概日リズムによる細胞周期制御
(細胞分裂の時間の問題)

総合研究大学院大学グループ研究
「生体の時間秩序発現機構」第2回研究会

01/06/99

時間、生命、生命リズムの統合(細胞周期・受精卵サイクル)

はじめに

  • 本稿では、生物学的知識としては高校生物ぐらいまでを前提にすることにとどめる反面、「秩序」とか「自由エネルギー」概念など熱力学の基礎概念を前提にします。

    • ただし、本サイト内の他ページで↑の概念を詳しく説明してあります。

  • 本稿では、二つの生物時計の絡み合いについて考察することを目的とします。一つは細胞周期時計、もう一つは概日時計です。

    • 細胞周期時計がないと生命は生存できませんが、概日時計がないと(概日時計を具有する殆どの)生命は環境適応できずに存続できません。

    • より生命に根幹的な細胞周期時計のタイミングを、より生命に周辺的な(環境適応的な)概日時計が制御しています。

    • この制御メカニズムを探ることを通じて、生命にとって時間とは何かを考察する為のヒントが得られれば幸いです。

  • 本稿では、制御メカニズムを説明するに先立ち、「生命とは何か」について生物物理学的かつ生命論的な考察を試みます。

    要約

    ①時間とは何か

    • 時間という言葉(概念)とそれに対応する実体

      • 時間を計る基準(時計原理)が異なると、、、

    • 新しい運動形態の創出によって新たな時間形式が生まれる

    ②生命とは何か

    • 動的秩序の特殊な一形態としての生命

    • 生命に固有な動的秩序は何か?

      • 生命の基本単位は細胞である(細胞説)の本当の意味

          細胞としての全体的統合=細胞の動的秩序=細胞の(時空的)自己組織化=統合リズムとしての細胞周期

      • 自由エネルギー変換系としての生命

          蛋白質の作用ネットワーク(=自由エネルギー変換過程=生物学的仕事の統合)により、このネットワーク自身を再生・維持している(動的秩序)

      • 遺伝子発現系(発現調節系)としての生命

          ①蛋白質の作用ネットワーク=遺伝子発現調節系(細胞生命における素材的な機序:セントラルドグマ)

          ②作用ネットワークの変化様式=細胞周期(自発リズム)の環境適応的な位相進行

      • 機能的サブシステムどうしの統合形式(相互作用)

          細胞周期時計系(細胞生命としての骨格リズム) + 環境適応系(基本は概日リズム系+反射的応答系(偶然性の処理)) + ?

          細胞周期は細胞周期の目的因でもあり動因でもある

    • 細胞生命とは、環境適応的な遺伝子発現調節系としての細胞周期(の位相進行)である。

      個体生命(性的生物)とは環境適応的な遺伝子発現調節系としての受精卵サイクル(の位相進行)である

      生命とは、環境適応的な遺伝子発現調節系としての生命サイクル{の位相進行}である

    ③概日リズムによるセルサイクル制御

    • 細胞周期エンジンと細胞周期末端事象とチェックポイント抑制

        三つのサブシステムの統合としての細胞周期時計
        =細胞生命の骨格リズム=細胞周期(統合リズム)の中核的サブシステム

    • 概日リズム系と細胞周期時計

        概日リズム系(=概日時計)は、細胞生命の環境適応リズム

    • 概日リズム系による細胞周期時計制御のメカニズム

        概日チェックポイントによる、CT00→08(主観的昼の前半)における、S期抑制とG2期抑制

    • 再び時間について

        概日リズム系(環境適応系)と細胞周期系(生命の根幹リズム)とその他のサブシステムの統合様式(制御関係)を解明することが、環境適応的な遺伝子発現調節系としての細胞周期(の位相進行)、つまり細胞生命の具体像を解明することである。
    ***************

    ①時間とは何か

      ←(クリックする)時間とは何か?

    ②生命とは何か

  • 動的秩序の特殊な一形態としての生命

    • 生命は動的秩序には違いありませんが、非生命的な動的秩序にはない、生命的特殊性を兼ね備えた動的秩序であることに注意して欲しいと思います。

      • 清水博「生命を捉え直す」(中公新書)に典型的に見られるように、物理系の学者の中には、生命的特殊性を捨象して議論してしまっている場合が実に多いのが残念です。動的秩序一般の特性をもって生命とみなししてしまうのは、明らかに間違いです。

      • なお、動的秩序一般の特性や具体例については、下記のページを御参照下さい。
          ←生物物理学講義まとめ
          ←生命とは何か(最後のまとめ)
          ←全体と部分
      • 動的秩序は、エネルギー変換装置(変換メカニズム)が間断なく働くことによって、エネルギー変換装置(変換メカニズム)そのものが維持・形成される物質系、すなわち自己組織化現象を示す物質系である。

        • 動的秩序は、定常的に自由エネルギー変換を行う過程そのもの(時間的かつ空間的な過程の全体)すなわち時空パターン(時空秩序)(時空構造)(時空変化)であって、時間的一断面における単なる空間秩序(エネルギー変換装置)(静止的空間構造)ではない

  • 生命に固有な動的秩序は何か?

    • 生命の基本単位は細胞である。

      • 全体的統合(今の場合、細胞)を壊した部分は生命とは言えません。言い換えると、

      • この全体的統合こそ動的秩序の特性なのです。つまり、細胞は単なる入れ物でないことはもちろんですが、単なる空間的構造でもありません。また、単なる瞬間的な(時間断面としての)細胞でもなく、時空秩序(動的秩序)=プロセスとしての細胞なのです。かつ、単なるプロセスではありません。なぜなら、細胞はリズムだからです。つまり、位相進行していくプロセスなのです。

      • では、細胞の一瞬(瞬間的な細胞の状態=時空パターン)を全体的に(時空両面において)統合しているものは何でしょうか?それが、細胞周期(cell cycle、セルサイクル)なのです。つまり、細胞の動的秩序(全体的統合)とは細胞周期(という形態変化を伴った細胞の位相進行)です。

        • 細胞の一瞬(位相)(生理的にも構造的にも)は、直前の位相によって形成され、直後の位相を準備するものとしてのみ存在するからです。

        • 細胞周期は、細胞が新たな細胞を生み出すプロセス(位相進行)です。細胞は細胞から、卵は卵から。

          • 細胞周期の位相進行の帰結として、必ず新たな細胞が生まれます。このため、細胞生命とは細胞増殖である、と言っても良いように(一見すると)考えられるわけですが、この表現ですと、細胞増殖という「結果」が強調される為に、(細胞周期の)位相進行という側面、つまり時空秩序としての全体的統合が看過されてしまいますから、妥当ではありません。

    • 自由エネルギー変換系としての生命

        より詳しくは、下記のページをご覧ください。
        ←生物のエネルギー変換

      • 自由エネルギー変換を担う実体は基本的に各種の蛋白質です。電気的仕事、力学的仕事、生合成仕事、異化仕事という具合に、大きく分けて四種類の生物学的仕事があります。異化仕事は、その他の三種類の生物学的仕事の為の自由エネルギーを供給する過程です。

      • 他の動的秩序一般と同じように自己組織化過程でありますから、こうしたエネルギー変換装置(各種の蛋白質のネットワーク形式)は、エネルギー変換過程(ネットワーク作用、生物学的仕事)を通じて維持(再生産)されるような形で統合されています。

      • しかも、この統合(蛋白質の作用ネットワーク;生物学的仕事の統合)は、細胞周期の位相進行(という全体)に統合されて(従属して)います。細胞周期の位相進行の為に、蛋白質の作用ネットワーク(生物学的仕事の統合)が使われているわけです。つまり、細胞は生物学的仕事の統合を通じて細胞を維持していますが、同一位相の細胞が再生産されるのではないのです。必ず、直後の位相の細胞を形成していることに注意することが肝腎です。

    • 遺伝子発現系(発現調節系)としての生命

      • 生物学的仕事を担う各種タンパク質は、DNAに書き込まれている遺伝情報を読み取ることによって合成されます。もちろん、この読み取り過程(セントラルドグマ過程)(遺伝子発現)(RNA合成仕事、蛋白質合成仕事)を担っているのは蛋白質です。

      • この遺伝子発現を通じて、蛋白質の作用ネットワークの内実(パターン)は時々刻々と変化していくことになります。

      • この変化のパターンは、予め遺伝情報として組み込まれていることに注意して下さい。一つは、環境適応型変化であり、もう一つは細胞周期的変化です。

        • 環境適応のことを普通には刺激応答といいますが、環境刺激に対する応答の仕方(パターン)は予め遺伝情報として組み込まれており、したがって、環境に対する適応の歴史的結果として生命に蓄えられたものです。

        • もちろん、環境適応は細胞周期を円滑に進める為のプロセスです。

          • 環境適応過程は何の為に存在するかという質問は成立しますが、細胞周期は何の為に存在するかという質問は成立しません。

            • 環境適応できない細胞周期は存続すること(世代交代を継続させること)ができませんが、(細胞周期は細胞そのものですから)細胞周期と結合することのない環境適応は存在し得ないのです。

              • 環境適応は、自然淘汰の結果として、細胞周期に備えられます。

              • 繁殖成功度:所与の環境で、次代に残す繁殖可能な子孫数(細胞周期(=細胞)の個数)の遺伝的期待値

              • 自然淘汰とは、集団がより繁殖成功度の高い生命(細胞周期)によって占有されていく歴史的過程のことです。

              • 同じ環境(ニッチ)を共有するのは、同一種内の生命(細胞周期)たちですから、繁殖成功度は種内パラメターであり、自然淘汰は同一種内部でのみ作用します。より詳しくは、下記のページを御参照下さい。
                ←自然淘汰と生命サイクル   ←偶然と必然

        • すなわち、細胞周期はそれ自体の内部(細胞周期自身)に目的をもつ過程(自己目的的過程)である、ということです。

          • ゲノムは遺伝情報の詰まったモノであり、自由エネルギー変換(生物学手仕事)を行う実体ではありませんから、生命主体でもありません。「生命の目的はゲノムを残すこと」という通俗的理解(例えば、R.ドーキンス)は一見するともっともらしく聞こえますが、還元主義的な誤りを冒していることに注意して下さい。

          • もちろん、生命に内在的な目的と、人間行為の目的とは次元が全然異なっていることに注意して下さい。

        • 細胞周期は動的秩序(細胞生命における最高次の動的秩序)(自己組織化過程)ですから、動因自身でもあります;細胞周期を動かす力は細胞周期自体である、ということ。つまり、細胞周期は細胞周期の目的因でもあり動因でもある、ということになります。

      • 細胞周期という言葉で、細胞周期エンジン(の位相進行)や生長やDNA複製や有糸分裂などの細胞周期末端事象(の位相進行)を指していることは言うまでもありませんが、単にそれだけを指しているのではないことに注意して下さい。位相進行していく細胞全体(統合された細胞)を指しているのです。

      • 以上を要約しておきます。

        ①細胞は蛋白質の作用ネットワーク(エネルギー変換装置の全体、生物学的仕事の統合、細胞内の定常的自由エネルギー変換、動的秩序)です。

          この定式では、統合の形式が一切表現されていません。

        ②蛋白質の作用ネットワーク=環境適応的な遺伝子発現調節系となっています。

          統合の形式の一つとして、素材間の関係を表現しています。遺伝情報と環境情報を読み取ることを通じて蛋白質の作用ネットワークは時々刻々に変化していく、という形式です。

        ③遺伝子発現系は、環境適応的に制御されることを通じて、細胞周期を実現します(細胞周期的に位相進行します)。

          ここでは、時々刻々と変化していく蛋白質の作用ネットワークの変化過程とは、すなわち細胞周期の位相進行である、ということを表現したつもりです。

          つまり、統合のもう一つの形式(動因と目的因)が細胞周期(というリズム)である、ということです。

        以上の三点を一つの文章にまとめると、、、

  • 細胞生命とは、環境適応的な遺伝子発現調節系としての細胞周期(の位相進行)である。

    • 性的生物の場合には、個体生命とは環境適応的な遺伝子発現調節系としての受精卵サイクル(の位相進行)である、と定義することができます。

      • 非性的な単細胞生物の細胞周期と、性的な多細胞生物個体の受精卵サイクルは、基本的に同格です。体制は後者の方が一段高いという違いはありますが、両サイクルを一括して生命サイクル(a life cycle、生活環、生命環;生活史、a life history)と呼ぶことにすると、次のように表現することができます。

    • 生命とは、環境適応的な遺伝子発現調節系としての生命サイクル{の位相進行}である

      ③概日リズムによるセルサイクル制御

    • 細胞周期エンジンと細胞周期末端事象とチェックポイント抑制

        より詳しくは下記のページや、↑のlecture 32~35、或いは Joel A. Huberman, Cell-Cycle Control of S phaseをご覧ください。
        ←細胞周期調節概観
        Medline Records for Cell Cycles (from Major Journals only)
        ←Virtual Biology: Cell Cycle(その他、Biological Clocks, Cytoskeletonなどがある)

      • 細胞周期エンジンは、細胞周期(=細胞)のサブシステムとして、自発振動系を構成します。

        • 遺伝子発現調節系=蛋白質の作用ネットワークの部分ネットワークです

      • 細胞周期末端事象は、細胞周期エンジンによって誘発される過程です。

        • 細胞生長、中心体複製、中心体移動、ゲノム複製、ゲノム分配(細胞分裂)などです。

      • 細胞周期末端事象が未了であったり、欠陥があったりすると、その未了・欠陥信号によって、細胞周期エンジンがフィードバック抑制されます。これをチェックポイント機構、と言います。

        • 細胞生長の未了は、普通はG1期後期のブロックポイント(=スタート)で細胞周期を抑制します。DNA複製の未了や傷害は、細胞周期をG1期に抑制(停止)させたり、G2期に抑制したりします。紡錘体重合の欠陥は細胞周期をメタフェーズに抑制します。

      • この三つのサブシステムをまとめて細胞周期時計と呼ぶことにします。

        • 細胞周期時計という言葉で細胞周期エンジンを指す人もいますが、この三つのサブシステムの統合が細胞周期のコアを構成していることに着目するならば、この統合の方こそ細胞周期時計と呼ぶべきです。

      • 細胞周期時計は、その他の(細胞周期時計のコアには含まれない)サブシステムを制御しながら、細胞周期を位相進行させます。

        • もちろん、その他のサブシステムによる生物学的仕事に支えられながら、ではあります。いいかえると、細胞周期時計だけでは細胞周期にはならないわけです。

        • しかし、制御系としては細胞周期時計はその他のサブシステムからは相対的に独自のサブシステムを構成しているのです。

    • 概日リズム系と細胞周期時計

        より詳しくは下記のページをご覧ください。
        ←概日リズムと細胞周期

        Medline Records for Circadian Regulation of Cell Cycles

      • 細胞周期は、概日リズム系が動いてない時でも、位相進行します。例えば、ユーグレナの場合、連続照明の下では細胞周期に対する概日リズム制御がかかりません。照明強度を上げると細胞周期回転速度は高まりますが、S期とG2/M期にかかる時間は共に各々約3時間で一定です。照明強度を上げると速まるのはG1期生長です。最短で約6時間となり、このとき細胞周期長は約12時間です。

        • つまり、細胞周期時計を駆動する為には、概日リズム系は不要なのです。
          しかし、、、

      • 概日リズム系は細胞周期時計のタイミングを制御しているのです。

        • 細胞にとって、概日リズム系によって細胞周期時計を制御した方が好ましい場合と、そうでない場合とがある、ということになります。

        • 例えば、初期胚の卵割のように、早く済ませたいようステージでは、概日リズム制御が外れているのが普通です。逆に、細胞周期長が24時間よりも長い場合には、概日リズム系を備える生物であれば殆ど、細胞周期のタイミングを概日リズム系の制御に委ねているのです。

          • ただし、シアノバクテリア(藍色細菌)ではもっと速い細胞周期の時にも、細胞周期が概日リズム系の制御を受ける、と最近報告されています。尤も、この論文の著者たちの意見に私は同意していませんが、、、。

      • 逆に、概日リズム系のタイミングは、細胞周期時計による制御からは完全に独立しています。

        • 細胞周期時計の遅速にかかわらず、概日リズムの周期(または速度)は不変なのです。

          • この論文では、細胞周期制御のタイミングに対する概日リズム制御の有無について否定的見解の強かった緑藻クラミドモナスにおいて、概日リズム制御を証明するとともに、概日リズム周期が細胞周期長の影響を受けないことを明らかにしています。

    • 概日リズム系による細胞周期時計制御のメカニズム

        より詳しくは下記のページをご覧ください。
        ←概日リズムによる細胞周期の制御メカニズム

      • 真核藻類の細胞増殖は、主観的夜に起こる

        • 細胞分裂タイミングの概日リズム、と言われますが、殆どの研究において実際に観察していることがらは、細胞増殖(細胞数が増えること;細胞質分裂)が主観的夜にのみ起こる、という増殖パターンです。

        • この観察だけだと、細胞周期のどこが概日リズムによる制御ポイントになっているのか全く不明なのです。例えば、細胞質分裂(テロフェーズの終わりの一瞬)が制御ポイントになっていて、主観的昼には細胞質分裂は起こらないように制御されているとすれば、主観的夜にのみ細胞増殖するという観察結果を説明できます。或いは、主観的昼(の前半)にはS期のどこかで抑制されるとしても、細胞増殖パターンを説明できます。

      • 概日チェックポイント a circadian checkpoint 概念の導入

        • チェックポイント(=細胞周期チェックポイント)は、既述のように、細胞周期末端事象の未了・不良を監視するメカニズムですから、細胞周期時計内部の位相進行抑制メカニズムとなっています。したがって、チェックポイントは末端事象(の未了や不良)と細胞周期位相という二つの因子の関数として発現するわけです。

        • これに対し、概日チェックポイントは、末端事象の未了や不良に誘発されて発現するわけではありません。概日リズム系がある特定の位相に進むと、細胞周期時計をある特定位相に抑制するのです。言い換えると、概日チェックポイントも二つの因子の関数として発現しますが、その二つの因子は(細胞周期時計内部のチェックポイントとは異なり、)概日リズム位相と細胞周期位相なのです。

        • 鞭毛藻類ユーグレナでは少なくとも二つの概日チェックポイントが存在する、ということが明らかになっています。

            ①主観的昼の前半、S期の途中に抑制されます(DNA複製を途中で止め、G2期に突入しない)。これを、S0→8Cと名づけることにします;0→8はCT00時→CT08時の間、C は circadian checkpoint の意のつもりです。

            ②主観的昼の前半、G2期の途中に抑制され、M期(細胞分裂期)に突入することはできません。この概日チェックポイントをG20→8Cと名づけることにします。

          • 「G1期には概日チェックポイントがかからない」という確たる証拠はありませんが、データを総合すると「G1期には概日チェックポイントがなさそうです」

          • M期には概日チェックポイントがありません。

          • 0→8CとG20→8C、ともに抑制の概日リズム位相は殆ど同じです(我々の実験条件では区別できません)。CT08時以降CT00時(24時)までの期間が、S期脱出やG2期脱出が「許容」された概日リズム位相帯です。ただし、この位相帯でS期を脱出した細胞は、(G2期抑制がかかりませんから、G2期をスキップして)直ちにM期に突入するものと思われます。

            細胞集団の中で最も成長の早かった細胞は、CT08時にM期に突入した後、CT12時に細胞質分裂を始め、主観的夜の間はG1期生長を行います。しかし、CT00時(主観的夜明け)までにDNA複製を完了できませんから、CT00時→CT08時まではS期にずっと待機した状態S0→8Cになります。CT08時が招来するとともに、DNA複製(S期全体で約3時間)を完了してM期に突入します。こうして、CT12時には細胞質分裂することになるわけです。

            細胞集団の中での最大多数派は、CT15時頃にM期に突入し、CT18時頃に細胞質分裂するものたちです。こうした最大多数派は、CT00には、まだG1期生長をしています。仮に、CT12時にG1期生長を終了してS期に突入するような光強度の下で培養されているとすると、CT15時にM期に突入し、CT18時に細胞質分裂を始めることになります。

            自由継続条件では、細胞どうしの概日リズム位相は揃っていますが、細胞どうしの細胞周期位相については、幾つかのグループに分かれていることに注意して下さい。

            ユーグレナは夜間にG1期生長を行うことはできませんから、24時間明暗周期という自然条件の下では夜明けと共にG1期生長を開始(または再開)することになります。速く(早く)生長したものは、CT08時(夜明け後8時間目)にはM期に突入しますが、最も遅く生長したものだとCT21時頃(夜明け前3時間目)にM期に突入することになります。細胞周期位相的にはやはりヘテロです。

              自然条件の下では、概日リズムの位相が昼夜の位相に同調するという点と、夜間にはG1期生長ができないという点を除けば、自由継続条件の場合と基本的に同じです。細胞周期時計は、細胞周期末端事象の未了・不良にかかわらず、CT00時→08時(夜明けから夜明け後8時間まで)の間はS期やG2期に抑制されるのです。夜間には、G1期生長は止まりますが、これは環境適応的な過程ではなく、単にG1期生長の為の光エネルギーが利用できない、という事情に起因します。

        • 概日チェックポイントの適応的意義
          ←紫外線やγ線に対する感受性の細胞周期依存性に関する文献集(ワード形式はこれ)。
          ←概日リズムと環境適応(概日リズムの歴史的起源)

          • G2期やS期後期は、紫外線やγ線などに対し最も抵抗性が高い、との証拠が得られています(↑の文献集)。したがって、こうした放射の強い昼間にG2期やS期後期で停止している細胞が、そうでない細胞よりも生残する確率(繁殖成功度)が高くなります。

              細胞生命の歴史的誕生当初は、概日リズム制御系がなかったでしょうから、たまたま昼間にG2期抑制したり、S期抑制したりする細胞だけが生き残っていったものと思われます。

              しかし、昼間におけるG2期抑制やS期抑制を、メカニズムとして(遺伝的に)備える細胞の方が、偶然的にそうなってしまう細胞よりも、生残確率(繁殖成功度)が高いのは明らかです。

              このメカニズムがいつ誕生したか、それは不明です。
              が、確かに、このメカニズム、つまり概日チェックポイントS0→8C、G20→8Cが誕生して、現代まで細胞周期を連綿として回転させ続けるのに成功したわけです(そうでない細胞は子孫を残せなかった)。

        • 細胞周期時計に対する概日リズム系によるもう一つの制御系

          • G2期光要求過程の概日リズム

              より詳しくは下記のページをご覧ください。
              ←G2期光要求過程とその概日リズムの発見

        • 概日リズムによる受精卵サイクルの関門制御 細胞周期に対する制御とパラレルなことは、性的生物の受精卵サイクルに対してもみられます。下記のページで、その知見の一部を紹介しています。
          ←概日リズムと発生・成熟時計

        • まとめ

          • 細胞生命とは環境適応的な遺伝子発現調節系としての細胞周期(の位相進行)です。細胞生命の骨格リズムを構成する細胞周期時計は細胞周期時計内部のメカニズムによって自己制御的に位相進行することができます。しかし、概日リズム系が発現している場合には必ずと言って良いほど、その位相進行を、概日リズム系による外的制御に委ねます。

          • 概日リズム系は、細胞周期時計に対する外的制御の重要な一例です。概日リズム系も細胞周期時計も、細胞周期(=細胞、全体的統合)の重要なサブシステムです。以上において私は、この相互作用の形式について解説したわけです。概日リズム系がCT00→08時に細胞周期時計を抑制・停止させることを通じて、細胞周期(=細胞、全体的統合)は一日をリズミカルに位相進行していくことになります。

              以上では、概日リズム系と細胞周期時計という二つの細胞周期(=細胞)内サブシステムを取り上げました。しかし、まだ、重要なサブシステムがあります。ミトコンドリア分裂周期や葉緑体分裂周期です。こうしたオルガネラの分裂周期は細胞分裂周期と脱共役することができます。また、多核体の存在が端的に示すように細胞質分裂は細胞分裂周期と脱共役できますし、中心体(細胞分裂中心を構成する)も細胞分裂周期やDNA複製周期と脱共役できます。細胞周期は、オルガネラ分裂周期、中心体サイクル、細胞質分裂サイクルなどと、細胞分裂周期を「普通は」共役すること(統合すること)を通じて位相進行していきますが、この共役の形式を変えることを通じて多彩な機能を発揮できるとも言えます。この共役形式(統合形式)の全貌はまだ明らかではありません。また、概日リズムによる細胞周期時計(細胞分裂周期)の制御形式も少しだけ明らかになった状態ですから、オルガネラ分裂周期や中心体サイクルに対してどのような制御があるのか、ないのか、全く不明です。が、既述の制御メカニズムや適応的意義についての考察から、制御の基本形式についてだけは容易に推論可能です。つまり、概日リズム系は、他の骨格リズムからは制御的に独立したサブシステムになっていて、細胞周期時計を中核としてたの生命リズムの位相進行を、1日単位のものにあわせている、ということです。

              いずれにせよ、細胞内の機能的サブシステムが基本的に生命リズムとなっていること、は注目に値します。その最も根幹を支えるのが細胞周期時計ですが、概日リズム系は、細胞に環境適応性を付与することによって、細胞周期実現(継代的回転)を保証しています。オルガネラ分裂周期や中心体サイクルなどの細胞周期時計に(ふつうは)組み込まれている生命リズムを含め、他のさまざまな生命リズムと、細胞周期時計や概日リズム系の統合の形式を明らかにすることが、{環境適応的な遺伝子発現調節系としての細胞周期(の位相進行)}を具体的に解明する為の鍵となるでしょう。一口に言えば、

                生命リズム間の統合形式の解明が重要です。

              細胞内の機能的サブシステム全部の間の結合様式(統合様式=制御様式)を解明することが、{環境適応的な遺伝子発現調節系としての細胞周期(の位相進行)}を具体的に明らかにすることに通じるものと思うのです。概日リズム系(環境適応系の中核)と細胞周期時計(細胞周期の中核;細胞生命の基本周期)の間の統合は、その中でも最重要の部分であります。

        • 再び時間について

          • 時間と言う言葉(概念)で人間が表現しようとしているものの客観的実体は、運動の基本的(抽象的)形式の一側面です。さまざまな運動形態がありますが、人間が「時間」概念を発見(発明か?)した時から、現代にいたるまで、常に、物理学的周期運動が「時間の標準」として用いられてきました。時間概念で表そうとしている実体は、その周期現象における周期回転数や位相です。周期回転数や位相差は時間の経過や時間間隔を表しますし、位相は「いつ」と言う時刻を表します。

            生命もまた生命サイクルという周期現象ですから、生物学的時間という概念を使っても可笑しくはありません。が、使うとかえって不明瞭になってしまうかもしれません。

            時間概念が表しているものが運動(の流れ)の基本形式であるなら、生物学的時間とは生命リズムのことです。一つの細胞周期にさまざまな生命リズムが複合し、細胞周期位相を1日単位で(環境適応的に)進める形で統合されています。いずれにせよ、オルガネラ分裂周期のようなその他の生命リズムに、概日リズムがどのような制御を行っているか、興味ある点です。


          (since 01/05/99) *********************

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            Circadian RhythmsOR Cell Cycles in Euglena

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          UW's Huskey Search
          Husky Help Need more options? Husky Search Page

          Adapted from HuskyHelp
           +word  word must be present in the page
           -word  word must not be present in the page

          For example:
          band +presidents +united +states -clinton -bush

            To find the band "Presidents of the United States."
            Band should be present but could be absent,
            and you want to filter out pages mentioning current or recent presidents.

          +Erik +Selberg

            The best way to find a name is to put "+" in front of each word in the name, and search via phrase.

          You can also use + and - in phrases, as follows:

            "+husky +football" +ducks Will find pages that contain the phrase "husky football" and ducks.

            Please note that +"husky football" +ducks will not work at this time.


           


           
          any all as a phrase

          Some advanced search syntax examples for MetaCrawler  

          "George Washington" -president
          +"Incan civilization" Peru 
          +football -Americano
          "PC operating systems" -windows -microsoft -"Bill Gates"

          Note that not all sources queried support these features.
          They are,therefore,only suggestions that MetaCrawler will use when tailoring each source's query.
          Because of this, it is still possible to obtain results that do not exactly match your search query,
          although they will typically be ranked lower than those that do match.



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          性と老化と寿命と

          http://www.obihiro.ac.jp/~rhythms/cgi-bin/search.cgi