。
             
           生命とは、遺伝的プログラムの実現としての生命サイクル
           (位相進行過程)である。
           
             これを、遺伝子発現過程としての生命サイクル、といって
             も良いだろう。
      
      結論2  全体が目的をもつとき部分は手段として機能する。また、こ
           の機能を通じて全体に組み込まれ(統合され)ている。
           
             部分−全体関係は、空間的であるばかりではなく時間的
             でもあることに注意すること。
             
           生命の一瞬(一位相)(=部分)は、生命サイクル(=全体)
           を構成し、それを通じて生命サイクルに統合されている。
           
      結論3  生命=生命サイクルは、それ自体が目的である(目的律的過程
           である)から、生命はなんのために存在するのか、という問い
           かけは成立しない。
           
             この問いかけに対する答えはせいぜい、生命はそれ自体を
             目的として存在する、ということになる。
      

    【に】生命の目的、ひとの目的

      
      結論1  生命の目的は、ひとが脳のなかに構成する「人為」目的とは異
           なる。
      
      結論2  自由な意志で人為目的を設定できるよう、ひとは遺伝的にプ
           ログラムされている。
      
      結論3
      

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C生命サイクルを巡る諸問題

    生命の、種としての固有性・個としての固有性の由来について考え、生命現象相互の複雑で奥深い関係について考える。

    【受講のための予備知識】

    • 前講までの復習・発展学習を十分に行っていること。

    【予習・復習教材など】

    • 『ライフサイクル』第3〜7章
    • 『生物学のすすめ』第7章 行動 
    • 『人間の進化と性淘汰』(ダーウィン原著1871、文一総合出版)
    • 『行動生態学』(クレブス&デイビス原著1984、蒼樹書房)
    • 『利己的な遺伝子』(ドーキンス原著1976/1989、紀伊國屋)
    • 『ゾウの時間ネズミの時間』(本川達男1992、中公新書)

    【い】異説『ゾウの時間 ネズミの時間』
    (⇒異説『ゾウの時間 ネズミの時間』
    (⇒哺乳類の限界寿命と生命サイクルテンポ

      結論1  ある理論体系に対して、明らかな例外が認められたら、直ちに
           その理論体系を廃止、改変すべきである(白上謙一)。
      
      結論2  例外の中には重要な真実が隠されている。
      
      結論3  固有代謝率(固有仕事率)は代謝テンポと等価である。
      
      結論4  哺乳類の代謝テンポは四分の一乗則にしたがう。
      
             P*(W/kg) ≒ 3.4 M-0.25
             M:相対体重(1kgに対する比率)
             体重が16倍になればテンポは半分に落ちる。
      結論5  霊長類とコウモリは(哺乳類)限界寿命の四分の一乗「則」
           の顕著な例外である。
           
      結論6  代謝テンポと限界寿命は、異なった法則性にしたがう。
      
             霊長類やコウモリの限界寿命が、四分の一乗「則」が予
             想する年齢より、ずっと遅い理由は何だろうか?
      

    【ろ】老化の究極要因
    (⇒哺乳類の生命サイクルテンポに対する淘汰圧
    (⇒霊長類の生命サイクルテンポに対する淘汰圧

      結論1  定義:
           老化とは、加齢に伴う生存力や繁殖力の全般的低下である。
           
             非性的生物は加齢とともに老化しない。
      
      結論2  一つの生命現象について、その究極要因と近接要因の両面を
           あわせて理解することが生物学の目的(課題)である。
           
      結論3  性的生物は必ず老化する。
      
      結論4  不老不死(という遺伝形質)は、他の条件がすべて同じなら、
           最高の適応度を与える。
           
             (遺伝的形質として)老化しやすい個体ほど、適応度は
             低い。
             
      結論5  高齢個体ほど淘汰圧が弱い。
      
             高齢で発現する有害遺伝子ほど子孫に伝わりやすい。
             
             低齢で発現する有害遺伝子ほど淘汰される(子孫に伝わら
             ない)
             
      結論6  高死亡率の個体群ほど高齢個体の進化的価値は低く、早めに
           子孫を残す形質、つまり早熟を有利にするような淘汰圧が働く。
      
      結論7  サイズの割に外的死亡率が高い目(ウサギ、ツパイ、齧歯類
           など)は、生命サイクルテンポはサイズの割に速く、またサ
           イズの割に多産である。
           
             サイズの割に外的死亡率の低い目(霊長目、翼手目、
             長鼻目など)はサイズの割に生命サイクルテンポが遅く、
             少産である。
             
             この生活史遅速系列の中間に位置する、「標準的な」哺
             乳類としてセイウチやアザラシなどの鰭脚亜目(海生食
             肉目)アルマジロ、アリクイ、ナマケモノなどの貧歯目
             (Edentata)、ジュゴンなど海牛目(Sirenia), 馬、サイ
             などの奇蹄目(Perissodactyla)があげられる。
      
      結論8  サイズの割に生命サイクルテンポが遅いということは、サイ
           ズの割に育児期間が長いということであり、母親の育児負担
           もサイズの割に重くなる、ということである。
      
             逆に、子供の側から見れば、学習期間がサイズの割に長い、
             ということだ。
      
      結論9  結論6は理論的予測、結論7は観察事実である。
      
             生命サイクルテンポを決める大まかな要因は、四分の一乗
             則であるが、それは絶対的な法則ではありえない。
             
             つまり、サイズが大きくても、生命サイクルテンポは速い、
             という例は幾らでもある。
             
             外的死亡率に対する適応的結果として、生命サイクルテン
             ポは大きく変わる。
             
      結論10 老化の進化学説によれば、老化のプログラム説の妥当性は低い。
      
      結論11 老化は遺伝的形質であるが、自然淘汰が選抜してきた形質は、
           老化促進プログラムではなくて、老化抑制プログラムであろう。
           
             老化抑制プログラムの成熟後の崩壊こそ、老化のメカニズ
             ム(近接要因)であることが予想される。
           
      

    【は】生活史戦略と発生・生態(⇒

      結論1  r戦略者は多産多死、K戦略者は少産少死である。
      
      結論2  発生プログラムの小さな変更で大きな形態変化が生まれる。
      
      結論3  生活史戦略の変更にはヘテロクロニーが必須である。
      
      結論4
      
      

    【に】ネオテニーと霊長類の群れ、愛と良心
    (⇒なわばりから群れへ
    (⇒欲望と規範の生物学

      結論1  哺乳類の中で霊長類は最もネオテニーを起こしたグループであ
                り、ヒトは霊長類の中で最もネオテニーが進んでいる。
           
      結論2  哺乳類の群れは原則として母系的である。
      
      結論3  生命サイクルテンポの霊長類内部で種間差は、食性や社会形態
           の違い、或いは脳重の違いに由来している。
           
      結論4  霊長類において、サイズの割に脳サイズの大きい種はサイズの
           割に晩熟であり限界寿命が長い(生命サイクルテンポが遅い)。
           
             これは、果実食者であり、複雑な社会形態をとるものに多
             い。
             これと対照的なのは、葉食者でハーレム型の社会である。
      
      結論5  群れを形成するためには、個体の排他性(攻撃性、なわばり性)
           を緩和する必要がある。
           
             雌が、雄によるなわばり進入を非繁殖季にも許容すること
             が条件となっただろう。
             
      結論6  ネオテニーに伴う母親の育児負担の強化が、群れ形成の基本的
           な歴史的要因であっただろう。
           
             霊長類の群れの生物学的機能は「育児」である、というこ
             とになる。この「育児」機能を、どのような手段で達成す
             るか、それは様々であろう(雄を採餌者にするか、防衛者
             にするか、或いは子守り者にするか、、、、など)
             
      結論7  群れ個体は、群れの内部には暖かく外部には冷たい。
      
      結論8  定義1:包括適応度
           血縁者総体の適応度合計
      
           定義2:進化的利益
           生存率や繁殖率にプラスとなることがら
      
           定義3:利他行動
           自己の進化的利益を捨てることによって他者の進化的利益を増
           す行為
           
             行動の結果としてのみ評価し、行動の動機は問わない。
             日常生活における用語とは異なることに注意。
      
           定義4:利己行動
           利他行動でない行動。
           
           ただし、利己と利他が対概念である以上、両種類の行動がみら
           れない動物(例えば爬虫類)に、この概念を適用するのは妥当
           ではない。
             
             爬虫類のなわばり行動は利己行動と呼ぶべきではない。
      
      結論9  利他行動を促す遺伝的形質が進化する一つのケースは、それが
           包括適応度をあげることに貢献する場合である。
           
             母性愛は、そのような遺伝的形質の一つである。
             
             雄の「子守り本能」もその一つだろう。
      
      結論10 定義1:愛
           他者を守る(大切にする、保護する)こころ
           
             無私の愛:自己より他者を守るこころ
           
           定義2:悪
           群れの規範(つまり正義)に反すること
           
           定義3:良心
           悪を恥じるこころ
           
           定義4:理性
           意志的行動において、行動選択肢の中から一つを選択(判断)
           する心的能力。
           
      結論11 利他行動の動機の一つは愛である。
      
             愛は、血縁者にのみ向けられるものではない、という事実。
             
             愛は、個体間のコミュニケーションによって育まれる、と
             いう事実
             
      
      結論12 社会本能(共感本能)も利他行動の一つの動機である。
             
      結論13 正義は、群れ内部にのみ通用する。
      
             群れの規範にしたがうとは、群れ間の対立・抗争がある場
             合には群れメンバーとして戦う、ということである
             (当たり前かな?)
             
      結論14 重層的な群れにおいては、最高次の群れの規範が最大の正義と
           なる。
      
             つまり、村より町、町より国家、、、ということだが、そ
             の群れ単位が現実的な力(例えば国家権力)をもつ場合に
             のみ、規範は守られる。
             
             現代の地球社会においては、国連がそのような力のほんの
             一端を担っているように見える。
      
      結論15 本能的機能の連関が乱れることこそ、理性に反する行為の原因
           なのである。自由を求める衝動によって、私たちは(内的)道徳
           律以外のものに服従することを嫌う。
                         ローレンツ (攻撃 1963)
      
      

    【ほ】遺伝的素質と受精卵誕生後の体験

      結論1  遺伝的素質はポテンシャル(潜在能力)であり、そのポテン
           シャルを超えた能力をもつことはできない。
           
             例えば、ひとはどのようにしても100mを5秒で走る
             能力を身につけることはできない。
      
      結論2  現実の能力は、受精卵以降のさまざまな体験によって変更さ
           れる。ただし、この変更の度合いは、遺伝的ポテンシャルの
           範囲内に収まるはずである。
           
             例えば、全く思考する経験をもたないとすれば、思考能
             力を失うことになるだろう。
             
             あなたは、自分の遺伝的素質をどれだけ開花させている
             だろうか?
             
      結論3  現実の能力を体験によって変更するという性質自体、遺伝的
           に決められている。 
      
      結論4  知性は知的能力のことであり、知的イメージは知的能力によ
           って頭脳内に思い描く知的世界である。
           
             知的イメージは歴史的・時代的制約を受ける。
             知的能力は遺伝的制約を受ける。
             
      結論5  パーソナリティーの個人差に寄与する要因のうち、遺伝的な
           部分(遺伝率)は約40%とされている。
           
             遺伝と環境、氏と育ちの関係を正しく理解すること
             (結論1、2)
      
      結論6
           
      

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D老化のメカニズムと活性酸素

    老化メカニズムを題材に、生物学的検証方法について考える。
    同時に、一つの個別生命現象(ここでは、老化)が他の様々な生命現象と密接に関係していることを理解する。

    老化のメカニズムを巡って

    【受講のための予備知識】

    • 前講までの復習・発展学習を十分に行っていること。

    【予習・復習教材など】

    • 『ライフサイクル』第8章 エイジングの過程、第9章 サイクルの逆転
    • 『活性酸素・フリーラジカルのすべて 健康から環境汚染まで』(吉川ほか2000、丸善)
    • 『老化とは何か』(今堀和友1993、岩波新書)
    • 【遺伝】別冊『老化と寿命』(1995、裳華房)

    【い】老化の進化学説と老化メカニズム

      結論1  進化学説から支持される老化の形式的メカニズムには次の
           二説がある。
           
          (1)拮抗的多面効果説 antagonistic pleiotropy theory
          (2)体細胞使い捨て説(ディスポ体躯説)
             disposable soma theory
                   
      結論2  細胞の分裂寿命は個体老化の要因とはならない。
      
             神経細胞は分裂終了細胞であるが機能しつづける。
      
             
      

    【ろ】生命と酸素

      結論1  酸素は生命にとって原則として危険である。
      
             偏性嫌気性菌は、酸素に触れると死ぬ。
             
             酸素毒に対する防衛能力を備えた生物が条件的嫌気性
             生物と偏性好気性生物である。
      
      結論2  藻類の葉緑体はシアノバクテリアが細胞内共生したもの。
      
             植物の祖先は緑藻類。
             
             植物は、胚発生する独立栄養性物である。
             
      結論3  酸素呼吸は呼吸基質の利用効率を高める。
      
             エネルギー効率を高めるわけではない。
      
      結論4  シアノバクテリアや藻類の生命活動は生命史の原動力となっ
           てきた。
           
             @偏性嫌気性菌の分布制限
             A酸素耐性能の歴史的定着
             B酸素呼吸の維持
             Cカンブリア紀大爆発の生態学的一要因
             D生物上陸の生態学的一要因(オゾン層の形成)
              
      結論5  活性酸素は呼吸鎖や光合成電子伝達で発生する。
      
      結論6  活性酸素生成は原則的には有毒な副産物であるが、それを生
           物学的機能とする活動(つまり、積極的に活性酸素生成を行
           活動)もある。
      
             貪食細胞によるバクテリアなどの殺傷
      
      結論7
      
      

    【は】老化の活性酸素障害説

      結論1  活性酸素障害は三つの要因のバランスによって決まる。
      
             @活性酸素生成速度
             A活性酸素消去速度
             B障害修復速度
             
             @を低め、AやBを高めるメカニズムをあわせて
             抗酸化システムとか、活性酸素障害防衛システムと呼ぶ。
      
      結論2  老化が活性酸素障害の蓄積によるものだ、とする仮説には、
           下記の五系統の証拠がある。
           
      (い)活性酸素障害の加齢に伴う蓄積
      
      (ろ)活性酸素消去能の実験的増大
             
             ショウジョウバエや線虫を用いた実験では、SODと
             カタラーゼの過剰発現によって限界寿命が延長されます。
      
      (は)長寿変異によるストレス耐性増大の随伴
      
             長寿変異株や、長寿系統が選抜されるような人為淘汰や
             進化的実験においては、一般に環境ストレスに対する耐
             性が高くなります。
                    
      (に)カロリー制限と老化遅延、寿命延長
      
             広範な動物種において、カロリー制限が活性酸素障害を
             低下させるだけではなく、老化を遅延し限界寿命を延長
             させることが示されています。
             
      (ほ)限界寿命と活性酸素生成の種間差
      
             限界寿命の長い種ほど、ミトコンドリアにおける活性酸
             素生成は低いことが明らかになっています。
      
         

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E環境適応(1)生命と光

    生命にとっての光の役割を全般的に理解する。特に、環境情報としての光の役割について考える。

    【受講のための予備知識】

    • 前講までの復習・発展学習を十分に行っていること。

    【予習・復習教材など】

    • 『光と生命』(ビョルン原著1973、理工学社)
    • 『植物的生命像』(古谷雅樹1990、講談社ブルーバックス) 
    • 『光が拓く生命科学』全8巻(2000、共立出版)
    • 『光と人間』(大石正編著1999、共立出版)
    • 【細胞工学】別冊『植物の光センシング』(2001、秀潤社)

    【い】光と物質

      結論1  物質が光を吸収するとは、光のエネルギーを用いてその物質
           が基底状態から励起状態に変換することである。
           
             吸収された光にのみ作用効果がある。
             
             吸収特性は物質それぞれで異なる。
             
             クロロフィルは赤と青をよく吸収し、緑を反射・透過さ
             せるので、葉は緑に見える。
             
      結論2  
             
      

    【ろ】光と生命

      結論1  生命にとって光は三種類の役割をもつ。エネルギー源(栄養
           源)・環境情報・光毒性。
           
      結論2  UVは主に核酸を障害させることによって殺菌作用をもつ。
           可視光線といえども、過剰に吸収すると光酸化作用を現す。
           生理機能をもたない光増感剤が細胞内にあれば、弱光でも
           光酸化作用を現す。
           
      結論3  可視光線であるからといって、ひとはそれをすべて見ている
           わけではない。
           
             視覚では見えない可視光線が、生物時計の時刻合わせに
             使われている。
      
      

    【は】環境情報としての光

      結論1  光は信頼できる環境情報である。
      
             (1)地球環境の24時間周期のうち最も規則的な周期
                は明暗のサイクルである。
             (2)光強度や光スペクトルは、昼夜のサイクルで変転
                するだけでなく、空間的な位置情報としての役割
                をもつ。森林や海の垂直分布を想定すること。
             (3)光には功罪両面の生物学的作用があるため、敏感
                に反応する必要がある。
      
      結論2  強光に対して負の光走性をもたない限り生存できない。これ
           に加えて光合成生物は弱光に対する正の光走性を示すと有利
           である。
           
      結論3            
                   
      

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F環境適応(2)生命とリズム

    生命のリズミカルな本質について考える。

    【受講のための予備知識】

    • 前講までの復習・発展学習を十分に行っていること。

    【予習・復習教材など】

    • 『生物時計』(クラウズリー=トンプソン原著1980、同文書院)
    • 『時間を知る生物』(富岡憲治1996、裳華房)
    • 『からだの中の夜と昼』(千葉喜彦1996、中公新書) 
    • 『時間生物学ハンドブック』(千葉喜彦・高橋清久編1991)
    • 『光が拓く生命科学』全8巻(2000、共立出版)
    • 生物リズム学概論

    【い】生物リズムのスペクトル

    @生命のリズムと環境のリズムの共振
    代謝リズム

      結論1  生命にはミリ秒オーダーから年オーダー周期の生物リズムが
           刻まれている。
           
      結論2  生物リズムの発振源は生命の内部にある。
      
      結論3  代謝リズムや生命サイクルは生命の根幹リズムであるのに対し、
           概リズムは環境適応リズムである。
           
             概リズムは代謝テンポ領域の活性の強弱や、生命サイクル
             のタイミングを制御することによって、生命に環境適応機
             能を付与している。
      
      結論4  概日リズムはすべての真核生物とシアノバクテリアに備わって
           おり、以下の三つの形式的特徴をもつ生物リズムである。
           
           @恒常環境のもとで約24時間周期のリズムを持続させる。
           A概日周期は環境変動に対して安定である。
             特に、温度補償されている。
           B24時間明暗周期に同調する。
           
      

    【ろ】概日リズムの機能(⇒概日リズムと環境適応

      結論1  光障害に対する防衛と太陽光エネルギーの効率的利用が、恐ら
           く最も基本的な機能である。
           
      結論2  陸上生物にとっては更に乾燥に対する防衛も概日リズムの重要
           な機能である。
           
      結論3  被食の回避、捕食の効率化の概日リズムにより、生態系(食物
           網)の日周リズムが生まれる。
           
      結論4  ニッチは種間競争によって分割され、このニッチ分割に概日リズ
           ムが使われる場合がある。
           
             ニッチ分割の事例数の大小は下記の通り。
             大生息場所>小生息場所>餌>一日の時間帯>季節
             
      結論5  社会生活を営む種の場合、概日リムによる個体間の位相同調が
           不可欠である。
           
      結論6  雄と雌の繁殖活動の同期性に必要な概日リズムは、社会生活を
           営むか否かに関わらず重要である。
           
      結論7  概日リズムの変異は種形成に導く可能性がある。
      
      

    【は】概日リズムによるセルサイクル制御(⇒概日リズムの生命サイクル制御

      結論1  セルサイクルはMPFタイマー(細胞周期エンジン)によって
           駆動される。
           
      結論2  セルサイクル進行は内的・外的要因によって抑制される。
      
           @チェックポイント:セルサイクル末端事象(DNA複製や
            紡錘体重合)の未了や不良
            
           A環境条件の悪化(飢餓など)
           
           B発生学的抑制
           
             (1)中期胞胚期転換以降のG1期・G2期の挿入
                  分裂するためには十分な成長が必要。
             (2)第一減数分裂におけるG2期またはプロフェーズ
                抑制とホルモン刺激による解除
                第二減数分裂におけるメタフェーズ抑制と精子貫入
                による抑制解除 (単為発生の防止)
           
           C概日的抑制
           
             特定の概日位相にのみ細胞増殖することが許されている。
      
      結論3  ユーグレナが主観的夜(CT12〜24)にのみ細胞増殖する
           のは、概日的G2期抑制がCT20〜08の間に働くからであ
           る。
           
           ⇒ユーグレナ(美しい瞳)
           ⇒ユーグレナ植物門(筑波大学)
           ⇒ユーグレナ動物門(筑波大学)
           ⇒プロジェクト『ユーグレナ』(Rutgers Univ)
      
             G2期抑制によってM期への突入が抑制されるため、この
             抑制が解除されるCT08〜20の間はM期への突入が起
             こる。M期は約4時間であるため、細胞の増殖はCT12
             〜24の間に観察されることになる。
           
             この他、CT00〜12の間、概日的S期抑制が効く。
             また、CT23〜03には、概日的G1期抑制が効く。
             
             こうした概日的セルサイクル抑制の淘汰価値(生理機能)
             や分子メカニズムは殆ど全く分かっていない。
      
      結論4  ユーグレナのセルサイクルが暗期に進行するためには、光によ
           って暗期進行能力を付与されなければならない。
           
             この付与のことを、光誘導コミットメントという。
             
             G1期、S期、G2期各細胞は光誘導コミットメントを受
             けた場合にのみ、暗所のもとでも次の(またはその次の)
             位相まで進行することができる。
                
      結論5  概日リズムは光誘導コミットメントのタイミングを制御する。
           黄昏時の光が最も有効で、暁前後の光は全く無効である。
           
      結論6  この概日リズムのために、ユーグレナの細胞増殖は光周的制御
           を受ける。
           
             日長が長いほど(黄昏時に光がよく当たるほど)、光誘導
             コミットメントの機会が増すため。
      
      結論7
      
      

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G生命史概観

    生命界を歴史的かつ地球生態系的に俯瞰する態度を養うとともに、生物進化の原動力について考える。

    【受講のための予備知識】

    • 前講までの復習・発展学習を十分に行っていること。

    【予習・復習教材など】

    • 『ライフサイクル』第一章 生命の論理
    • 『生物学のすすめ』第一〜五章 
    • 『進化論と生物哲学』(マイア原著1988、東京化学同人)
    • 『自然と遊戯』(アイゲン&ヴィンクラー原著1975、東京化学同人)
    • 『遺伝子重複による進化』(大野乾 原著1970、岩波)
    • 『進化する階層』(メイナード=スミス&サトマーリ原著1995、シュプリンガー)
    • 生命史概観

    【い】生物三上界と共生進化(⇒

    【ろ】多様化と複雑化、一般家と専門家(⇒

      結論1  生命の歴史的多様化には、複雑度の増加を伴うものと伴わぬもの
           の二種類が区別される。
          
      結論2  生命史は新ニッチの可能性を作り出すが、ニッチを巡る競争を激化
           させる。
          
      結論3  一般家の種の存続期間は専門家の種の存続期間より原則として長い。
      
      結論4  複雑度の増加のエポックは概ね原核生物⇒真核生物⇒性の出現⇒
           多細胞生物⇒社会関係(なわばりと群れ)⇒巨大な脳の出現によっ
           表される。
          
      結論5 
      
      

    【は】生物進化の遺伝的基盤(⇒

      結論1  遺伝子突然変異(DNAの塩基配列の変化)はDNAの複製の誤り
           なので熱力学的必然として生じるが、これがすべての遺伝的変化の
           基礎となっている。
          
      結論2  遺伝子重複は新奇の遺伝子を創造するために不可欠である。
      
             遺伝子重複は遺伝子の様々なレベルで生ずる。
            
             遺伝子レベル、遺伝子内ドメインのレベル、いくつかの遺伝子
             をあわせた複合体レベル(例えばオペロン)、染色体まるごと
             のレベル、など。
            
             ドメインの数と配列に応じて異なった新奇の遺伝子ができる。
      
      結論3  細胞内共生はゲノムの飛躍的増大をもたらす。
      
             生命が最も原始的だったころ、ことなる原始細胞どうしが融合
             すれば、複雑度を増した、より洗練された細胞が誕生したかも
             しれない。
            
             細胞内共生の生起を強く示す証拠は葉緑体やミトコンドリアの
             起源に関するものだ。
            
      結論4  相同染色体どうしの組換えも遺伝的多様性を生むが、種内変異を生
           む程度のもの、と考えられる。
          
      結論5  発生遺伝子の小さな変異でも大きな形態変化を生みうる。
      
      

    【に】シアノバクテリアの力
    (⇒シアノバクテリアの力、ひとの力

      結論1  シアノバクテリアは酸素発生型の光合成を行う真正細菌の一群であ
           る。
           
      結論2  シアノバクテリアの生命活動によって地球生態系の酸素分圧は上昇
           した。
           
      結論3  酸素分圧の上昇により、酸素耐性が重要な生理機能となり、これを
           もたぬ偏性嫌気性菌は分布を制限された。
           
      結論4  シアノバクテリアの生命活動によって、地球生態系は太陽を安定な
           自由エネルギー源とすることができる。
           
      結論5  酸素分圧の上昇はまた、酸素呼吸の重要性を増した。
           
      結論6  シアノバクテリアの一部は、真核細胞に共生し、緑藻の葉緑体となっ
           た。
           
           植物(胚発生する独立栄養性物)は緑藻を祖先とする。
           
           ユーグレナは、捕食性原生動物に緑藻が共生したものである。
           
      結論7  カンブリア紀大爆発の一つの生態学的要因として、この紀における
           酸素分圧の急激な上昇が考えられている。
           
      結論8  シルル紀において生物が上陸可能となった一つの重要な生態学的要
           因はオゾン層形成による紫外線の遮蔽である。
           
             このオゾン層形成には、シアノバクテリアとその末裔たち
             (各種の藻類)による光合成(酸素発生)が基本となっている。
      
      

    【ほ】陸域生態系と水域生態系

      結論1  陸と海の純一次生産はほぼ同じである。
           
             陸 48 Pg of C/年   
             海 51       ただし、P(peta)=1015Prokaryotes: The unseen majority 
      
      結論2  一次生産者の現存量は陸(植物)が海(植物性プランクトン)の約
           300倍である。
           
             陸 560  Pg C
             海  1.8
      
      結論3  原核生物の現存量(C重量)は植物現存量の60〜100%に匹敵し、
           350〜550 Pg Cと見積もられている。
           
             N重量は 85〜130 Pg
             P重量は  9〜 14 Pg と見積もられており、どちらも植物の約
             10倍に匹敵する。
             
           ↓の論文によると、
      ⇒Nature 409, 507-510 (2001) 
            少なくとも海洋では、古細菌が約 30 %、真正細菌が約 70 % 
               
      結論4  動物現存量は、海・陸どちらも約 0.5 Pg Cであり、地球生態系
           全体の現存量のわずか 0.1 % 前後に過ぎない。
           
             ヒト現存量は 60kg×(60×108)×0.18≒6.5×1013g C
               = 0.065 Pg C  (ヒト体重の18 % がC重量)
              
              これは、動物現存量の 6.5 % に相当する。
              ん?こんなに大きいのか?計算間違いしたのかな?
      
      結論5  シアノバクテリアは海洋の一次生産の 50〜70 % ほどをまかなう。
           残りは、真核藻類(主なものは、珪藻、円石藻、渦鞭藻)による。
      ⇒The Classical and Microbial Food Webs
      
           真核藻類が 99 % 、シアノバクテリアが 1 % という見積を載せた
           最近の論文もある、、、ことの真偽は原著者に確認中(05/23/2002)。
      ⇒Science 2002 May 10;296(5570):1066-8(PubMed)
      
      Life and the Evolution of Earth's Atmosphere (Science Online)        確認の結果、原著者がイメージしていた事柄は、海洋の一次生産者        のうち窒素固定細菌は約 1 % を占めるに過ぎず、残り約 99 % は        それ以外の植物性プランクトンである、ということであった。                原著者は、上記論文で後者を真核藻類であると決め付けてしまった        わけだが、後者には真核藻類はもちろんのこと、シアノバクテリア        もまた含まれることは明らかである(05/26/2002)。              偏性好気性の光合成細菌が海洋光合成の約 2-5 % を占める、という研究      については↓ ⇒Nature 407: 177-9 (2000)        このバクテリアは非酸素発生型の光合成を行う(光化学系Tをもつ        がUはもたず、また光合成色素は BChla)が、光独立栄養ではない。                光化学系Tの還元剤は未特定の有機物。                αプロテオ細菌の仲間。                    プロテオ細菌は、光合成細菌(偏性嫌気性)を共通の祖先とする          グループ(門)で、すべてグラム陰性細菌。                    ミトコンドリアはαプロテオ細菌に由来する、と考えられている。                最近の研究については↓を参照のこと。 ⇒Nature 415, 590-591 (2002)Nature 415, 572-574 (2002) 結論6  最小の見積で、人類は地球の『純一次生産』(約 100 Pg C)の約 3%      (3.3 Pg C)を消費している。              内訳        植物性食糧 0.36 Pg C        家畜飼料  1.0        木材など  1.0        魚     0.91                なお、ひとりが一日に 2500 kcal        (≒ ×0.2 g乾重/kcal ×0.45 gC/g乾重 = 225 gC)を食べるとす        ると、60億人全体では年に約 0.5 Pg C を消費することになる。              最大の見積では約 30 % にもなる。              上記資源の消費に伴うロス、また人間活動に伴う純一次生産の削減        効果(市街化、砂漠化、、など)を含めたもの。 ⇒Human Appropriation (1986)The Flow of Energy      

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